ポイ捨ては罰金
「あー重い……」
愚痴をこぼしながら、両手でなんとか支えながら廊下を歩く。
さほど積まれているわけではないので視野は良好なのだが、それよりも一つ一つが重かった。
授業のあと、教師に職員室まで運ぶのを手伝ってほしいと頼まれ、引き受けたのだが、安請け合いだったかなと早くも後悔した。
それに背が高いってだけで、何かと頼まれたりするから厄介なんだよな……
背が高くても良いことなんて全然ないのに。
と、心の中で愚痴りながら、ようやく職員室までたどり着いた。
「はー……」
指定された机の上にそれを降ろした途端にため息が出る。
まったく腕がパンパンだよ……
筋肉痛にならなきゃいいけど。
後が怖いので軽く腕をほぐしておく。
それから教師にごくろうさんと一言言われ、そのまま職員室から出ていく。
と、出た瞬間、一枚の紙が目に飛び込んできて思わず立ち止まる。
「これって……」
それはいつの日か担任が言っていた生徒会のボランティアの用紙だった。
ボランティアを募っているのは今日と明後日だった。
ボランティアの内容は学校周辺のゴミ拾いと生徒会雑務の募集。
用紙をよく見てみると当日の受付も可能ということだった。
「どうせ暇だしな……」
独り言を呟くとオレは再び職員室に入っていった。
そして放課後。
「さて……」
オレはカバンを手に取ると、素早く教室から出ていった。
「「あやしい……」」
そんなオレを遠くから見てみる二人がいたのだが、オレはそのことに気づかなかった。
教室を出て、階段を上り、三階にある生徒会室の前へ。
「ふぅ」
一つ息を吐き、呼吸を整え、ドアに手をかける。
「失礼します」
ドアを開けると同時に言う。
中には腕章を付けた何人かの役員がいて、その中に見覚えのある顔が一人いた。
「あ」
その人はオレの顔を見た瞬間、こちらへとやってきた。
「今日はありがとうね。でも、急にどうしたのかしら?もしかして、アタシ目当て?」
怪しいといった様子で会長はニヤニヤとした怪しい笑みを浮かべた。
「べ、別にそんなんじゃ……!単に暇だっただけです」
別にどもる必要なんてないのに、何故かどもってしまう。
そのせいで周りの役員方はクスクスと笑っていた。
「あら。それはそれで傷付くけど……まぁいいわ。とにかくありがとう。今日の内容については知ってるわよね?」
「はい。今日は学校周辺のゴミ拾いですよね?」
職員室でボランティアに立候補したとき、大体のことは教師から聞いていた。
「ええ。嘆かわしいことにウチの生徒の中にポイ捨てをするマナーの悪い生徒がいて、近隣の方から苦情の電話がきてるのよね……」
そう言いながら、がっくりとした様子で会長は額に手を当てた。
「それを聞かなかったことにするわけにもいかないし、こうしてアタシ達が定期的にやってるってわけ。本当はそのマナー違反の生徒にやらせたいんだけど、特徴がアバウトすぎて決め手がないのよね」
「そうなんですか……」
皆の知らないところでこうして生徒会の人達は頑張っているんだな。
「オレ、精一杯やります」
そう言ってゴミ袋と軍手をもらったあと、勇んで生徒会室から出ていった。
「ふふ、張り切っちゃって……」
そんな穏やかな微笑みが背後から聞こえたような気がした。




