お酒は20歳から
GW初日。
オレは前日に予め用意しておいたキャリーケースを引き、駅まで向かう。
そして電車とバスを乗り継ぐこと、約3時間。
遂に我が家へとたどり着いた。
「なんか変な気分だな」
家を前にしてたった一ヶ月半ほどしか離れていないのに、やたら懐かしい気がする。
さて、突っ立ってるのもなんだし、とりあえず家に入るか。
オレはキャリーケースを手に持ち、玄関のチャイムを鳴らす。
すると、鳴らしてわずか1秒ほどで中からドタドタと足音が聞こえたと思ったら、勢いよく玄関のドアが開いた。
「おかえりー!お兄ちゃん!!」
そこにはつい1週間ほど前に会った嬉しそうな笑顔を浮かべた妹の姿が。
「家の中では静かにしろよ」
その姿に苦笑しながらオレは家の中へと入っていった。
そして階段を上がり、キャリーケースを自分の部屋に置いた後、ベッドに座り、オレの部屋にやってきていた陽愛に尋ねる。
「母さんは?」
「お母さんは買い物に行ってるよ。お兄ちゃんのためにご馳走作るんだって」
「そうか。楽しみだな」
その光景を想像し、ついつい口の端がつり上がってしまう。
母さんの料理は、はっきり言ってかなり美味い。料理人顔負けの腕前なのだ。その母さんのご馳走となれば、楽しみにならないはずがない。
「お父さんはお休みでリビングにいるよ。けどさっきまで寝てたからまだ寝てるかも……」
「そっか。まぁとりあえず下にいくか」
言って、ベッドから立ち上がり、陽愛と共にリビングへ向かう。
そしてリビングへ入るドアを開けた瞬間。
「帰ってきたか、ヘタレバカ息子」
そんな罵声がリビングにいる人物から浴びせられた。
「久しぶりに帰ってきた息子にそのセリフはひどいだろ?!」
たまらず、突っ込む。
「ははは。まぁ軽い冗談だから気にするな」
リビングのイスに座って笑う父さんの目の前にあるテーブルには多数の空き缶が。
どうやら既に軽く酔っぱらっているようだ。
「休みだからって飲み過ぎんなよ……」
空き缶を片付けつつ、釘を指す。
「心配すんなって」
言いながら新しい缶を開け、豪快に飲んでいく。
ま、一緒に付き合えって言われるよりはマシか。
ちなみに父さんはかなりガタイの良い身体をしているが、身体を使う仕事をしているわけではなく、日本で知らぬものはいないと言うほど有名なとあるお菓子会社に勤めている。
こういうのもなんだが、かなりいい加減な人間なのに、何故か周りからは信頼されていて、そのおかげか部長にまで出世している。もしかしたら、仕事ではしっかりしているのかもしれない。
それにオレが一人暮らしを不自由なくできているのも父さんのおかげであるので、すごく感謝している。
テレビを見ながら、笑い声をあげている父さんを後目に後ろにいた陽愛の方をぐるっと向く。
「下手に長居すると厄介になりそうだから、部屋に戻ってゲームでもしようぜ」
「そうだね。賛成」
というわけで、二人揃って再び部屋に戻っていった。




