生徒会登場
通学路の途中で杉原の後ろ姿を見かける。
「よっ。おはよー」
言って、隣に並ぶ。
「あ、薫君。おはよー」
「あの、昨日は悪かったな。陽愛が突然来た上に勝手に騒がしくして……」
言ってて、ばつが悪くなり、頬をポリポリかく。
「ああ、別にいいよ。気にしてないし、久しぶりに会って僕も嬉しかったからさ」
「そう言ってくれると助かるよ」
どうやら、昨日のことは気にしていない様子でオレは少しほっとした。
そのあとはいつものように雑談を交えながら、学校へと向かうのだった。
間もなく学校へ着くという頃に校門前でやたら人が群がっている。というか立ち止まっているのが見えた。
「なんだ?あれ?」
隣にいる杉原にたずねてみる。
「さぁ?僕もわかんない」
二人で首をかしげながら、どんどん校門に近づいていくとその正体がわかった。
「シャツはきちんと中に入れること!できてない生徒は反省文だからね~!」
言いながら、一人の男子生徒を呼び寄せる。どうやら校則違反をしたらしい。
おそらく生徒会所属の先輩なのだろう。腕に着けた腕章がチラッと見えた。
「制服の抜き打ちチェックかな?」
隣にいる杉原が口を開く。
「みたいだな。整えてきてよかった」
無駄なことで生徒会に目をつけられたくないからな。
これからの3年間にも響くし。
二人で校門を抜けようとしたそのとき、誰かに髪の毛をちょんちょんと触れた気がした。
「ん?」
突然走った感覚にオレは反射的に後ろを振り向いた。
「寝癖。ちゃんと直した方がいいわよ。ふふふ」
そこには、腰まであるような長い黒髪を一つ結びし、眼鏡をかけたきれいな女性が立っていて、オレの寝癖をちょんちょんと触っていた。
「あ……すいません」
触られたことで、急に恥ずかしくなり、それを隠すように頭を下げた。
「今度からは、ここにも気を付けてね」
その女性は去り際、優雅に微笑みながらオレに手を振った。
オレは赤くなっているであろう頬を見られまいと足早に下駄箱へ向かった。
それを見て、杉原は少しだけにやつきながら何も言わずに後ろからついてきた。
「あー、びっくりした」
教室へ向かう階段を上りながら、独り言のように呟く。
「新入生がきたから、やってるのかな?」
「多分、そうだろうな」
そう応えつつ、自分の顔を触る。少し熱を帯びているのか、まだ熱かった。
「きれいな人だったね」
オレの心を読んだように杉原がそう言ってきた。
「あ、ああ……」
どう返せばいいかわからず、つい生返事になってしまう。
「確か、あの人、生徒会長だよね。入学式の時、挨拶してた」
「そうだったか?覚えてねーや」
「あらあら。きれいな人だったからてっきり知ってると思ってたヨ」
杉原はニヤニヤとした笑みを浮かべる。ってか、今、どことなく語尾がおかしかったような。
なんて、くだらないやりとりをしているうちに教室へとたどり着いた。




