7-3.帰路。その3
「実際に確かめてみてどうだった?」
「・・・曲がり矢をあっさり躱された、少し驚き。」
「あんなんと、まともに戦えんわ。」
「手玉に取られたようで、少しムカつくわ。」
「うん、みんな本気じゃなかったからね。でもそれはあちらも同じことだからなあ。」
「・・・でも他のメンバーはホントに酔っぱらってた。」
「一流ランカーとは思えんわ。」
「そうは言っても彼らはBランクだ、そんなもんじゃないの?」
「それだけあの男、ハヤトを信頼しているのかもな。」
「・・・それは他の3人より、あいつ1人のほうが強い、と言うこと?」
「他の3人もあいつくらい強かったら驚きや。」
「あいつは1人だけ他と違うわ。そもそも冒険者に見えない・・・何かこう、別の・・・」
「俺もソレイユと同じ意見だ、多分あいつは冒険者じゃない。無手などとふざけたことを・・・料理番のつもりか?もっとも小太刀を使うそうだが。」
「・・・あれが料理番ならうちにも欲しい。」
「な~んかじゅんさいな奴やったな~。」
「ふふ、確かに。」
「まあ、「ハイネスの親友」であることは認めよう。それに直接我々とぶつかることもないだろう。」
「・・・リーダーだったら?」
「それは興味あるな。」
「初見ならまず躱せないんでは?」
「それは何とも言えないな。彼、コノハの矢を見ずに躱していたからな。」
「「「・・・」」」
「とりあえず彼等とは敵対しない方向で行こう。」
「「「了解!」」」
「まさか彼等、「しほうの宝」を狙ってはいないだろ?」
「「「鉢合わせしたら?」」」
「その時は冒険者の流儀で・・・」
★ ★ ★
「ごめんね、ハヤト。」
「すいませんねぇ、ハヤトさん。」
「すまん、ハヤト。」
「いいさ、すんだことだ。」
「でもあいつら、仕掛けてきたんでしょ?」
「何もなし、ってことはありませんよねぇ?」
「立ち会ったのか?」
「あいつらは俺と遊びたかったらしい。だが話し合ったら分かってくれたぞ。」
「話し合い?」
「ハヤトさんがぁ?」
「分かってくれた?」
「そんな意外そうな顔をするな。」
「以外そうじゃなくて・・・」
「以外なんですよぉ。」
「立ち会ったんだろ?」
「ほんのお遊びだ、リーダーともやりあってないしな。」
「「「それで?」」」
「レイメイはコノハとギリギリ互角の勝負をするだろう。ソレイユとミレイユは単独ならそれぞれフレイとニーは勝つだろう。だが、あの双子がペアでくると危ないな・・・俺の勘だがな・・・」
「ハヤトの勘なら、きっとそうなのね・・・ギリギリ互角かぁ、悔しいなぁ。」
「互角ならいいじゃありませんか、僕等なんて女のペアを相手に勝てないんですよ?侮るわけじゃありませんけど・・・」
「全くだ。」
「だがヨゴス村以前の実力だったら3人とも負けてる。あの死地をくぐってみんな地力がついたんだ。」
「「「・・・」」」
「それに彼らはAランカーだ、実力差があって当然だろ?仮にも『ハイネス』を名乗るチームだ。」
「そうね、そうだわ、こんなことでいじけてられないわ。」
「ですね、らしくありませんが少しやってみますか・・・そうでないと差が縮まりませんからねぇ。」
「そうだな。少し、やってみるか。」
★ ★ ★
「いいできだわ。まさか2日で形になるとはね・・・幾つ造れるの?」
「ハイネスの街の武器屋だからな・・・5日あれば100だ。」
「話にならないわ、矢一本造るのにどんだけよ?せめて300ね。」
「300!!そりゃあ無茶だ。」
「そこをなんとか!」
「・・・親父と弟に頼んでみる。それでも駄目な時は諦めてくれ。」
「それで駄目ならエムトへ送ってもらうわ。エムトのヤーンの神殿宛にね。」
「お、お前バカか?ヤーンの神殿に武器なんて送ったら・・・」
「大丈夫、秘密の呪文を知ってるから。それより1人で5日なら3人の5日で300出来る計算よね?」
「お、お前やっぱり馬鹿だな?この仕事には慣れやコツってもんがあるんだ、計算通りいくもんか!」
「5日に白金貨一枚、300に白金貨一枚。」
「なっ、どうしてそこまで拘る?送りでいいなら・・・」
「見栄と面子よ。」
「成程、どっちも金じゃ買えねえなぁ。女も大変だな、5日後に取りに来な。」
「ついでに仕立て屋を教えてくんない?男物の、上品でなくていい、丈夫な仕立てをするトコを。」
「ならマーサの店だ。表通りに青い看板が出てる。店は裏通りにある。」
「分かった、ありがと。」
「ならさっさと帰ってくれ、何しろ5日だからな。」
ようやく注文の多い客が帰って行った。
それにしても矢300だって?まずは100使って調子を見るとこだろう、信用されてるのか?
いずれにしろ1人で使うには多すぎだ。持ち運びにも困るだろう・・・
1人で戦でも始める気か?
★ ★ ★
「何だ、やっぱりやれば出来るんだねぇ。」
「おかげさまで、かかりきりの仕事になっちまったよ。」
「ちょっと仕上がりを確かめさせてもらうよぉ・・・」
・
・
・
「ありがとう、いい出来だ。特に接合部がいいねぇ。」
「アンタ・・・この武器初めてじゃないな?」
「前に棍のを使ってたよ、でも脆くて駄目さぁ。」
「それで遺跡武具を・・・思い切ったな。」
「周りにいるのが思い切りのいい人間ばかりでねぇ。」
「そいつは難儀なことで・・・な、何だよ?」
「ここまでの仕事が出来るんだ、もう一工夫お願いしてもいいよねぇ?」
「今度は何をさせる気だ、言っておくが料金は割増だからな?」
★ ★ ★
(レイメイの狼の目、フレイの絶対知覚、そして俺には・・・俺にも必ず異能がある、自分で分かる。)
ニーは剣を構え大岩の前に佇んでいた。
(どんな異能なのか、どうすればその力は発現してくれる?・・・いや、あせるな・・・)
こうしてニーと大岩とのにらめっこは7日間続いた。
★ ★ ★
ニーが帰ると、レイメイもフレイもハヤトも宿に戻っていた。
「悪い、待たせたか?」
「いえ、今戻ったトコよ。」
「僕も今着いたところですねぇ。」
「俺もだ。ハヤブサは必要物資を船に運んでいる、じきに戻るだろう。」
「・・・今日で7日経つ。明日出発でいいな?」 ニーが全員の顔を眺める。
「アタイは問題ないわ。」
「僕も問題ありませんねぇ。」
「俺も問題ない。」
「じゃー最後の夕食に行くか・・・ハヤブサを待つか?」
「そうだな・・・もう、戻るころなんだが・・・何かあったかな?」
3人が軽く緊張する。ハヤブサをどうこうできる人間が、そうそういるとは思えない。
「悪いが俺は市場を見てくる。みんなは先にメシを食っててくれ。」
と言ってる傍からシルバーリンクを経由してハヤブサから連絡が入った。
(マスター。現在青果市場におりますが、見知らぬ人間達にクラムを人質にとられました。最後の1樽だそうです。「ハイネスの親友」に会いたいと言っています。)
「どうやら「ハイネスの親友」に会いたがっている奴がいるらしい。・・・俺のクラムを・・・」
「そうなのか?」
「何で分かんの?」
「相変わらず、難儀なことですねぇ。」
ブックマークありがとうございます、励みになります。
次回の更新予定は10月24日となります。
この物語で楽しんで頂ければ幸いです。




