実力
30分後。
「オレ達の物語はまだ始まったばかりだ……」
主人公の決め台詞のあと、画面にエンディングが流れる。
「ふー……」
それと同時に銃を置き、息を一つ吐く。
「なんか喉乾いちゃったね」
「ああ、そうだな。オレ、なんか買ってくるわ……」
それだけ言って、銃を素早く置くと、逃げるようにオレはそそくさと自販機のあるところまで向かった。
すげぇ……
というかありえん……
オレは歩きながら先程の光景を思い出し、手で口を抑えていた。
全ステージ、ノーミスでクリアだと……?!
それにこっちは何度かやられて、柊一人でステージクリアしたことも何回かあったくらいだ。
しかも、トータルスコアが他を引き離すくらいの圧倒的な数字で1位にランクイン。
あれこそ、まさに神プレイだった。
そりゃ、三枝も一目置くわけだ。
柊の実力なら確実にプロになれるだろう。
などと考えているうちに自販機にたどり着き、小銭を入れ、オレンジジュースを二つ買い、柊の元に戻る。
「お待たせ。オレンジジュースだけど、大丈夫?」
「あ、うん。ありがとう」
オレが手渡したジュースを受け取ると柊は缶を開け、ごくごくとジュースを飲んでいく。
ジュースを飲むとき、柔らかそうな唇が目に飛び込んできて、オレは慌てて顔を背けた。
「次は何やろっか?」
オレの心のことなど露知らず、柊はそう聞いてくる。
「そ、そうだな、何しようか……」
言いながら、オレはジュースの缶を開けると、勢いよく、ごくごくと飲み始めた。むしろ、勢いが強すぎて鼻の奥に入ってしまい、めちゃくちゃ痛かったが、それを悟られまいと必死に我慢した。
「あ、音ゲーあるじゃん。あれにしよーよ」
いつの間にか飲み終えていたジュースの空き缶を柊はゴミ箱に投げ入れ、足早にゲーム機の前に移動した。
「あ、ちょ……!!」
それを見て柊を追いかけるようにオレもジュースを飲み干すと、ゲーム機の前に向かった。




