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手料理

「あー涼しい~……」


家に到着し、ベッドの上でだらっとした格好でクーラーの冷風をモロに浴びながら陽愛が声を上げる。


「あんまり冷たい風に当たると風邪引くからほどほどにしとけよ?」


私服に着替えてから、人数分のお茶をコップに注ぎつつ、陽愛に釘を指す。


「はいはーい……」


極楽のあまり、ほにゃーとだらしない表情を浮かべながら陽愛は軽く返事をする。


「まったく……」


それを見て、オレは鼻をふんと鳴らす。


「まぁまぁ。確かに暑かったし、仕方ないよ」


オレが差し出した置いたコップを受け取りながら、杉原はオレをなだめるようにそう言った。


「それより、お邪魔しちゃって良かったの?せっかくの兄妹の時間なのに」


「ああ、大丈夫。それにこの三人だけで集まるなんて昔みたいでなんか懐かしくてさ、それだけで楽しくなるんだよ」


「そっか。ならよかった」


ふふっと小さな笑みを浮かべ、杉原はコップに口をつけた。


小学生の頃、オレ達はよく三人で公園で夜遅くまで遊んだり、冒険と称して学校の裏山の奥深くまで進んで親を困らせたこともあった。


今となってはオレの中で懐かしい大切な思い出となっている。


「お兄ちゃん!お腹すいた~!!」


物思いに耽りながら、ようやく一息付けると、ほっとしながらテーブルの前に座った瞬間、オレの真後ろにいる陽愛が大声を上げた。


「うるさい!アパートなんだから静かにしろ!」


反射的に振り向き、陽愛の頭を手で叩く。

もちろん、それほど強くは叩いていないので痛くはない……はずだ。


「だって~」


叩かれた頭をなでながら、オレのことをジロッと見ながら、陽愛は唇を尖らせた。


「ほら、パン買ってあるから、これでも食ってろ」


言って、パンの入った袋を差し出す。

買っておいて良かった。

それに夢中になって食べ過ぎなくてよかった……と心の底から思う。


「やったー!わ~い!!」


パンという単語に反応し、先程とはうってかわって目をキラキラ輝かせた陽愛は袋を受け取り、早速パンを食べ始めた。


「さて、晩御飯はどうするかな……」


静かになった陽愛を横目に見つつ、ごくごくと麦茶を飲みながら、オレは頭を働かせた。

確か、大安売りだった肉と野菜があったからそれをどうにかしないとな……


「あ、よかったら僕が作ろうか?」


すると、横にいる杉原が人差し指で自身を指差した。


「え?」


思ってもみない提案にオレは驚いた。


「いや、なんかここにいるだけなのも悪いし、それに家に帰っても一人だからさ……」


「ああ。そっか。じゃあそういうことなら頼もうかな」


「うん。任せてよ!」


杉原はどんと自分の胸を叩いた。


それにしても杉原の手料理か……

今日の晩御飯が楽しみだな。

何を作ってくれるんだろう……

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