友達できた
「お邪魔します……」
ものすごく小さな声でオレの隣に腰掛ける。
柊が隣にきた瞬間、ふわっと良い匂いが漂った。
そのせいで、余計に緊張してしまい、背中から汗が吹き出ていた。
「……」
そんなオレ達を杉原は弁当を食べながら、ずっとジーっと見つめてくる。
「ひ、柊は昼休みはいつも屋上にくるのか?」
とりあえず平静を装い、話しかけてみる。
てか、なんで柊と話すだけでこんなに緊張してんだろ。
今朝は普通に話せたのに。
たまらず、自問してしまう。
「ううん……いつも教室で食べるんだけど、今日は色んな人から質問ばっかされて……なんか居心地悪くて…」
言って、弁当の中から箸でウインナーを摘まみ、その小さな口に運ぶ。
「あ、なんか、ごめんな……」
その原因が少なからず、オレにもあるので頭を下げて謝った、
「ううん、井上君は悪くない……最初に話しかけたのは、私だから。それに……」
「それに……?」
その先の言葉を待つ。
「これからも仲良くしてほしい……」
弁当を食べる手を止め、柊はおずおずと手を差し出してきた。
「あ、ああ……こちらこそ」
それに少し驚きつつ、オレはその手をがっしりと掴んだ。
柊の手はオレより小さくて、でもとても柔らかくて、そしてほんのり温かかった。
そうだ。
せっかく柊と話せるようになったんだから、周りの目なんか気にする必要なんかないよな。改めてそう思った。
「あのー」
と、オレが自分一人で納得している横で声が聞こえてきた。
「僕のこと忘れてるでしょ?」
杉原がむすっとした様子でオレ達の間に割り込んできた。
「「あ……」」
お互い、顔を見合わせる。
「あ、じゃないよ。もー」
杉原はいつの間にか弁当を食べ終わっていたようで、弁当箱は丁寧に片付けられていた。
「悪い、悪い」
「まぁいいけどさ。それより、柊さん」
杉原がオレの横にいる柊の顔を真剣に見る。
「な、なに?」
柊は突然、名前を呼ばれてびくっと肩を震わした。
「僕とも仲良くしてほしいな。なんか二人だけ勝手に仲良くなってずるいよ」
ははは。と笑いながら杉原は柊に向かってスッと手を差し出した。
「こ、こちらこそ」
ほんの少し間が経ってから、柊はおずおずと杉原の手を握った。
「ははは……」
その様子を見ていて、つい笑みがこぼれてしまう。
時間がかかるかもしれないけど、杉原と柊はきっとすぐに仲良くなる。根拠はないが、何故かそう思えた。
何だかんだで楽しい高校生活が待っているのかもしれないな。と、これからの高校生活少しだけ胸を踊らせた。