見えちゃう
その後、4人で談笑していたのだが、もう時間も遅かったので、柊と杉原は家に帰った。
今は陽愛といっしょに晩御飯の準備中だ。
こうしてみるとまるで実家に戻ったような気分だ。
「ていうか、なんでオレの住所分かったんだ?」
言いながら、先ほど出来上がったばかりのチキンライスを皿に盛る。
母さんには、面倒なことになるから、言わないでくれって念を圧しといたはずなんだが。
「ふっふっふ……」
すると、陽愛はオレの問いに対し、にやっと怪しい笑みを浮かべながら笑いだした。
「お兄ちゃん、今の世の中ってさ、便利だよね」
「な、なんだ。急に……って!まさか……!!」
「どうやら、気づいたみたいだね」
オレはベッドの上に置いていた携帯を慌てて取りに行き、急いで設定を確認する。
「あー……やっぱりか……」
予想通りの結果につい、項垂れる。
「ったく、携帯のGPSを使って兄の居場所を探すなんてお前は探偵かよ……」
たまらず、呆れてしまう。
オレと陽愛は型番が同じの携帯を使っている。そして、中学1年の時、今の携帯を買ってもらったのだが、その時、オプションとしてGPSで互いの居場所が分かるようにしてもらったのだ。
母さんと父さん的には、物騒な世の中なので、何が起こるかわからないからという理由で付けたそうなのだが、それを陽愛はこういう形で利用しているのだ。
全く、悪知恵が働く妹だ。
「そもそも、お兄ちゃんが隠すから悪いんだよ。こんな可愛い妹に隠し事するなんて」
水で洗ったレタスとトマトを別の皿に盛りながら、陽愛がむすっとした顔で言った。
「あー、そうだね……」
棒読みでそう言う。
確かに可愛いのは認めるが、それ以上におかしい部分が多いからな。
それから出来上がった晩御飯を食べ、しばし休憩したのち、オレと陽愛は近くの銭湯に向かっていた。
家のお風呂を使っても良かったのだが、客人用の身体を洗うタオルなどが無かったので、銭湯に行くことになった。
ま、陽愛は案の定、お兄ちゃんと同じタオルでもいい!って言い張ったのだが。
こっちが困るわ。
歩いて5分ほどで銭湯に着いた。
「そういえば、小さい頃もお兄ちゃんとこうしてお風呂屋さんに来たよね」
出入り口のところで靴を脱ぎながら、陽愛が口を開いた。
「そうだな……」
陽愛に言われて、オレも昔のことを思い出した。
オレ達がまだ小学生になったばかりの頃、母さんと父さんと4人でよく来たっけ。
あの頃はまだ男女の区別なんてほとんどなかったから、お互いそんなの関係なく入ってたな。
「……!!」
その時のことを思い出し、うつむいた瞬間、顔が少しだけ赤くなった。
「どうしたの?」
そんなオレを見て不意に陽愛が顔を近づけてくる。
「い、いや、なんでもない!オレ、先に入ってるから!!」
赤くなった顔を見られないようにとに、陽愛の返事も待たず、男湯ののれんが垂れ下がった部屋の奥に進んでいく。
前屈みになってたから陽愛の胸が、偶然にも目に入ってきた……!
柊ほどではないが、程よい大きさで…………って何考えてんだ!オレ!!
服を脱ぎながら、頭をブンブンと左右に振る。
「変なお兄ちゃん……」
そんな一言がどこかから聞こえた気がした。




