とりあえず
「あ、来た来た」
ようやくといった様子で、オレの姿が見えた瞬間、三枝が遠くから手を振ってくる。
「おお!主ではないか!」
感激したように声を上げる。
三枝の隣には予想通り、ローゼットこと西園さんが。
「はぁ、やっぱり君か……」
二人の前に来て早々、がっかりと項垂れる。
「我に会いに来てくれたのか!?」
そんなオレの心とは打って変わって、西園さんは目をキラキラと輝かせ、詰め寄ってくる。
「まぁ、ある意味そうだね……」
この子、
めんどくさいから、なるべくなら関わりたくないんだけどな……
「ていうか、この子誰?知り合い?」
状況がわからない三枝は困惑するばかりだ。無理もないだろう。いきなりバイト先にどの時代かもわからない設定を延々と語られるのだから。
「少し前からちょっとね……」
だが、オレはそれしか言えなかった。
ちょっと以外になんて言えばいいかわからないのだ。
そもそもきちんと説明したところで、三枝が信じてくれるかどうかさえ、怪しい。
「とりあえず、なんとかしてよ。他のお客さんが困るから」
「あ、ああ。そうだな……」
三枝に促され、ひとまず、オレは西園さんの手を取り、店に前から立ち去った。