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なんだかんだで

放課後。


「やっと終わった……」


たまらず、机の上に突っ伏してしまう。

喋る相手がいないと授業の合間の休み時間がこんなにも苦痛だなんて思わなかった。

おまけに男子達からは相変わらず、睨まれるし……

今日はさっさと帰って身体を休めよう。


重い身体を持ち上げ、机に引っ掻けていたカバンをさっと取ると、オレは足早に教室から出ていった。

そして階段を降り、下駄箱で靴に履き替えているとトントンと誰かに肩を叩かれた。

誰だと思い、振り返ると、どすっと柔らかくて鋭い何かがオレの右頬に刺さった。


「ずいぶん、子供っぽい真似をするんですね……」


その体制から顔を動かさず、視線だけをその人物に向ける。


「そういうところがまた魅力的でしょ?」


そう言ってふふっとお姉さんっぽく笑いながら、オレの頬から指を引いた。

オレの頬に指を指してきたのは、会長だった。


「また何か用ですか?」


いつまでのその体勢だと首を痛めそうだったので、オレは会長の正面に向かい直して、そう言った。


「あら。鋭い。よくわかってるじゃない。急用で男手がほしくてね。で、君なら空いてるかなって」


「まぁ特に用はないですが……」


「なんか引っ掛かる言い方ね」


「……」


その言葉につい黙り込んでしまう。

なんか使い勝手の良い男みたいで気が引けるんだよな。

かといって、そんなこと正面から言えるわけもなく。


「ははーん」


すると会長は急にニタニタと怪しい笑みを浮かべはじめた。


「な、なんですか……」


「自分、都合良く使われてるなぁとか思ってるんでしょ?」


「い!いや、別に……!」


思ってることをいきなり当てられてしまい、ドキッと心臓が飛びはね、語尾が上ずってしまう。

それにしても杉原といい、会長といい、オレの周りには読心術でも心得てるのかって思える人間が多いな。


「大丈夫よ。アタシはそんなこと思ってないから。むしろ、頼りにしてるくらいだから」


言って、背中をポンポンと叩いてくる。


「そう……ですか」


なんか上手く丸め込まれたみたいで、オレは少し附に落ちなかった。

だが結局、特に用事もなかったので引き受けることにし、会長の後に続き、廊下を歩いた先にある場所へとやってきた。

そこはグラウンドの近くにある一室だった。


「運動部の倉庫整理ですか」


「そう。物が増えてきたから運動部で使える資材と廃棄する資材を分けてほしいんだって。ただでさえ、人手が足りない生徒会にそんなこと頼んでくるなんて教師陣は何考えてんのか……」


会長ははぁ。とため息を一つ吐いてから額に手を当てる。


「……」


その姿を見ていると手伝わない訳にはいかなかった。

きっと、この人の方が色んなことを抱えながら学校生活を送っているのだと思う。オレの悩みなど些細なものだ。

むしろ三枝の言うとおり、贅沢な悩みなのかもしれないと思えた。


「まぁ頑張りますよ」


オレはカバンを適当な場所に置くと袖をまくり、中に入っていった。


「さっすが!!ありがとう!整理するのに特に期限はないからケガがないようにお願いね!」


会長はそれだけいって、小走りになりながら校舎の中へと急いで戻っていった。

どうやら、あまり時間がないのにオレのところに来たみたいだったようだ。

会長が頼めば、引き受けてくれる男子なんて沢山いるだろうに。

そんな中でわざわざオレを選んでくれたことに少し嬉しくなり、頬が緩む。


「さて、やりますか……」


オレは少しだけ緩くなった頬を元に戻しながら、作業に取りかかった。

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