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なぜ菊一家の娘がこんなところに一人でいるのか。付き人は近くにいないのか。そんな疑問を頭の中に浮かばせている楓雅をよそに、夏蓮は桔梗を手折り始めた。

「……花を、手折るのか?」

その言葉に夏蓮の手がびくりと止まった。

「駄目、でしょうか? 少しだけ、家の者に見せたいのです」

 桔梗を二、三輪手に持ち、夏蓮はしゅんとうなだれる。その様子に楓雅は慌てて首を振った。

「いや、別に駄目という訳では……」

「あら、雅様では?」

 楓雅の声に重なった艶めかしい女の声に視線を向けると、女が三人、ゆったりと品良く着崩した着物に身を包み立っている。

「ああ、姐さん方」

 ちょうど仕事が終わって寝屋に帰るところなのだろう。太陽が昇って少し経った刻。親しげに話す楓雅と女たちから夏蓮がそっと離れていくのが目の端に映った。

 よかった。これでみじめに思わなくて済む。

 女たちは楓雅に微笑みかけた。

「雅様も早く寝た方がいいわよ。昨晩お得意様が来てらしたのでしょう?」

「結構な頻度で来ていただけるのはありがたいんだけど、なかなか寝なくてねえ」

 あっはっは、と高らかに笑いあう彼女たちと共に笑っても、彼の心は何一つ面白くなかった。

彼女たちは目の前の花に気が付くこともなく、立ち去ってしまう。それを見届けてか、夏蓮が楓雅に近づいて――。


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