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勉強会

暗黒の昼休みから時間は進み、ようやく放課後。


「で、ここはこう……」


「ほうほう……」


昼休みの時と同様、オレは教室で柊に勉強を教えてもらっていた。

クラスメイトも柊のあの姿がトラウマになったのか、あれからオレ達に特に何も言ってくることはなくなった。

オレとしては、やりやすくなったが、クラスメイトとは一線を置かれたみたいで微妙な距離ができてしまい、少し悲しかった。


「おー、すげー。解けた」


ノートに書いた自分の答えと参考書についていた答えを比較して、正解していたのでたまらず、ノートを持ち上げ、驚く。

教えられた通りに公式を使えば、簡単に問題は解ける。

容量さえ覚えれば実に簡単なものだった。


「彩香って教えるのうまいんだね」


オレ達の様子を隣でじっと目の前で見ていた杉原が口を開けく。


「井上君の理解力がいいからだよ」


なんて謙遜しながら柊はそう言ってくれる。


「いや、柊の教え方がいいんだよ。授業では、ちんぷんかんぷんだったのに今、教えてもらったそのすんなり理解できたし」


言って、柊の頭を撫でてやる。


「へへへ……」


撫でた瞬間、たちまち、ほにゃーとだらしない顔になる。


「幸せそうな顔だね……」


杉原は柊の顔を見て思わず苦笑する。


「でも、あんまりやり過ぎるとまた面倒なことになるから……ね?」


そう言ってクラス内を見渡す。


「あ、ああ……」


それに促され、オレも周りを見てみると何人かの男子はこちらをみていた。

暗黒の昼休みのおかげで、柊の頭を撫でても何も言われなくなったが、それでも一部の男子は許せないらしく、ほんの少しだが、オレに向かって殺気が飛んでくる。その殺気にはもう慣れたのもだったが、そんなものにはできるものなら慣れたくはないと心底思った。


「勉強なら違う場所でしようよ」


「そうだな。続きはあとにしてとりあえず学校から出るか」


参考書とノートとペンケースをカバンに入れ、イスから立ち上がる。

柊と杉原は既に帰る準備ができていたようで、カバンを掴んでオレの支度を待っていた。

そしていつも通り、三人で教室を出ようとした時。


「あ、あの……」


後ろから声をかけられた。


「ん?」


その声に振り向く。

そこにはカバンを掴んだ三枝が緊張した面持ちで立っていた。


「どうした?三枝?」


珍しいな。こいつが話しかけてくるなんて。あの一件以来、三枝とは挨拶を交わす程度だったのでそのことに少し驚く。


「あ、アタシも……」


すると、三枝の口から出てきたのは、意外な言葉だった。


「「お邪魔しまーす」」


玄関で靴を脱ぐと、ドタドタと足音を立てて二人揃って中へ入っていく。


「お、お邪魔します……」


その後に続き、一人緊張している様子の三枝。


「男の子の家に来ちゃった……!」


などと、先程からブツブツと呟いている。

だが、オレも女子の家に行った時は、ああなるんだなと思い、特に何も言わないことにしておいた。


「とりあえずみんな、テーブルに座っててくれ」


言って、コップと冷蔵庫から適当な飲み物を取り出す。

ちょうど、オレンジジュースがあったからそれにすることにした。


「「「はーい」」」


三人から揃って返事が返ってくる。

そういえば、あいつらって仲良いのかな?

コップにオレンジジュースを注ぎながら、疑問に思う。

特に三枝なんて勘違いとはいえ、クラスを巻き込んでひと悶着起こしたし、柊からしたらあまり良い印象を持っているとは思えない。


というか、最近色々なことが起こりすぎな気が……

今日とか危うく殴られそうになったし、何よりクラスの中で浮いた存在になっている感じに思える。


「はぁ……」


たまらず、ため息が出てしまう。


友達がいないよりはマシだが、それでもな~……

と、つい今の状況を真剣に考えてしまうのだった。

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