中二病!
「はぁはぁ……」
駅から家まで全力疾走したせいで、肩で激しく息をしながら、なんとか家の玄関まで辿り着く。
「とりあえず入って……」
がちゃりと玄関を開けると、中に入るように女の子を促す。
「ここが主の家か……立派な城だ」
感慨深そうに周りを眺めながら、うんうんと頷く。
いや、ただのアパートですが?と突っ込みたかったが、この子には通用しなさそうなのでやめておくことにした。
聞きたいことは山程あるのだ。
「さて、では失礼して……」
丁寧にブーツを脱ぎながら、家の中へ入っていく女の子。
その後に続き、オレも中へと入っていった。
リビングに来たところで、女の子ら珍しげに周りをぐるぐると見渡した。
男の家に入るのは初めてだからなのか、それとも主の家の中はこんな風になっているのか。と思っているのか、そこのところは分からなかった。
「適当に座っていいよ」
そう言ってからオレは冷蔵庫を開け、グレープジュースが入った紙コップを手にとってそれを取り出し、コップに注ぐ。
「では、失礼して……」
女の子は礼儀正しく、ゆっくりと腰を曲げてからテーブルの横にちょこんと正座して座った。
コップを両手に持ちながら、テーブルに置いたあと、オレもその隣にあぐらをかく形で座った。
さて、何から聞いたもんか……
オレは一人ごちた。
「とりあえず、名前教えてもらっていい?」
「おお、申し遅れた。我が名はローゼットハイム。人間としての仮の名は西園美空だ」
「ろ、ローゼットさんね……」
この子はローゼットハイム、もとい、西園さんというらしい。
名前に関しては突っ込むまい。
見た感じ中学生ってところか。
背は女子の中でも低い方だろうし、何より顔が幼い。
しかし、ゴスロリ衣装に目を引かれがちだが、よく見るとかなりの美少女だ。整った顔立ちにスレンダーな容姿。
この中二病さえ無ければ、引く手あまただろう。
「それでローゼットさん。なんだってオレを主だって言うの?」
「な、主はまさか前世の約束を忘れたと言うのか!?」
驚いたように西園さんは立ち上がって、オーバーリアクションで斜めに反り返った。
いちいちめんどくさいな……
「前世?約束?」
悪いが、前世の記憶などオレにはない。前世が何者かもわからないんだから。もしかしたら、前世はそこらへんにいるアリだったのかもしれない。
それにしても中二病との会話って疲れるな……