実は
「ふぁーあ……」
大きなあくびをしつつ、半身を起こし、目を擦る。
今日は土曜日。
学生として待ち望んでいた日でもある。
時計を見るとまだ朝の9時過ぎ。
特にやることもないし、もう一眠りするか……
そう思い、再び布団をぼふっと被った瞬間。
ブブブ。
と、テーブルの上に置いていた携帯のバイブが鳴る。
全く、いいタイミングだよ……
心の中で呆れながら、携帯を手に取る。
朝早いし、十中八九、メルマガだろうな。
と、思いながら携帯の画面を見てみる。
そこには意外な人物からのLINEが届いていた。
「今日の午後、空いてる?」
なんと、差出人は柊だった。
オレは意外な人物からの誘いに驚きつつ、LINEを返信した。
さて、とりあえず支度しないとな。
オレはベッドから降り、顔を洗うために洗面所へ向かった。
腕時計を見ると、今は昼の12時59分。
オレにしては珍しく正装をして駅の改札で目当ての人を待つ。
「あ」
13時ちょうどに到着した電車に乗っていたのであろう。
その人が階段を降りて、やってきたのでオレは声を上げた。
そしてオレの姿を見つけた瞬間、小走りになる。
「お、お待たせ……」
「い、いや、オレも来たばっかだから…」
まるで初めてのデートをする男女のようなやりとり。
実際、デートみたいなもんか。
柊と二人でお出かけだもんな……
まさか、柊からデートに誘われるとは思わなかった。
まぁ、本人はそんなつもりないと思うが、端から見たらデートだ。
あとは場所さえ、よければなとつい心の中で思ってしまう。
何故なら柊に誘われた場所とは、オタクの聖地、秋葉原だったからだ。
「そ、それじゃ、行こっか…」
「う、うん……」
柊も緊張しているのであろう。
うつむきながらも、少し頬を赤らめているのがチラッと見えた。
人見知りらしいし、誰かと出かけることなんて滅多にないのかな。
オレの少し前を歩く、彼女の姿を改めて眺める。
白の水玉が描かれたキャミブラウスにサンダル。
足と指にはネイル。
首にはネックレスが下げられている。
オレはオシャレに関しては疎い方だが、そんなオレでもセンスが良いと分かる。
そして、学校の時と同様にメイクはほとんどしてないようだが、かえってそのナチュラルさが彼女の可愛さを引き出している。
こんな美少女とオレはデートしている。
そんなことを思うと、ついつい顔がにやけてしまう。
周りの通行人も柊の容姿に思わず、目を引かれているようで、その横を歩くオレを疎ましい目で見ているようだった。