我が子あり
「「……」」
突然の来訪に二人揃って、口を開けてぽかんとした表情で見つめる。
誰か来た……って当たり前か、ここは柊の家だ。
彩佳って呼んでたから、もしかしてお母さんかな?
そう思って、じっとその女性を見つめる。
髪はロングでうっすら茶髪で、エプロンを巻いていた。しかし、年を感じさせないどこかおっとりとした雰囲気と上品な気質が感じられた。
「お母さん!?今日は遅くなるはずじゃ……!」
やや経ってから、我に返った柊はコントローラーを床に置き、立ち上がった。
「いやねぇ、彩佳の晩ご飯の支度してないから心配になっちゃって……」
「適当に食べるから、それくらい別にいいのに……!」
「ダメよぉ、ちゃんと栄養取らなくちゃ」
なんか柊の親とは思えないほど、おっとりしている人だな……
てっきり柊同様、人見知りかと思ったのだが、やりとりを見ているとどうやらそれとは真逆のようだ。
「そんなことより!!彩佳が彼氏を連れてくる日がくるなんて……!」
「「ぶっ!!」」
その言葉に二人揃って吹いた。
「べ、別に彼氏ってわけじゃ……!」
危うく咳き込みそうになった柊はそう否定する。
だが、その言葉を無視するように柊のお母さんはオレの前までやってき、おもむろに手を握ってきた。
「あ、あの……」
いきなり手を握られて、オレは少しだけドキリとした。
母親と同世代であろう女性に手を握られて、ドキッとするのはどうかと思うが……
「昔っから人見知りでお友達が中々、できなかったあの子がまさか彼氏を家に招くなんて……夢みたい……」
「いや、だから彼氏じゃ……」
「手のかかる子だけど、これからもあの子をよろしくね!」
そう言って、最後に握っている手に力を込めてから、立ち上がり、部屋を出ていった。
「なんかごめん……」
バタンと閉まるドアを眺めながら、柊がポツリと呟く。
「いや、別に……」
そう言って、テレビの画面に目を通すとポーズにするのを忘れていて、オレ達のキャラはいつの間にかやられていた。