ピンチかも
机の上にカバンを置き、席に着く。
隣にはもちろん、杉原が座る。
座ると同時にオレの前の席に座っている柊がこちら側に振り向いた。
「柊?どうしたんだ?」
「あ、あのこれ……」
言って、小さな紙切れを渡された。
「ん?」
「れ、連絡して…」
かろうじて喉から絞り出したのだろう。今にも消え入りそうな声だった。
「あ、ああ……」
とりあえず紙切れを受けとる。
会話はそこで終わったようで、顔を元の位置に戻し、柊は少し赤くなった顔で机の中に入っていた本を読み始めた。
なんだろ、これ。
とりあえず、受け取った紙切れを広げる。
そこには、達筆な字で10ケタほどの英数字が書いてあった。
「これは……」
「LINEのアドレスだね!!」
その声に反応し、横を向くといつの間にか、オレのすぐ右横に杉原が立っていた。
近いよ……
てか、なんか良い匂いがするよ!!
「LINEのアドレスまでもらうなんて……薫君、やっぱり本探し以外に柊さんと何かあったでしょ!?」
いつになく、興奮した杉原に詰め寄られる。
「いや、ないよ!?」
なんでこいつがこんなに興奮してんだ!?
と、突っ込んだと同時にどこからか視線を感じ、咄嗟に辺りを見回すと。
「「「……」」」
クラスメイト、全員から注目を浴びていた。
それもそのはず。
柊は中身はともかく、外見は目を引くほどの絶対的美少女。
恐らく、この学校に入った時から彼女に目をつけていた生徒は大勢いるだろう。
ましては中学からの同級生なら尚更。
そんな美少女からLINEのアドレスが書かれた紙を直接手渡されたのだ。注目を浴びるのも無理はない。
そして所々から、舌打ちが聞こえてきた。
ヤバい……
高校生活始まって3日目で早くもピンチかも……と思わざるを得なかった。