可愛いんだな
1分後。
「どうかな?」
シャッと試着室のカーテンが開かれ、中にいる杉原が声をかけてくる。
「ああ、似合ってるな」
杉原が先に着たのは右手に持っていたTシャツ。
制服のスカートが短いので少し変に見えるが、下を短パンかジーンズに変えればそれなりに着こなせるだろう。
「そっか。とりあえずもう一つの服も着てみようかな」
そう言って、杉原はカーテンを閉めた。
そういや、杉原の私服を見るのって初めてかも。
まぁ厳密に言えば私服ではないのだが。
「こっちはどう?」
そんなことを考えているうちに、杉原は着替え終わり、再びカーテンが開かれる。
「う……」
それを見た瞬間、オレは反射的に口を手で押さえた。
やばい。思わず、声が漏れそうだった。
Tシャツに制服のスカートが妙に似合っていて、普通に可愛いって思ってしまった……!
スラリと伸びた手足、スカートが短くてそこから艶かしい太股が……って何考えてんだ、オレ!?
相手は男だ!しっかりしろ!!
顔をブンブンと左右に振り、仕上げにパンと勢いよく頬を叩く。
よし、これで……!
そう思って、目を見開き、再び杉原の姿に目をやるのだが。
「どうかな……?」
しばらくの間、オレが何も言わなかったことに不安になったのか、恥ずかしそうに脚を重ね合わせ、モジモジしながら、そんなことを聞いてくるのでオレはその場で卒倒しそうになった。
ダメだ!どうしても可愛く見えてしまう!!
「すげー……似合ってるよ……」
膝に手をつきながら半ば、やけになりつつ、素直な感想を伝える。
「ほんと!?良かったぁ。じゃあこれ買おうかな」
オレに褒められたことがそんなに嬉しかったのか、杉原はすっかりご機嫌になり、元の制服に着替えるとTシャツの会計のため、レジまで向かうのだった。




