事故
「あー、暇だー」
ベッドに突っ伏したまま、己の運命に嘆く。
夏休み5日目の昼過ぎ。
オレは早くも暇を持て余していた。
三枝と出掛けて以来、特に用事もなかったので夏休みの宿題もたった数日で半分以上片付けてしまった。
そして、こんなときに限って陽愛は学校の友達と遊びにいくとかで夜遅くまで帰ってこない。
つまり一人きりなのである。
携帯を眺めても都合よくお誘いの連絡が来るわけでもなく、見慣れた待ち受けがずっと映し出されているだけだった。
「はぁ……」
携帯をテーブルの上に置きながら、今日何度目かわからない溜め息をはく。
「DVDでも借りてくるかな……」
確か近所にレンタルショップがあったはずだ。
部屋でゴロゴロするだけなのも、なんだか勿体ない気がするし、暇潰しにはちょうど良いだろう。
「よし」
考えを決めるとオレは気合いを入れて起き上がり、当適な服に着替えると、家を出ていった。
「あー、あっつー……」
家を出た瞬間、容赦のない日照りがオレを襲う。
もうちょっと涼しくてもいいのに、何故夏はこんなに暑いんだろう。
そんなことを考えながら足早に道を歩き、レンタルショップまで向かった。
徒歩10分ほどで到着。
早速中に入るが、レンタルショップの中はクーラーがガンガンに効いており、むしろ寒いくらいだった。
「適当に何か借りて早く出よう……」
先程は涼しくなれと願い、今は暑くなれと願う。
なんて都合の良い願いなんだろうと思いながら、鳥肌の立った両腕を擦りながら、オレは店の奥へ進んでいった。
そして面白そうな興味が湧いてきたDVDを3枚借り、そそくさと店を出た。
店を出てすぐは夏の日照りが妙に心地よく、固まったオレの身体を溶かしてくれるようだったが、歩き始めると身体の周りを纏っていた冷気もあっという間にどこかへいってしまい、結局、元のうだるような暑さに戻ってしまった。
さっさと帰ってコーラでも飲みながら、クーラーの効いた部屋でDVD見よう……
額に溜まる汗を拭いながら、家に帰ってからのことを考える。
そして交差点を渡れば、家へ着くというところでオレはまさかの事態に遭遇した。
「なんかあったのか……?」
目の前に広がる光景に思わず、そんな一言が出てくる。
交差点の周りには大勢の人だかりとパトカーに救急車、それに警察官と救急隊が来ていた。
そして離れたところには、横転したと思われる車とバイクが1台ずつ、その周りには血痕が広がっていた。
それを見る限り、どうやら交通事故があったようだ。
「事故の影響により、しばらくこの近辺は封鎖させていただきます。ご通行される方は申し訳ありませんが、回り道をして……」
アンカーを持った警察官数名が集まっている見物人にそう説明する。
「はぁ……回り道か……」
とんだ災難だった。
回り道をしても帰れることは帰れるのだが、30分以上、時間がかかる。
既に喉はカラカラだし、時間をかけて歩くなど考えられなかった。
ということで、オレは一刻も早く、喉を潤すため、近くにある喫茶店でしばらく涼むことにした。




