表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/96

1-8.リッカトーンの街

 ギルドのあるこの街はリッカトーンと云って、港町でもある。

 俺が街を見学したいとダダをこねたので、絶賛物見遊山中だ。街中を練り歩き、露店で買い食いをした。なるほど、焼き魚は美味かった。


 ギルドで冒険者セットを購入してもらった俺は、武器屋に連れていかれた。Bランクパーティーで唯一Bランカーである俺が、無手のままというのは恰好がつかないらしい・・・というか無手のままだと「料理番」、つまりパーティーの食事係兼荷物運びと勘違いされるそうだ。


 ふぅん、そういう役目もあるのか・・・などと考えているうちに武器屋に着いた。


 この世界の武器については俺も少なからず興味がある・・・中に入ると・・・節操のない武器屋だ、和洋中の見本市だ。騎士剣の横に日本刀や青竜刀まで並んでやがる。


 一通り店内を見たが、俺の探し物はなかった。そう、銃火器である。拳銃もライフルも小銃も、いや、火薬を用いる武器そのものがない。

 なかば予想していたこととはいえ、残念だ。使い方によってはレベル6以上とやりあえるのだが・・・仕方なく俺は自分用の得物を探し始めた。


 結局おれは小太刀を一振り手にいれ、腰に・・・後腰に差すことにして武器屋をあとにした。


「それだけなの?」

「やっぱり体術の邪魔になるんですか?」

「金がかからんのは結構なことだが、本当にいいのか?」


 一応俺の心配をしてくれているのだろう、礼の一つも云っておくか。


「ありがとう、だけどこれで十分だ・・・それより・・・砥ぎはいいのか?」


 そう、だれも得物を砥ごうとしないので少し気になっていた。


「ああ、僕たちの得物に砥ぎはいらないんだ。」

「砥ぎがいらない?刃物なのに?」


 使用した刃物には手入れが必要だろう?


「正確に云えば砥ぎがいらないのではなく、砥げないのさ。血油は落とすけどね。」

「どういうことだ?」

「遺跡から発見された武具は、みな砥ぎがいらない。砥げる砥石がないのさ。」


 さらっとすごいことをおっしゃる。何だその不思議金属、いやセラミックか?


「欠けたり、折れたりしないのか?」

「そんなことないよ、欠けも折れたりもするさ。ただ、欠けた部分を砥いでも変化がない。だからみんな砥がなくなったのさ・・・それでもそこらの鉄剣より、よほど軽くてよく切れるんだ。」

「発掘武具を持っているのは一流冒険者の条件だ、すぐにハヤトにも見つけてやる。」


 なるほど、やはり超硬合金かセラミックのようだ。

「みんなはどこでその武具を手に入れたんだ?」


「スンの遺跡よ。」

「スンの遺跡さ。」

「スンの遺跡だよ。」


 うん、久しぶりだねこのパターン。


「変なことを訊くけど君たちは・・・兄弟にはみえないが、どういう関係かな?」

「私たちはスンの街の幼馴染よ!」


 ちらっと視線がニーにとぶあたり、可愛いじゃないか残念女。


「あなた今、すごく失礼なこと考えなかった?」

「とんでもない、話の続きを聞かせてくれよ。」


「僕らは年齢も近くて、よく一緒に遊んだのさ。3人とも長男や長女でなくて・・・いつのまにか、それならやりたいことをやろうって話になって・・・」

「それで冒険者に?」

「極端な話、冒険者なんて名乗ってしまえばもう冒険者さ。」


 おぅ、いきなりぶっちゃけたなフレイ。


「さすがにそういうわけにもいかないから、1年間暮冒険者として暮せらせたら認めてやるって両親に・・・」


「暮せたのか?」


「とーぜんよ!」

「雑事系の仕事から初めて、簡単な採取をこなし・・・最後は街の遺跡にもぐり、神代の武具を手に入れたんだ。おかげで最短でランクCまでになった。本当にヤーンに感謝だね。」

「フレイがいうほど簡単ではなかったがな。特に神代の武具は、3つ目が入手できずに成人の儀を迎えてしまった。」


「だが、ついに手に入れて・・・3人とも冒険者になったのか?」

「そうよ!」

「街の外に行くのは商人でなければ冒険者くらいですからね。」

「自分たちは、まだ見ぬ何かを見たかったんだ。」


 なるほどね、こいつらのルーツが少しだけわかった気がする。世界最強を目指してひたすら死合ってるより、はるかにまともだ。


「そういうアンタはどうなのよ?」

「どう、とは?」

「何を目指して何をしてきたの?」

「それは僕も興味があるな。」

「自分もだ。」


 やっぱりそーなるよね、話の流れ的に・・・


「世界最強!」


「アンタ馬鹿なの、死ぬの?」

「さすがに、それは・・・」

「本気か?ハヤト。」


 うん、そーだよね普通。分ってたけど。もし訊かれたら1度はいってみたかったんだよ・・・そんな残念な目で見ないでくれ、お願いします。


 しかたなく俺は、一族の話をきかせた。ただし俺が親父と死合ったことと、その結果は秘密にしておいた。何でも話せばいいというものではない。


「はぁ、なにそれ?」

「随分と難儀な一族ですねぇ・・・」

「それ、いつ終わるんだ?というか終わりがあるのか?」


 ですよねー、平成の世の中ならまだしも神皇の世の中で・・・俺は何を成せばいいのだろうか?この世界で俺は何を目指すのか?武神ってヤツとは死合ってみたいが・・・それだけだ。


 この地で子をなし流派を継がせる?だめだ、想像できない。もしかして、この時代の俺ってただのダメな子じゃ・・・いや、俺はやればできる子なんだ。この世界では本気だすんだ。


 とりあえず、どこかの宿に落ち着きませんか?という俺の提案は生暖かい目に囲まれて、了承された。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ