スク水はロマン……?
「おー、広いな」
更衣室で海パンに着替えてから、プールへと出てくる。
オレ達が通ってる高校は屋内用のプールがあり、水泳部が悪天候の日にも部活に力を注げるようにと学校側が便宜を図ったらしい。
その影響もあってか、水泳部の何人かは全国に出場する実力を持っているそうだ。
「さて……」
ぞろぞろと男子達が集まり出す中、オレはお目当ての人物を探す。
更衣室には、一応個室もあり、杉原はそこで着替えているのだが、中々出てこなかった。
仕方なく、オレは先に出て、こうして待っているのだが、時間が経てど、肝心の杉原は中々現れなかった。
「何やってんだ、あいつ」
チラッと壁にかかっている時計を見ると、間もなく休み時間が終わり、授業か始まってしまう。
このままでは、遅刻扱いになってしまうので急いで呼びに行こうとしたとき。
「お待たせ……」
後ろから声をかけられる。
姿は見えないが、声の主は杉原だ。
「遅いから心配……」
振り返りながら、そこまで言ったところで、オレの口は動かなくなった。
というもの、どう反応したらいいか分からないのだ。
目の前に立っているのが杉原だと言うのは分かる。
だが、その姿は。
「変……かな……?」
杉原は恥ずかしそうに身体をもじもじさせながら、自分の姿をチラッと見る。
「いや、変じゃないと思う。むしろ似合ってるかな……」
どう反応していいか分からないので、とりあえず本心だけを伝える。
それも仕方ないと思う。予想とは全く違う水着だったからだ。
まさか、セパレートタイプの水着とは意外だった。
しかも、めちゃくちゃ似合ってる。
ついつい、可愛いと思ってしまった。というか行ってしまった。
他の男子達も同じことを思っていたのか、みんな杉原の水着を見て隠れてニヤニヤとしている。
もしこれがビーチかレジャー施設だったら確実に男共にナンパされるだろう。そんなレベルだった。
「無理いって許可してもらったんだけど、そう言ってもらえてよかった」
へへっと頬をかきながら、笑う杉原はこれまた可愛かった。
男としてその反応はどうなんだ……と思ったが、可愛いので水に流すことにした。
そして授業が始まり、各自準備運動をした後、プールに入る。
屋内プールなので、程よい水温で快適だった。
そんな中、男子更衣室とは反対側の更衣室から女子達がぞろぞろと出てきた。
女子達がプールが出てきた途端、男子達がざわざわと騒ぎだす。
スク水を着てるとはいえ、思春期の男には嬉しい光景だよな。
なんて思いながら、オレもチラッと女子達の方を見たとき。
「……!!」
恥ずかしそうに身体を隠すように歩く柊と目が合ってしまう。
「や、ば……」
咄嗟に顔を伏せるが、堪えきれず、つい声がこぼれてしまう。
柊のプロポーションがすごいのは分かってたけど、スク水を着ると余計に際立っていた。
特に胸がすごかった……
顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。
他の男子達も柊のスク水姿を見た瞬間に赤面したり、ばしゃばしゃとプールの中ではしゃぎ出していて、教師に怒られていた。
一方の柊は恥ずかしさのあまり、どこかへ隠れてしまったようで、周りの女子たちが心配して声をかけていた。
そのあとは何か泳ぎの練習をしたのだと思うが、柊のスク水姿が脳裏に焼き付いて中々、消えずにそのまま授業を過ごすのだった。




