アブノーマル完了。
「ほんとに杉原?ほんとのほんとに??」
聞きながら思わず、声が震えてしまう。
そんなオレを見て杉原は少し照れくさそうに笑った。
「驚いちゃうよね……こんな格好じゃ……」
言いながら、内股になりながらもじもじと太ももを擦り合わせる。
「か……」
可愛い!!
たまらず、両手で顔を隠す。
危うく、声になりそうだった……!
まさか男に可愛いと思うなんて……!
いや待て!
それより、まずはその格好の理由が気になる。
「とりあえずお前、男だよな……?」
「…………」
無言のまま、杉原は頷いた。
それからホームルームが始まるまでのわずか10分で杉原は全てのことを簡潔に話してくれた。
杉原は小学生4年の時の夏休みに突然、引っ越した。
それには理由があったそうで、両親が離婚したそうだ。
そして父方の方についていったそうだが、父親と暮らしていくうちに問題がひとつできた。
それは父親は本当は娘がほしかったこと。
そのことをまるで恨むかのように、毎晩、毎晩杉原に言い続けたのだ。
昔のように優しく、元気のある、明るい父親に戻ってほしい。
その一心で杉原は貯めたお小遣いで女の子の服を買い、それを父親に見せたそうだ。
元々、女顔の杉原。
その上、可愛らしい服。
それを見た父親は大感激。
そしてそれ以降、父親を喜ばせるために女の子の服を着ていた……
はずが、いつの間にか、そっち方面に趣味が目覚めてしまい、今に至るそうだ。
中学の時と同様に、今回も学校側に無理をいって女子の制服を手配してもらったそうだ。
そして、教卓前ではいつの間にかホームルームが始まっており、担任教師がクラス全体に向けて挨拶している。
が、その話は全く耳に入ってこず、ぼけーとした様子で肩肘を付きながら、窓から見える外の景色を見ながら物思いにふける。
まさか……
こんなところで、こんな再会するなんてな。
まぁ知り合いがいたのは、ラッキーだったけど。
「……」
横目でチラッと覗き見ると、そこには真剣な表情で話を聞く杉原が。
可愛いな……
って!違うだろ!!
確かに可愛いがあれは男だ!!
「はぁ……」
たまらず、ため息がこぼれる。
こんな感じでオレの高校生活は幕を開けた。