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テストってやだね

5月も中旬に入り、恐れていたイベントがやってきた。

そう、中間テストである。

ちなみにオレが通う高校は3学期制なので、今度は7月に期末テストがある。

それを考えただけでも、げんなりなのだが、今は一週間後に迫った中間テストに備える必要がある。


「えーっと……」


そんな中でのある日の昼休み。

早々と昼飯を済ませたオレは教室に戻るなり、席につき、買ってきたばかりの数学の参考書を見ながら、ノートを開き、ペンを握りしめていた。


数学と科学だけはどうも苦手でなるべく早いうちに対策をとっておきたいと考え、そのために昨日、早速本屋で参考書を買ってきた次第。


なのだが。


「わからん……」


開始10秒にして挫折。そのまま、机に突っ伏す。

ダメだ……

頭をのそっと持ち上げ、参考書を両手で掴む。

この参考書が何を言いたいのかわからないし、その上、問題文の意味もわからない。

しかし、このままでは確実に赤点を取るハメになる。

それだけはなんとしても避けたい。


「どうすっかな……」


問題文に頭を悩ませながら、髪の毛をがしがしとかきながら、

とりあえず再び参考書に目を落とす。


「やけに早くご飯を済ませたと思ったら勉強?珍しいね」


すると、そんなオレの様子を不思議に思ったのか、いつの間にか教室に戻ってきていた柊が話しかけてきた。


「あ、柊……」


その声に反応し、顔を上げると、柊が前屈みになってオレの机の上を覗いていた。


「!!」


思いの外、柊の顔が近くにあったのでオレは内心、かなりドキッとした。

そもそも、この前の一件から柊とまともに話すのこれが初めてだな。


「あ、もしかして来週、テストがあるから?」


オレの心情を知ってか知らずか、柊はそのまま話しかけてきた。

柊が元通り、オレと仲良くしてくれるのは非常に嬉しいのだが、その可愛すぎる笑顔や、仕草を見るたびにオレの心は常にドキドキしていた。

美少女すぎるのも罪だよなぁ……なんて意味のわからないことをつい思ってしまう。


「あ、ああ、そうなんだよ。数学と科学だけはどうも苦手で早めに対策取ろうと思ったんだが……」


なるべく、いつも通りに振る舞いつつ、参考書を見せる。


「どこがわからないの?」


言って、柊は自分のイスをオレの隣まで持ってきて、そこに腰かけた。

それでまたオレの心臓はドキッと跳び跳ねたが、気にしてもキリがないので今はとにかく無視することにした。


「ここなんだけどさ……」


柊にも見えるように参考書を開き、赤ペンで文字の部分をなぞる。


「あーこれか。なるほど。ちょっと借りるね」


うんうんと小さく頷いたあと、柊はオレのペンケースからをシャーペンを取り出し、公式のようなものをノートにサラサラサラと書き始めた。


「この問題はこの公式を当てはめれば解けるから」


言って、シャーペンをペンケースに戻す。


「おお……」


感激のあまり、口から声が漏れる。

問題を解けるのもすごいが、公式を何もなしで解けるのがなによりすごい。参考書にはヒントもないくらいだし。

そういや、柊は中学の時、常に学年1位だって杉原が前に言ってたっけ。それなら納得だ。


「ありがとうな。公式が分かれば解けそうだよ」


教えてもらった通りの公式を使って少し考えれば、オレでも解けそうな問題だった。


「よかった。じゃあ……」


そう言ってから、何故か柊はイスを除けて、オレの横に膝をついて頭を差し出してきた。


「え、どうした、いきなり……」


突然の行動にノートに走らせていたペンを止め、戸惑ってしまう。

周りのクラスメイト達も柊のその行動に驚き、楽しくお喋りしていたり、ふざけあっていたのをやめて、こちらに注目している。

柊が絡むとほぼ高確率でこうなるな。もう慣れたもんだが。

なんて、冷静に考えてしまう。


「あ、頭撫でて……」


クラス全員が見届ける中、セリフを言うのが恥ずかしいのか、そのままの体勢で柊は顔を赤くする。


「撫で……」


頭を撫でろって……

そんなペットみたいな真似、ここでできるわけない。

尚更、恋人同士でもないのに。むしろ、恋人同士ですら人前でそれはハードルが高いと思う。


「それは……」


ちょっと無理かな……とオレがいいかけたところで。


「「「はぁー!!!?」」」


割れんばかりの悲鳴がクラス中に響いた。

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