アブノーマルではない?
少し先を歩く三枝の後を追いかけるように歩き続ける。
既に階段を何回か上がった。
オレが思うにどうやら三枝は屋上に向かっているようだ。
屋上ってことは、告白の定番場所じゃないか……!
ちょっと古い気もするけど……
少しだけ、期待を抱き、ドキドキしながら歩みを進める。
やがて屋上にたどり着き、三枝がガチャっとドアを開ける。
「ここならいいかな……」
なんて言いながら、屋上の真ん中に進み、さらっとしたツインテが風にたなびかせたので、オレはその姿にドキッとした。
「あ、あの話って……?」
ごくっと喉を鳴らし、かなり緊張しながら、そうたずねる。
「あ、うん。あの、単刀直入に聞くけど、浪岡のゲーセンでアタシと戦ったの君だよね?」
その言葉に一瞬詰まる。
三枝の言う浪岡ってのは、オレの地元のことだ。
「あ……!そうだ!オレもその話がしたくて」
告白されるかもとか、うぬぼれて余計なことを考えていたせいで肝心なことを忘れてしまっていた。
それから屋上に来てから早10分。
まもなく昼休みが終わるチャイムが鳴る頃だ。
しかし、三枝から聞かされた話はそんなことを忘れさせるくらい衝撃的なものだった。
簡単に言うと、三枝はプロのゲーマーらしい。
とあるゲームの世界大会ではベスト8に入ったことあるほどの実力だそうだ。
そんなプロのゲーマーが地方のゲーセンで、どこの誰かもわからないような人間に負けたと広まれば、自分の立場が危うくなると感じた三枝は、対戦相手が誰だったのかをネットの口コミで調べ、奇跡的に転校先にいることが分かり、オレにあの時のことを他の人間に広めないでほしいと口止めをお願いするために、誰にも聞かれないように屋上に連れてきたのだ。
三枝の事情も分かり、あの時のことはオレは誰にも言わないと固く約束した。
まぁ勝てたのが奇跡のようなもんだったと説明したら三枝はものすごく笑って、ほっとしていた様子だった。
「ゲーマーの仕事ってどんなことやってんの?」
屋上から教室へ向かう階段を降りながら、そんなことを聞いてみる。
ちなみに昼休みは、とうに終わっている。
なので、二人揃って遅刻なのだが、運の良いことに今の授業は選択科目なのでそれぞれが配られた課題を期限までに提出するだけで、基本的には担任がいないのだ。
「んー、基本的にはオンラインゲームで優勝とかスコアを競うことで賞金をもらうんだけど、アタシはまだ学生だし、これからゲーマーで一生を過ごそうとは思ってないから結構気楽にやってるよ?他の人からしたら、舐めてるって思われるけど」
言いながら、三枝は頬をかきながら苦笑する。
しかし、こんな可愛い子がゲーマーだなんて分からないもんだな。
「そうなのか。ゲームで仕事できたら楽だろうなって思ってたけど、案外そうでもないんだな」
ゲーム好きなら一度は思うであろう夢だ。
かくいうオレも子供の頃は遊んで暮らしたいと思っていた。
「うん。結構シビアだからね……」
はぁ、とため息を一つ吐く。
そのため息でゲーマーの世界がどれだけ大変なのか、少しだけ感じた。
「しかし、まさかこんなところで再会するとは思ってなかったよ」
どことなく、三枝の顔が暗かったので話題を少し変えることにした。
「それはアタシも思った!しかもクラスも一緒とか奇跡だなって」
「ゲームの神に感謝だな」
ははっと笑ってそう言ってやると三枝も同じように笑ってくれたので、オレは少しほっとした。
二人して笑い合っていると、ちょうど教室へと着いた。
そしてガラッとドアを開けた瞬間。
「「「「!!!」」」」
クラス中がこちらに注目した。




