クフフフ……
「それじゃ、お茶持ってくるからちょっと待っててね」
バタンとドアを閉めて出ていく柊の後ろ姿を正座をしながら見送る。
「……」
やばい……
どうしよ……
クーラーがついているはずなのに、汗がだらだらと絶えず、流れ出てくる。
まさか柊の家に招待されるとは思っても見なかった……
柊の家はオレの家の反対側にある住宅街にあるマンションの一室だった。
駅前から5分ほどで着く距離なのだが、家に着くまでの間、何を話したか覚えていない。
それに柊の部屋はなんか良い匂いもするし、全体的に少しピンクっぽいし、部屋も小綺麗でまさに女子って感じの部屋だった。
女子の部屋に入るなんて初めてだ……
陽愛の部屋に入ったことはあるが、陽愛は妹だ。そんな目では見ていない。
これからどうするんだろ……
考えれば考えるほど汗は止まらず、拭いて出て、拭いては出てを繰り返していた。
「おまたせ~……」
それを何回か繰り返した頃、柊が戻ってきた。
「冷えた麦茶があったよ~」
「あ、ああ、ありがとう」
柊から渡されたコップを受け取り、そのまま口につけ、ごくごくと飲む。
暑さの影響か、それとも緊張のせいかわからないが、あっという間に麦茶を飲み干してしまった。
「喉乾いてたんだね」
「そうみたいだな……」
はははと乾いた笑みを浮かべつつ、オレはこれからどうするか再び頭を悩ませ始めた。
「そういえば、なんで制服着てるんだ?部活とかしてたっけ?」
コップをテーブルに置きつつ、とりあえず、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ああ、違うよ。夏期講習に行ってただけ」
「夏期講習って確か自由参加のやつだよな?さすが優等生だな」
「やめてよ、もう。好きで行ってる訳じゃないんだけどさ、先生に薦められたし、それに夏休みも暇だしね……」
自虐っぽく、ふふっと暗い笑みを浮かべる柊。
「オレも一緒だよ、夏休みって案外、暇だよな……」
そう言ってからオレも柊と一緒に怪しく笑いだした。
そしてしばらく、二人でクフフフと笑い合うのだった。




