ほくほく
「これ、今、作ったんですか?」
目の前に広がる料理を前にしてそう問う。
「さすがにこの短時間では無理よ。朝のうちに作ったやつがほとんどね」
苦笑しながら、オレの前に箸とお茶を注いだコップを置いてくれる。
「あ、ありがとうございます……」
座ったまま、頭を少しだけ下げ、目の前に広がる料理を改めて見ていく。
肉じゃがにお浸し、豆腐とワカメの味噌汁、それにホカホカと湯気のたっているご飯。まさしく純和食と言えるラインナップだった。
「さ、冷めないうちに食べちゃって」
「はい。いただきます」
会長にそう促され、オレは手を合わせてから箸を手に取った。
まずは肉じゃがから頂くことにし、皿の一番手前にあったジャガイモから掴む。
ジャガイモは掴んだだけで、箸が少し食い込むくらい柔らかくなっていた。
そして口に入れた瞬間、口の中で噛むことなく、溶けた。
「うっ、うまっ!!!」
感動のあまり、たまらず大きく声を上げてしまう。
なんだこのジャガイモ?!
めちゃめちゃ柔らかくて、しかも味がしっかり染み込んでる。ていうか溶けた!
こんな美味いジャガイモ、初めて食った!!
あまりの美味さにオレの胃袋は一気に火がつき、ものすごいスピードで料理を平らげていった。
その間、味わうことも忘れずにしっかり一つ一つ味を噛み締めていった。
どれもこれも驚愕の美味さでオレは遠慮するどころか、おかわりまで頼んでしまう始末だった。
そんなオレを会長は微笑みながら、暖かい目で見てくれていた。




