プレイってなんかエロいな
「なんだよ、お前!ちょっと柊さんと仲良いだけなのに、そんな変態プレイ仕込んでんのか!?」
近くにいた男子の一人がオレの胸ぐらを勢いよく、掴んでくる。
「いや、別に仕込んでる訳じゃ……」
背中に嫌な冷や汗を流しつつ、目線を合わせないようにそっぽを向く。
そういえばつい、この前も胸ぐらを掴まれたような……
妙にデジャブ感がある。
「だったら、オレの目を見てそう言えよ!なんで、こっち向かねぇーんだよ!!」
男子はオレの仕草が気にくわなかったようで、ますます怒りをヒートアップさせ、胸ぐらを掴んでいる手の力を強めてくる。
目を見て言ってもどうせ否定すんだろ?!
だから嫌なんだよ!!
とは言えるわけもなく。
「そうよ!大体柊さんを弄んで、何が楽しいの!?」
男子を援護するかのごとく、今度は女子の一人が声を上げる。
「いや、だから、オレの話を……」
か細い声で抗議するが、誰も聞いてくれるはずもなく、こういうとき、助けてくれそうな唯一の味方の杉原もどうやら教室にはいないようだった。
勉強してただけなのに、なんでこんな目に。
心の中で号泣しながら、このカオスな状況をどうすれば切り抜けられるのか、必死に考えていると。
「ち、違う……」
オレの横にいた柊が小さくではあるが、ゆっくりと立ち上がり、口を開いた。
「ひ、柊……」
その姿に感動してしまう。
そうだよ、本人が違うって言えば、このカオスな空間は丸く収まるんだ。
クラスメイト達もその姿に驚いたようで、全員柊の次の言葉を待っている。
「井上君はそんなこと私に強要してない。私達はただの友達。だから、友達に褒められたら嬉しくなるのは当たり前……」
言いながら、再びオレの前に頭を差し出してくる。
「だから撫でて……」
「……」
な、なんも解決してねぇ!!!!
思わず、心の中で突っ込む。
た、助けてくれるんじゃなかったの、柊!?
確かにオレ達は友達だが、友達だから頭を撫でるってのは、ちょっとないと思う……
どうやら、この前の一件で頭を撫でられることが気に入ったみたいだな……
「や……」
すると、柊の言葉を聞いてオレの胸ぐらを掴んでいる手をプルプルと震わせながら、男子が俯く。
「やっぱり許せーーん!!」
ですよねー!!!
心の中で同意する。
そして男子の怒り爆発。
目が殺気で燃えている。
「こんな美少女である柊さんの頭を気安く撫でるなど、男子としてめちゃくちゃ羨ましいが、それ以上にお前が許せん!!」
ぐわっと拳に力を入れ、振りかぶってくる。
「……」
あーあ、こりゃ殴られるなー。口の中、切れたらご飯食べづらいなぁ。
ていうか、こいつの名前、なんだっけ?田中?
とか呑気なことを考えていると。
ガシッ!っと田中(?)の拳を掴んで止める。
オレではなく柊が。
「柊さん……?どうし……」
そこまで言ったところで、後ろを振り返った田中はガタガタと小刻みに震え出した。
かくいうそれを見た瞬間からオレもさっきから背中を流れる冷や汗が止まらない。
「だから邪魔すんなって……」
俯きながら、柊がぼそっと呟く。
あまりにも激しい怒りで柊の背中に虎と鬼が見えるほどだった。
そんなに頭を撫でてほしかったのか。
全くどんだけ気に入ったんだよ……
教室内も冷気で覆われたように冷たい空気が流れていた。もちろん、そんな中で口を開ける人間などいるはずもない。
「いいかげんにしろよ……」
「す、すいませんでし……た……」
ダメ押しのその一言で、相変わらず、ガタガタと震えながら田中はゆっくりと掴んでいた胸ぐらから手を離した。
その瞬間。
ガラッと教室のドアが開く。
「さむっ!!?えっ?冷房ついてる?!」
先程までの出来事など知るはずもない杉原が教室へ入ってくるなり、肩を震わせた。
そして、教室内をぐるっと見渡したあと、クラス全員から視線を注がれているオレを見る。
「またなんかしたの?」
眉を八の字にしながら、そう聞いてきた。
おい、何かあるたびにオレを疑うなよ。今回は当たってるが。
「ああ、うん……」
さて、何て説明すればいいのか。




