キャラ変
「ひっ!?」
クラス中から一斉に視線を向けられたので、三枝はたまらずたじろぎ、小さく悲鳴をあげた。
「ち、遅刻してごめんなさい……」
一斉に見られたのが、授業を遅刻したことだと思った三枝は少し怯えながら頭を下げる。
「ちがーーう!!そんなことはどうでもいいの!!」
それを見ていた柊が席から立ち上がりながら、声を上げる。
ってかお前、なんかキャラ変わってねぇ!?極度の人見知りじゃなかったっけ?!
その姿に思わず、心の中で突っ込む。
「いきなり二人でどっかに行ったかと思うと、全然戻ってこないし、ようやく戻ってきたかと思ったら楽しそうに笑ってるし、一体何があったの?!」
ビシッと人差し指でオレ達を指差してくる。
「あっ……」
柊のその言葉で三枝はようやく理解したらしく、怯えた様子もなくなった。
「いやいや、別に何もないって。皆が考えてるようなこともないから」
三枝は皆に向かって冷静に説明する。
さすがに自分はプロのゲーマーで、でもゲーセンでうっかり素人のオレに負けたからそのお願いをしてた。なんて言ったらまた色々騒ぎそうだしな。
今は言わない方が無難だろう。
「あやしい……」
だが、そんな言葉で柊並びにクラスメイト全員を納得させられるわけもなく、結局その日はずっと奇異の目を向けられるのだった。
「はぁ……」
家へ帰ってから、カバンを適当な場所に置くと、そのままベッドの上に横になる。
とにかく疲れた……
クラスメイト全員からは奇異の目で見られ、柊には睨まれる始末。
別に悪いことをしてるわけじゃないのに、なんでこんなことに……
とはいえ、三枝から本当のことを説明させるわけにもいかないし、困ったもんだ……
「はぁ……」
額を抑えながら、ため息を吐いた、その時。
ブーブー。
ズボンのポケットに入れている携帯のバイブが鳴る。
連続でバイブが鳴ってるから電話か。
こんなときに誰だと、少しかったるい思いで携帯を掴み、ポケットから出す。
そしてディスプレイを見ると、オレは思わず目を見開いた。
なんと、電話をかけてきたのは柊だったのだ。
「はぁー……」
2.3深呼吸した後、電話をとる。
「もしもし……」
そして恐る恐る、口を開く。
ったく、なんで柊と電話するだけでこんなにドキドキしなきゃならないんだ
……!
もっと別のドキドキなら大歓迎なのに……!
「あのさ、いきなりで悪いんだけど今からちょっと会えない?」
電話越しで聞く柊の声は少しだけ緊張しているようだった。
「あ、ああ、うん。大丈夫だけど……」
「良かった。じゃあそっちにいっていい?」
そっちというのは、オレの家のことだろう。
「わかった。じゃあ待ってるな」
特に断る理由もなく、オレはそう返事した。
「ありがとう。じゃね」
それだけ言って電話は切れた。
一体何言われるんだろう……
オレのドキドキは、しばらく収まりそうにないと携帯を握りしめながら思うのだった。




