神に感謝
それから降着状態がしばらく続き、決着が付かず、タイムゲージを見ると試合終了まであと残り20秒。
このまま何もなければ、時間切れで体力ゲージが満タンであるオレの勝利だ。
だが、そんなことが起こるわけがなく、残り時間が16秒になった瞬間、相手が動き出した。
だが、相手を倒せずともほんの少しの間、耐えるだけでこの勝負勝てる。
そして、恐らく相手はオレが攻めることはせず、ひたすらガードでしてくることを想定していると考え、敢えて攻め続けることにした。
必殺技ゲージが回復したので遠距離向けの攻撃である波動を放つ。
相手はそれを楽々とジャンプして躱したが、オレはそれを狙っていた。
波動はフェイク……
本当の狙いは……!
すかさずオレもジャンプし、相手のキャラに接近する。
が、相手はそオレの考えの裏をかき、なんと空中飛び膝蹴りを仕掛けてきた。
「……っ!」
予想外の事態に今度はオレの思考が停止しそうになる。
相手の攻撃により、体力ゲージが少しばかり減る。大技ではなかったのが唯一の救いだったが、もし、次に何かの攻撃を食らえばオレの負けは確定。
だが、ゲームでは空中で体勢を立て直せるはずもなく、オレの操作しているキャラは無惨にも地面に倒れた。
そして相手のキャラは先に地面に着地したので、既に操作できる状態で立っている。
このままでは、オレのキャラが自動で立ち上がった瞬間、攻撃を食らい、そのまま時間切れになる。
まさに万事休す。
周りのギャラリー達もオレの敗北を悟ったのか、ちらほらとため息が聞こえてくる。
普通ならここでもう諦めて潔く負けてしまうだろう。
だが、今のオレは相当諦めが悪かった。
せっかくここまできたんだ……!負けたくない……!!
その気持ちがとても強かった。
ゲーマーとは常にこんな気持ちなのだろうかと思う。
オレは必死に頭を巡らせた。
この状況を打破できる一手を見つけるために。
やがて、オレのキャラが立ち上がる。
すかさず、相手はガードしていても食らってしまう下段足崩しの体勢に入る。
オレはそれを狙っていた。
それがきた瞬間、オレはボタンを素早く決められた順に連打する。
上手くいくかわからない。だが、これにかけるしかなかった。
頼む……!
オレは心の中で神に祈った。
すると、その願いが奇跡的に通じたのか。
オレのキャラはダメージを受けることなく、逆に迫ってきた相手のキャラの足を掴んで勢いよく、振り回し、画面の端に投げ捨てた。
その瞬間、ギャラリーが驚きの声を上げる。
秘技、ジャイアントスイングだ。