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奇跡だよ

「じゃあ、また明日な」


校門前で柊と別れる。


「……」


こくっと頷いたあと、柊はきびすを返してそのまま、走り去っていた。


「はぁ……」


それを見送ったあと、オレも帰り道を歩きながらため息をこぼす。

まさか柊が……

腐女子だなんて。

正直いってかなりショックだ。

せっかく超絶美少女と知り合いになれたと思ったのに。

やっぱり、全部が完璧な女の子なんていないのかな…


がっくりと肩を落としながら、スーパーまでとぼとぼと歩くのだった。


そして日は変わって今日は高校生活、3日目。

今日から授業開始。


朝。

今日使う教科書類をカバンに詰め、登校する。


と、その途中で見知った後ろ姿に遭遇する。


「杉原、おはよう」


挨拶と同時に横に並ぶ。


「あ、薫君!おはよう」


言って、可愛らしく微笑む。


「……」


その笑顔を見て思う。

なんか、こいつにも慣れたな。

こいつはもう女の子としてカウントしよう。その方がいい気がする。


「ん?僕の顔になんかついてる?」


オレがずっと顔を見ていたので、杉原はカバンから鏡を取り出し、自分の顔をチェックしだした。


「い、いや、大丈夫だよ。かわ……」


そこまで言って、慌てて口をつぐむ。

今、ナチュラルに可愛いって言いそうになった……!

あぶなっ!!


うっかり気を抜かないようにしよう。

てか、慣れた手つきでカバンから手鏡出してきたな。

ナチュラル過ぎて忘れるところだったわ。


「やっぱり薫君、なんか変だよ?」


「大丈夫、ほんと大丈夫だから……あ……」


そろそろ校門が見えるというところで今度は正面から見知った顔を見つけた。


「……」


柊だ。その顔は無表情だが、容姿は完璧なので周りの男子がチラチラと見ている。

そりゃそうだよな。

オレだってあんな美少女が目の前にいたら絶対に見ちまうもん。

そんな子がBL大好きなんてな…


「はぁ……」


がっくりとうなだれ、盛大にため息を吐く。

と、その時、目の前に誰かがいる気配がしたので、虚ろな目をしたまま、顔を上げる。


「……」


そこには柊が立っていた。


「あ、柊。おはよう」


とりあえず挨拶をする。


「お、おはよう…」


柊もぎこちなく返事を返してくれて、そのまま、校舎に入っていった。


「へー。薫君、柊さんと知り合いだったんだ」


オレ達のやりとりを横で見ていた杉原が下駄箱で上履きに履き替えながら、口を開く。


「ああ、まぁ……杉原も知り合いなのか?」


「知り合いってほど、親しくもないけどね。中学の時の同級生なんだ」


「へぇー……」


それを聞きながら、つい、男の娘にBL大好き美少女か……中々のラインナップだな、杉原と柊の通ってた中学校は…と思ってしまう。


「柊さんってものすごく人見知りでさ。薫君に挨拶をしてる時点でほぼ奇跡だよ」


「え?まじで?」


二人並んで教室までの階段を上る。


「うん。誰かと喋ってることなんて数回しか見たことないよ」


「そうなんだ…」


言われてみれば、昨日も所々、どもりながら喋ってたりしてたな……


「昨日、僕がいない間になんかあったの~?」


階段を上りきったところで、杉原がニヤニヤしながらオレの脇腹を肘で小突いてきた。


「いや、別に……大事な本を無くしたって言ってたから、それを一緒に探したくらいだよ」


大事な本はBL本だったけどな。とは言わないでおく。


「へぇー。そういえば、中学の時も暇さえあれば本ばっか読んでたよ。読書が好きなのかもね」


廊下を歩き、教室へ入るドアを開ける。


「ああ……多分な」


中学の時からBL好きか。

ずいぶん濃い思春期を過ごしたんだな…

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