表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/114

敵対

その後、店長から今日の説明を聞くが、その間も、三枝はオレのことをジトッとした目でずっと見てきて、ひたすらそれに気づかないふりをしていたので、非常にめんどくさかった。


「それじゃ、やるか」


軽く手足を回したあと、気合いを入れる。

今日の仕事は倉庫にある売れ残った資材の撤去だ。連れてこられた場所には、資材が詰まったダンボールが大量にあって、骨が折れそうだなと感じた。


「じゃ、アタシは台車使うから、あんたは手で運んでね」


オレのことは無視するように、早速三枝は支給された台車に手をかけた。


「っておい」


たまらず、オレは三枝の肩を掴んだ。


「何よ……」


気に入らないとばかりにむすっとした顔でオレを見る。


「時間も限られてるんだし、協力した方が早いと思うんだが」


第一、何故三枝だけが台車を使うのか納得がいかない。

オレのことを邪険にしてるのはわかったが、それとこれとは話が別だ。仕事を時間内に終えるのに協力は不可欠だと思うし。


「じゃああんたが台車使えば?アタシは一人でやるから」


だが、オレの提案も聞かずに三枝は肩に置かれた手を払いのけ、棚にあるダンボールのそばにしゃがむと両手でそれを掴み、運び始めた。


「ったく……」


それを見て、つい呆れてしまう。

まるで親に叱られ、言うことを聞かない子供のような反応の様に見えた。


「くっ……!うう……」


そんなオレをよそに三枝はダンボールを運び始めた。

が、女子一人の力では持ち上げるのすら辛いのか、三枝は苦悶の表情でダンボールを掴んでいた。


「無理すんなって。台車に乗せろよ」


「いらないって……言ってんでしょ……」


しかし、三枝はオレの言葉に耳を貸さず、ヨロヨロとした足取りで歩き始めた。

だが、見るからに不安なので慌ててそれを支えようと駆け寄った瞬間。


「きゃっ……!!」


ダンボールで前がよく見えなかったのか、そのせいでバランスを崩しながら、足を挫いてしまい、三枝はそのまま崩れるように倒れてしまった。


「お、おい!!」


倒れた拍子にダンボールは三枝の足の上に乗っかってしまい、オレはすぐさま駆けつけ、ダンボールを足の上からどかした。


「いつつ……」


三枝は苦痛に顔を歪めながら、足を両手で抑えていた。


「大丈夫か!?」


「へ、平気……これくらい……つ!!」


オレの手から逃れようと三枝は無理して立とうとしたが、その矢先に激痛が走り、そのまま膝から崩れてしまう。


「無理すんなって……多分足捻ってるぞ、これ。早く手当てしてもらおう」


「足挫いたくらいで車イスとかに乗せられるのは、勘弁だからね……恥ずかしい……」


「じゃあ……」


どうやって三枝を医務室まで運ぶか、オレは頭を悩ませた。


「あれ……」


そんなオレを見て三枝は人差し指で何かを指した。

その指の先を目で追っていく。


「……台車……?」


「……」


三枝はゆっくりと頷いた。

つまり、台車で医務室運べってことか?


「そっちの方が恥ずかしいだろ……」


オレはたまらず呟いた。

第一、台車で人を運ぶって小学生の遊びかよ。

ここでそんなことやったら確実に注意されるわ、


「じゃあ他にどうすんのよ……」


「はぁ……ごめんな」


これからオレが行うことを三枝は絶対に嫌がると思い、オレは先に謝っておいた。


「は?急に何謝って……ってひゃああ!?」


三枝は突然抱き抱えられ、何が起きたのか一瞬分からなくなり、オレの手の中で叫んだ。


「ちょ、何やって……!ていうか離せ!!」


三枝は全力でオレの手の中で暴れ始める。

肘や腕がみぞおちやら、胸、鎖骨に当たり、少し痛かったが、我慢することにした。

やはり、お姫さまだっこはまずかったか。

しかし、おんぶになると三枝の胸が当たるだろうし、そっちの方がまずいよな。


「はいはい。文句は後で聞くから、まずは手当てしてもらおう」


抗議の言葉を適当にあしらいつつ、オレはお姫さまだっこをしたまま、医務室まで急いだ。

途中、何人かのスタッフに奇異な目で見られたが、訳を話せば全員納得してくれた。

最も、運んでいる最中、三枝はずっとオレのことを睨んでいた。しかし、途中から暴れなくなり、オレは少しだけほっとしながら医務室までの道のりを急いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ