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妹っていいよね

スーパーでまとめ買いをしたあと、杉原と別れ、アパートへ帰ってくる。


玄関を開け、無造作に靴を脱いだあと、揃えることもせず、そのままリビングへ移動し、カバンをベッドの上に投げ出し、冷蔵庫を開ける。

そして、買い込んだ食料やらを冷蔵庫に入れながら、そのついでにペットボトルのお茶を取り出し、キャップを開け、ごくごくと飲む。


「はぁー」


あらかた飲んだところで、キャップを口から離し、口元を拭う。

さて、立ってるうちに晩御飯の支度をやってしまうか。

ペットボトルのキャップを閉め、冷蔵庫に戻し、ブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外し、腕捲りをしたところで、ポケットに入っている携帯が震え出す。


「ん?」


振動に気づき、ポケットから携帯を取り出す。

携帯を取り出してからもバイブはずっと鳴っており、ディスプレイを見ると母さんからの電話だった。


「もしもし」


ディスプレイをスライドさせ、通話状態にしてから、携帯を耳に当てる。


「あ、薫?元気にしてる?高校はどう?」


受話器越しに聞こえてきた母さんの声は、いつもと変わらない感じだった。


「ああ。元気だよ。それがさ、小学生の時、友達だった杉原と再会してさ、びっくりしたよ」


「あらまぁ。それは驚きね。どうだった?何か変わってた?」


「うん。変わってたね……」

色んな意味で……と心の中で付け足す。

女の子になってたといえば、確実に説明を求められるし、そこらへんは隠しとこう……


それから勉強はどうだとか、彼女はいつできるのかとか、色々なことを聞かれつつ、陽が沈むまでオレは母さんとしばしの間、親子の会話を楽しんだ。


「あら、もうこんな時間じゃない。あんたもご飯の準備しなきゃね。それじゃ、一人暮らし頑張んなさいよ!」


「ああ。頑張るよ。GWには帰るつもりだから」


「はいよ。ああ、あと、陽愛にも電話してやんなさいよ。寂しがってたから」


「あ、ああ。わかった……」


オレが最後にそう言うと電話は切れた。

陽愛なぁ……

画面の暗くなった携帯をじっと見つめる。


陽愛とは、オレの妹。

同い年だが、生まれたのがオレの方が早かったため、オレが兄である。


と、いっても実の妹ではない。


陽愛はオレの母さんの姉、つまりオレから見たらおばさんにあたる子供だ。

まだ陽愛が生まれて間もない頃、そのおばさんが脳梗塞で突然亡くなってしまったらしい。

陽愛の父親はおばさんが身籠ってると分かった途端、どこかに行方をくらましてしまったそうだ。世間でいう蒸発ってやつらしい。


直後にそのことを知った母さんが陽愛を養子として引き取った次第だ。

もちろん、陽愛はそのことを知らない。

だが、オレは中学の時、その事実を聞かされ、正直言ってかなり動揺した。

しかし、血の繋がりなんて無くても人は誰とでも家族になれる。オレは母さんにその時、そう教えられた。


だから、その事実を知ったあとも、オレは陽愛のことを本当の妹のように接してきた。つもりだった。

だが、どこでどう間違ったのか、いや、ある意味成功なのかもしれないが、陽愛はオレにいつもベッタリだった。


そりゃもう、周りが引くぐらいのベッタリ。

思春期である中学生になっても陽愛はとにかく、いつもオレと行動したがった。

中学3年の時、クラスが別々になったことに陽愛は怒り心頭し、職員室に乗り込んで、クラスを一緒にしろと直談判したほどだった。


高校に入り、お互い別々になって少しはそれも治るかと思ったが、どうやら、それも失敗に終わったようだ。


「はぁ……」


ついつい、ため息が出てしまう。


兄としてこれから先が色々心配だ。

心配事が一つ増えてしまった気がする。

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