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メンタリズム

様々なことがありながらも、なんとか授業も終わり、制服に着替えてから教室へと戻るため、階段を上がる。


「よっ」


だが、階段を上がりきったところでで誰かに肩を叩かれた。

誰かと思い、振り返るとそこには肩からプールバックを下げ、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた三枝が立っていた。


「なんだよ……」


その顔に少しだけ眉を潜ませる。


「大きかったね」


すると三枝は囁くように耳元で一言。


「ぶっ!」


そう言い放たれたその言葉にオレはたまらず、吹いてしまった。


「な、何がだよ?!」


袖で口元を拭いながら、慌てて問い返す。


「何がって、もうわかってるくせに~」


コノコノと言わんばかりにオレの脇腹を肘でつついてくる。


「いやぁ~、同姓でもあれはびっくりするね。全く羨ましい限りだよ」


「別に三枝もスタイル悪いわけじゃ……」


先ほどの水泳の授業の時に見た光景を思い出しながら、うっかりそんなことを口走ってしまったので、オレは慌てて手で口を塞ぐが、既に時遅し。


「ちょ、あんた何見て……!!」


先程とはうって変わって三枝は顔を赤面させ、両手で上半身を隠すようにした。


「ご、ごめん!ついうっかり……」


「う、うっかりって……」


三枝に当てられ、オレも顔が赤くなってきて、慌てて顔を伏せる。


「クラス内で密かにハンターなんてあだ名が付いてたけど、本当だったんだね……」


未だ赤くなっている顔で三枝はそう言った。


「は、ハンター!?」


その言葉に反応し、オレは伏せていた顔をばっと上げた。


「なんだよ、そのあだ名?!」


興奮してしまい、つい大声で聞いてしまう。


「狙った女子は必ず自分のものにする……だからハンターって」


「狙ったって、別に狙ったつもりはないし、たまたま仲良くなっていくのが、女子ってだけで……」


むしろ。男子の友達ができなくて悩んでるくらいなのに。


「そのセリフ、他の男子達が聞いたら嫉妬するだろうね。なんていうかギャルゲーの主人公みたい」


言って三枝はオレのことをジロッと見る。


「気を付けよう……」


肩を抱き締め、言い捨てるように言ってから、三枝はオレの前から去っていった。


「……」


一方、取り残されたオレはどうしていいのか分からず、休み時間が終わるチャイムが鳴るまでずっとそこに佇んでいるのだった。


そして昼休み。

いつも通り、杉原と柊と一緒に屋上で昼飯を食べている。のだが。


「「「……」」」


ここにきてからというものの、誰一人として口を開かない。

いや、むしろ水泳の授業が終わってから、二人とはまともに会話をしていない。

というのもオレとしてはあれ以来、柊と話すのが何故か気まずいのだ。

柊の姿を見るたび、あの光景がフラッシュバックする。


杉原とは普通に話せると思うが、妙に鋭いこいつのことだから、オレの心を読んでずっと空気を読んでいるのだろう。

それが半分ありがたくもあり、余計なお世話だと思ってしまう。

結局、ただただ無心で昼飯を食べるだけで昼休みが過ぎていった。

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