隠し味はハチミツとリンゴ
「へぇー、それは大変だったね……」
夕飯の席にて、先程オレの話した内容に目を見開いて陽愛は驚いた。
「ほんとだよ。前世だの約束だの言われてもそれは漫画の中の話だから、オレには一切関係ないのに、一方的にぐいぐい来られて参ったよ……」
ため息を吐いた後、陽愛の作ってくれたカレーをぱくっと口に頬張る。うん、相変わらず美味い。
「中二病なんてそれこそ漫画や小説の中の話だと思ってたけど、本当に現実にいるんだね」
「全くだ。会話するのも精一杯で、「私の右目には相手を異次元に葬る力があるのだ!」とか大声で言うんだぜ?呆れるどころか恐怖すら覚えたよ」
「それは色んな意味ですごいね……」
若干、青ざめた表情で陽愛はそう応える。
「いずれ近いうちにまた会おうって行って、勝手に家を出ていってくれたから良かったものの、あのまま居座られたらどうしようかと思ったよ……」
サラダ用にと盛られたトマトをフォークで刺しながら、その時のことを話しながら思い出す。
「学校同じだったらどうする?」
すると、陽愛が背筋が凍るような一言を放つ。
「やめろよ、縁起でもない。それに見た目、いいとこ中学生って感じだったから万が一にでもそれはないと思う」
「なーんだ、つまんないの」
期待はずれとばかりに少しだけがっくりとした様子を見せる。
「お前なぁ……」
他人事と思って、楽なこと言いやがって……
まぁ、あの子とは夏休みの間の付き合いだと思うから、それまでの辛抱だな。
少し気楽に考えながら、オレはカレーを食べ進めていった。