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1-9.遺跡

 この世界には『遺跡』が存在する。


 神代の時代のものだといわれているそれは、人々を容易には寄せ付けない。まず、場所が不明であること。多数のトラップがあること。守護者がいること。何より遺跡に侵入できても価値あるものを見いだせるとは限らないこと。

 

 ただし学術的には貴重品であり、みやこの学者たちに渡せば国から褒賞金がもらえる。実際、褒賞金目当ての冒険者も多い。


 あるいは、守護者の持つ神代の武具を手に入れられるかも知れない。自分の装備にしてもよし、売りに出してもよし。現実的に多いのは転売パターンである。

 本来守護者を倒せば遺跡の最奥に侵入できるのであるが、最後に待ち受けているのが難関の神代文字である。扉の前に現われる神代文字に、冒険者たちは涙を呑むのである。

 

 かつて、最奥を極めし者たちは全くの偶然か、ヤーンの祝福を受けた者たちであったのだろう。どうして侵入できたのか当人たちにも分らず、2度目はむなしく扉の前で立ちつくすだけだったという。

 

 この時発見され持ち帰られた神代の宝は、今も都で厳重に保管され眠りが覚めるときを待っているという。


「・・・ということなんだけど、分った?」


「扉をぶっ壊せばいーんじゃないの?」

「そんなことみんな思い付いて、やってみたわよ。」

「やったのか・・・結果は・・・聞くまでもないか?」

「うん、ぜーんぜんダメ。いったい何でできてるのかしら、あの扉。」


「そもそも、その遺跡ってなんなんだ?」

「んー、伝承では『ソラを往くフネ』っていわれてる。地面に埋まってるけどね・・・だいたい何で『フネがソラを往く』のよ・・・アタマおかしいんじゃないの?」

「まあまあ、そのへんで。」

「レイメイの話、理解できたか?」


 俺は「銀の匙」という宿屋のベットに腰かけて話を聞いている。

 ツインタイプの部屋で、俺はフレイと同室だ。


「あらましは分かった。リッカトーンでは一番難易度の低い遺跡にもぐりたい、というわけだな。」

「一番の目的は、アンタに神代の武具を持ってもらいたいからよ。そのへん分ってる?」

「で、ついでに神代文字の秘密が分かれば遺跡の最奥を目指そうと。」

「そ、それはそうよ。あたしたちは冒険者なんだから・・・」


「一番難易度の低い遺跡の神代文字さえ理解できないようだと、俺はどこかに売られてしまうのかな?」

「そ、そんなことないわよ?」

「そんなことありませんよ。」

「そんなことはないぞ。」


 3人とも目が泳いでいるぞ・・・冒険者なんかやめて、壺とかリトグラフを売る人になった方がいいんじゃないのか?


 だが、ここで放り出されるのもあまりうまい話ではない。都とやらの学者どもに、俺の現代知識を話したらどうなる?農業革命・エネルギー革命・軍事革命だ。どれをとっても歴史が変わる内容だ・・・


 これでは俺が豊かさを囁く悪魔になってしまう!冗談ではない、俺は世界を相手に喧嘩をしているだけで、悪魔になる気はない・・・世界を相手に喧嘩を売るのは悪魔ではないのか?・・・もちろん気づかなかったことにする。


 俺が害獣手配書を読んでいる間、彼らは明日、遺跡にもぐりる依頼をとってきていたらしい。もっとも遺跡の依頼は年中でていて、ランクも問われないらしい。

 下手な鉄砲も何とやら、か。どうやら外堀は完全に埋まっているようだ。


 一夜明け、宿の朝食を食べながら弁当を頼むニーたち。朝食はパンとシチューだ、美味かった。娘さんから弁当を受け取ると早速出発だ。店の名はこの娘が生まれたときに決めたらしい、お金に不自由しないように。


 めでたく遺跡に到着だ。山の岩肌が割れていて、そこから奥に入れるらしい。岩の裂け目を分け入って歩いていくと、足元の岩肌が金属っぽいなんかに変わった。


「もう、遺跡内部よ。」

「昨日も説明したとおり、この遺跡のトラップは全て分っているから後についてきてね。」


「守護者と闘うだけ、というわけだ。」

 神代の武具を入手するには、守護者の持つ武器をあまり傷つけてはならないということだ。そのため、守護者の強さで遺跡の難易度が変わる。


 壁の端を歩いたり時々ジャンプをしながら進んでいくと、ちょっとしたホールにでくわした。


「ここが守護者の間よ。」

「ここは1人でないと、守護者が現れないんです。」

「その間通路とホールは遮断される、やれるな?」


 ようするに俺はここで守護者相手に生か死かってわけだ。まあ、いいけどね。


「こんなところで、まさか負けないでよね?」

「ここは難易度低めの守護者ですからね?」

「まあなんだ、しっかりやれ。」


 なんて心温まるはげましの言葉だ、そこまで期待されているなら少し本気をだそうか?


 やがて俺と彼らの間に扉が下がってきて、通路は完全に分断された。すると、今まで壁だった部分が幅2メートルぐらいエレベーター状に開いて1人の騎士を吐き出した。

 そう、それは全身鎧の騎士だった。そいつが騎士剣片手に襲ってきた。殺気は無い・・・人ではない?なら手加減する道理はないな。

 

 ガッシャン!ガッシャン!ガッシャン!、ダダン!ダダン!ダダン!、ベコン!ベコン!ベコン!


「な、中でなにしてんのかしら?」

「守護者とハヤトさんしか、いないんですよね?」

「どうしたらあんな音がでるんだ?」


「あっ、もう扉がひらく!」

「そんな、まだ1ミニぐらいしか・・・」

「・・・。」


「おーい、終わったぞ?何だその目は?」


「守護者もボロボロだけど騎士剣もボロボロ、というか折れてるよね?」

「こんな短時間で決められるのなら、武具を傷つけない方法もあったのでは?」

「弓矢か何か持ってなかったか?」


 誰も無事に守護者を倒したことを褒めてくれない。

「武具が手に入るかどうかは結果だ・・・この後はどうすればいい?」 

 

「遺跡に訊け。」

ニーが哲学的なことをいう。


 すると鎧騎士を吐き出した廊下の空間から、引き出しの様なものがせりだしてきた。3人に促され覗き込んでみると、そこには


「進入房間?」


 中国語じゃねーか!ここまでみんな日本語で、いまさら中国語って。舐めてんの、ねぇ、舐めてんの?

 神代文字って中国語なの?しかしこの画面、返事しようにもモニターだけでマウスもキーボードもない。


「ねぇ、分る・・・ハヤト?」

「ハヤトさん、読めますか?」

「意味が分かるか?ハヤト。」


 うるさいな、言葉の意味が分かっても返事の仕方が分かんないんだよ!

 期待にこもった熱視線3人分を浴びながら、色々考えてみる。その中で一番可能性の高そうな方法を脳内検索してみる。順番に試してみるしかないか・・・最初はこれだ。


 俺はモニター画面に直接指を付けて・・・「是」・・・と書いた。


 すると、音もなく守護者の出てきた壁の奥が・・・横にスライドした。

 ビンゴ!


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