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意外すぎ

「いいじゃん、オレらと楽しいとこ行こうよ?」


「いや……その……」


「ごめん!お待たせ!!レジが故障したみたいでお釣り、中々もらえなくてさ」


そう言ってあたかも柊と喫茶店に入ったかのように振る舞い、柊の手を取る。


「あっ……」


柊は一瞬、びくっと震える。


正直、演技とはいえ、オレも少しドキドキしている。

だが、ここで引いてしまえば男達に嘘だとバレるかもしれないので、オレは至って堂々とすることにした。


当然、いきなりオレが割り込んできたので男達は睨むようにこちらを見てきた。


「なんだ、お前?」


一番手前にいた金髪にネックレスをジャラジャラ付けた、いかにもヤンキーってやつが一歩前に出てきた。


「彼氏だけど」


オレは奥さず、男に真っ直ぐ目を見たまま、そう答えた。


「お前が?」


言って、頭の先から靴の先まで品定めするようにオレの姿を見てから、男はプッと小さく吹いた。


「はっはっ!全然釣り合ってねぇじゃん!!月とすっぽんってまさにこの事だな!」


そう言って、後ろを振り返り、それと同時に連れの連中も笑いだした。


「……!!」


その光景に柊はカチンときたのか、ぎゅっと手を握りしめ、歯をぎりっと噛み締めた。


当のオレは別に言われたところで、何とも思ってなく、むしろその通りだなとしか思ってなかった。


「いいって。言わせておけば。それより今のうちに行こう?」


至って冷静にかつ穏やかに柊を促し、男達に気づかれないようにオレ達はその場から離れた。


「ここまで来れば大丈夫かな」


とりあえず、早足で歩きつつ、オレ達は駅前までやってきた。


周りを見渡しても、先ほどの男達は見当たらず、柊を助け出すことは成功したようだった。


「あ、あの……」


ふう。と安堵に似たため息を吐いた時、横にいる柊が小さく声をあげる。


「ん?どうかした?」


「手、握ったままだよ……?」


柊はそう言って、恥ずかしそうに俯きがちに下に目線を送る。


「え……って、あ、ごめん!」


弾かれたようにオレは慌てて手を離した。


どうやら、握ってからというもの、無意識の内にずっと掴みっぱなしだったらしい。


手をぐっと握りながら、柊の手の感触を思い出して、少しだけ心臓の鼓動が早くなったような気がした。


「そ、それよりさっきはありがとうな」


「え?」


オレの思いがけない一言に柊は俯いていた顔をあげた。


「自分のことじゃないのに、オレのために怒ってくれて。すげー嬉しかったよ」


「あ、ううん。本当に失礼な人だったよね……」


さっきのことを思い出したのか、柊は腕組みをしながら頬を膨らませた。


その表情がものすごく可愛くて、その上、腕組みをしたせいでその大きな胸が強調されてオレは慌ててそっぽを向いた。


「そ、そうだな……」


言ってて、声が小さくなってしまう。


「どうしたの?なんか顔が赤いけど……?」


「あ、いやいや!暑さのせいだって!!」


首をかしげる柊に心の内を諭されないよう、咄嗟に言い繕う。


「確かに暑いね……」


言って、柊は顔の近くで手をパタパタとさせ、仰ぐ。


「どっかに入って休もうか?」


さっき喫茶店にいたばかりだが、少し外にいただけでオレの身体は既に汗でべっとりとしていた。


確か、今年の夏は冷夏だとかニュースで言っていたが、それは絶対に嘘だと思う。


「あ、ごめん。実は今、あんまり手持ちなくて……」


「ジュースくらいなら奢るぞ?」


「いや、それは悪いよ……それよりさ、アタシの家に来ない?」


「……へっ……?」


意外や意外。

柊のあまりに意外すぎる一言にオレは目を丸くして素っ頓狂な声を出して驚いた。

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