アブノーマルその2
「なに食うかな」
半日だけの身体測定も終わり、その帰り道、立ち寄ったスーパーで献立を考える。
昼もまだ食ってないし、ガッツリしたものが食いたいな。
親子丼とかどうだろ。
作るの簡単だし、美味いし、最高だな。
よし、決定。
考えがまとまり、目当ての食材を買うため、カートをゴロゴロと走らせているときに、気づく。
あれ?
オレ、サイフ持ってたっけ?
慌ててカートを止め、カバンをごそごそと探るが、サイフは見つからず。
家に置いてきた?
いや、学校には持ってきてたはず。
となると、身体測定終わって紙パックのジュースを買いにいって、そのまま机の上に置いた?
ぼーっとしてたから、うっかり忘れちゃったんだな。
あー、めんどくせ。
サイフ取りに行ってまたスーパーに戻ってこないと。
がっくりとうなだれながら、カゴに入れた商品を棚に戻しながら、慌ててスーパーを出ていった。
スーパーを出てからオレは息をふっと吐いた後、走り出す。
サイフの中には当分の生活費を見込んで、結構な金額が入っていたたはず。
中身を見てうっかり目の眩んだ誰かが持ち去ってないかと、不安になり、慌てて駆け足で学校へ向かったのだ。
「はぁはぁ……」
全力疾走の甲斐もあり、徒歩で10分のところを5分もかからずに、学校へ辿り着く。
下駄箱で上履きに履き替え、急いで階段をかけあがり、教室のドアを開け、真っ先に自分の机に目を向けると、そこには見慣れたサイフが。
「はぁ~……」
見つけた瞬間、安堵の息がこぼれる。
よかったー。
今度から気を付けないとな。
なんて考えていたところで思考が止まった。
そして、自分の目を疑った。
「……」
そこには、オレの机の中を膝を床につきながら、ごそごそと探っている女の子がいた。
え、何してんの、あの子。
衝撃の光景過ぎて身体が氷のように固まる。
まぁ、授業もまだ始まってないし、机の中には何も入ってないから別にいいんだけどさ。
にしても、なんで机の中なんか漁って?
と、そんなことを考えていると後頭部に視線が注がれていることに気づいたのか、女の子がこちらに振り向いた。
やば……と思ったが、時すでに遅し。
「……」
「……」
交差する視線。
無言の時がただ流れていく。
ど、どうしよ……
お互い見つめあったまま、オレは思考を駆け巡らせた。
大体、サイフを取りに来ただけなのに、なんでこんな展開に……
なんであの子が机を漁ってるのか非常に気になるし、若干、恐怖も感じるけど、とにかくこの場から逃げ出したい……
余計なことは考えず、とっととサイフだけとって帰ろう……!
決心したオレは、ずんずんと教室へ入っていき、そしてそのままの勢いで机の前までたどり着き、サイフをむんずと掴みとった。
肝心の女の子はというと、オレを見つめたまま、動かなかった。
よし……
あとは、さっさと教室を出ていけば。
と、ドアの方へきびすを返したところで。
がっ!!
と、脇腹の辺りを両手で掴まれた。
「……」
恐怖に震えながらオレは息をのんだ。
もちろん、オレを掴んでいたのは、女の子であろう。
後ろにいるので、表情はわからないが、オレを掴んでいる手が小刻みに震えていた。
「ひっ……」
たまらず、悲鳴が口から出そうになった。
「うわあぁぁぁん!」
だが何故か、女の子の方が先に叫びだした。