続き
人目につかず、ゆっくりと喋れる場所を考えた結果、ショッピングモールから少し離れたところにある公園にオレ達はやってきた。
「ここならいいか……」
息を整えつつ、辺りを見渡す。
夏とはいえ、そろそろ暗くなってきた時間なので公園には他に人がいなかった。
「はぁ、で、なんでわざわざ店に来たんだ?」
腕組みをしながら、目の前に立つ女の子をじっと見る。
そういえば、手を引いてここまで一緒に来たのに、妙に大人しいな。
「はぁ、はぁ……」
それもそのはず。
肝心の西園さんは苦しそうに胸を抑えながら、息を吐き続けるだけだった。
よく見れば、顔も青ざめている。
「っておいおい!」
少し走ったからそのせいか?!
いや、でもそこまで苦しくなるほど走っていないとは思うんだが、今はそんなこと考えてる場合じゃない!
オレは慌てて駆け寄ると、ゆっくりと彼女の肩を支え、近くにあったベンチに座らせた。
そして、自販機で水を買うと、ボトルを開け、それを手渡した。
「大丈夫か……?」
「し、心配するな。いつものことだ。我の身体を蝕む呪いが少し暴れているだけだ……」
そう言ってから水をごくごくと飲んでいく。
「……」
ここでも中二設定が出てくるのか……
しかし、まぁ大丈夫みたいだな。息も整ってきたみたいだし。
暫くの間、オレは西園さんの体力が回復するのを隣に座りながら、待った。
「ふぅ、ようやく収まったか……」
そして数分ほど経った後、西園さんは自分の胸に手を当て、息を一つ吐いた。
「もう平気?」
「うむ。面倒をかけたな」
ベンチに座ったまま、ペコリと頭を下げる。
「いや、まぁ気にしないでいいよ。オレも急に引っ張って悪かったし。それより、聞きたいことがあるんだけど」
「ん?なんだ?」
オレの言葉に西園さんは首をかしげた。
「なんで、わざわざバイト先に?」
「ん?何故って主が言ったのではないか。ばいとが終わってから話そうと。だから、終わるまで店の前で待っておった次第だ」
「ああ、そういえば……」
家を出る前にそんなこと言ったような……
それでずっと店の前にいて、怪しく思った三枝が声をかけて、中二設定を語られて困惑したってことか。バイトが終わっても西園さんと会わなかったのは、オレが裏口から出たからだ。
「はぁ、それで何を話す?」
合点がいき、ため息を一つ吐いたあと、そう訪ねる。
「もちろん、決まっておるではないか!!我と主の今後についてだ!!」
「はぁ……」
鼻息荒く、目をキラキラ輝かせる西園さんを見てオレはまたため息を吐いた。
こりゃ、家にはしばらく帰れそうにないな……
そう悟り、心の中でがっくりとするのだった。