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さらば妹

「はー!!買った買った!」


大満足した様子の会長と3時間後、画材屋さんの近くにある喫茶店で昼食兼休憩をとる。


「すごい金額でしたね。しかも、それを現金で買っちゃうなんて……」


大量に買ったので袋が4つもある。

女性にはとてもじゃないが、持てない重さだったのでオレがここまで運んだ次第だ。一つ一つが重なると結構重かった。


ていうか、金持ち恐るべし。

オレなんて昼食のランチ代を気にするくらいなのに。


「あはは……まぁ、ね。その分、自由に遊んだりできないからね。今日だって親が用事で出掛けてるからここに来れたくらいだから」


会長は、はぁとため息を一つ吐いた。


「同人誌描いてることがバレたら大変ですね……」


「最悪、勘当されるかもね」


はははと笑いながら、先程運ばれたばかりの会長はオレンジジュースをすすった。


「はは……」


なんとか笑ってみるが、どんなに頑張っても乾いた笑いしか出なかった。


笑い話にできるような内容じゃないだろ……


でも、勘当されてもいいくらい漫画が好きってことかな。

それくらい打ち込めるというか好きになれるものがあって、それはそれで少し羨ましいと思う。


「それより今日はごめんね。急に誘っちゃって」


「いえ、特に用事もなかったんで。むしろ誘ってくれて嬉しかったです」


こんな美人と出掛けられるなんて滅多にないだろうし。


「そう言ってくれると嬉しいよ」


会長はふふっと微笑んだ。

と、その時。

ブー。とテーブルの上に置いていた会長の携帯が震えた。


「やばっ!設定してたアラームが。早く帰んないと!」


その瞬間、血相を変えたようにソファから立ち上がり、慌てて荷物をまとめる。


「ごめんね!早く帰らないと親が帰ってきちゃうから」


言って、伝票を掴むと急いでレジの方に向かい、支払いをあっという間に済ませ、喫茶店から出ていった。


「はや……」


席に座ったまま、一連の様子を見ていて、口からはそんな言葉しか出てこなかった。

それより、荷物大丈夫かな。

かなりの重さだったが。

後で連絡してみるか。

そのあと、オレは頼んだパスタを頬張りながら、一人でゆっくりとした時間を過ごした。


そして昼の2時過ぎ。

LINEで会長が無事に家に帰れたことを知り、一安心したあと、家に帰ってきた。

ちなみに会長はタクシーで帰ったらしい。さすが、リッチは違うな。


「ただいまー」


玄関を開けると同時に言うが、シーンとしたまま、誰からの返事もなかった。


「あれ……?」


虚しく自分の声だけが、響き渡り、拍子抜けする。

てっきり陽愛からの返事があると思っていたんだが、どっか出掛けたのかな?


うーん、と首をかしげながら、リビングに入ると家を出るまで置いてあった陽愛の荷物もなくなっていた。


「あ」


そこでようやく気づく。

元々、オレは一人暮らし。

ということは陽愛は実家に帰ったってわけだ。


「なんだかんだで楽しかったな」


リビングを見ながら今はもういない、騒がしい妹の姿を思い出し、ついつい笑みがこぼれる。


こうして見ると家がすごい広く見える。

たった3日間だけだったのに、少しだけ一人だけの空間が寂しく感じるのだった。

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