必殺技!
とんでもない強者もいたもんだと、騒いでいると友達の一人がある提案をしてきた。
誰かその強者に挑んでみないか。と
オレ達は一度ゲーセンの外に出ると道の端に移動し、誰が挑戦するか話し合った。
どうせ負けるのだから、止めておけばいいのにこういうとき、男子は何故かやる気になってしまう生き物なのである。
結局、話し合いの結果、ジャンケンで挑戦者を決めることになり、勝ったやつが挑戦することになった。
「はぁ……」
足が異様に重く、中々前に進めない。
そんなオレをギャラリー達は声高らかに応援してくれる。
ジャンケンの結果、挑戦者はオレになった。
まさか自分がやることになるとは思っていなかったので、負けた時は信じられず、身体が固まり、一瞬心臓が止まりそうになった。
まぁいいや、適当に負けよう。どうせ勝てないだろうし。
負けを覚悟しながらイスに座ると、そこで初めて衝撃の事実に気づく。
このアーケードゲーム、いつの日かオレがフルボッコにされたゲームじゃねーか!
最悪だ……
ある種のトラウマを植え付けられたこのゲームを再びプレイすることになるとは……
戦う前から早くも心が折れそうになりながらも、震える手で200円をいれる。
そして戦意喪失したため、適当にキャラを選択し、対戦スタート。
開始直後、早くも相手が襲いかかってきた。
技を出すフリしてわざとやられよう……
そう思い、レバーを動かそうとした時、違和感を感じる。
あれ、この動き、どっかで見たような……
妙な既視感を覚え、咄嗟にレバーを動かす。
すると、相手の動きが一瞬躊躇したように止まった。
が、それを感じさせないように再び動き出す。
フェイントからの投げ……
そう相手が動く気がして、オレは左手の指でボタンを同時に押し、必殺技ゲージを解放する。
これは一時的に必殺技を使うことができなくなる代わりに一瞬、オーラを放出させることで、近くにいる相手を吹き飛ばす技だ。
オレの予想通り、相手はフェイントを仕掛けてきた瞬間、オレのオーラで画面の端に吹き飛ばされた。
それにより、体力ゲージが1/4ほど無くなる。
これにはギャラリー達も驚きの声を上げた。
当のオレも驚いているが、何より一番驚いているのは本人だろう。
事実、キャラが立ち上がってからピタリと動きを止めた。