6-9.邂逅(かいこう)
話は2時間前に遡る。
3人の冒険者達は自らのレベルをUPするために依頼を受けに出かけてしまった。
ハヤトも同行を申し出たのだが銀レベルがいたのでは意味が無いと断られたのだ。
結果としてハヤブサの中でまったりとすることとなった。
予定になかった空き時間であるためハヤトは最近続けているレクチャーを受けることにした。
それはハヤトの一般常識の強化である。
3人組と一緒の時はいいが1人だと何も分からないことに気付いたからだ。
いや、気付いてはいたのだ。
ただ、言葉が通じてしまうので何とかやってこれたのだ。
ハヤブサはアマツカサから光学迷彩装備のドローンを複数飛行させ、
諸国の情報を収集させていた。
主に会話の傍受であるがハヤブサがとりまとめ、ハヤトに伝えている。
また「神の目」を用いて地理の把握に努めていた最中だ。
そんな中、アラートが鳴り響いた。
『伝達事項、索敵目標発見。確度86%です。』
『注意事項、索敵目標の傍において小規模な戦闘が展開されています。およそ2,000対150。』
『注意事項、索敵目標の北側およそ2㎞の地点に武装集団がおよそ2,000。』
「どういうことだ、リクオが戦争してるのか?画像、見れないか?」
「メインスクリーンに映像写ります。」
「リクオをマーキングしてくれ。」
「戦闘地域からは離れているようです。周りに人影が多いことからも山中に避難していると思われます。」
「この小さな城・・・確かサトの国だったな。こちらにリクオが与しているのか?」
「現時点では不明。このまま籠城戦になれば、おそらく勝ち目はないと考えられます。」
「この北側にいる2,000の集団がどう動くかだな。」
「サト側に鉄砲はあまりないようですが、これは完全に鉄砲戦ですね。」
「ああ、シズの国での苦労は何だったんだ?どいつもこいつも、みーんな鉄砲を持ってやがる。」
「ヤーンの巫女が知らなかったとは思えません。シズが特に警戒すべき何かだったのかもしれません。」
「そうだな、それに今考えるべきはこの戦闘だ。お、北側の集団が参戦してきたぞ。」
「彼らは帝国の軍人です。軍旗から察するに聖帝十字軍のようです。」
「聖帝十字軍?このあいだレクチャーされた奴か?こんな田舎の戦闘に出てくる奴らなのか?」
「いえ、本来彼らはこんな戦闘には関わりません。きっと何か理由があるのでしょう。」
「それに対して・・・軍旗が無いな・・・隠してるのか?」
「明らかにどこかの国家に所属する部隊と思われますが、確認できません。」
「確認の必要はなさそうだ。単なる野盗として成敗されるんじゃないかな?」
「火力に圧倒的な差がありますね。片や500メトルが限界射程、片や500メトルは有効射程のようです。」
「・・・(500メトルは有効射程?そんな馬鹿な。こいつらまさかレイメイのような異能を?)」
「さすが帝都の切り札!あ、降伏旗を無視してます・・・噂通り異教徒相手にはえげつないようですね。」
「・・・(聖帝十字軍とは異能者の集団なのか?だとしたら2,000と言えど1個大隊に匹敵するな。)」
「城に侵攻していた連中が慌てて逃げていきます、無理もありませんが。」
「これを見越しての籠城か、到着が1時間ずれていたら・・・いや、それでも奴らは滅んだなぁ。」
「索敵対象が他の人間と一緒に山を下りて来るようです。」
「城からも人が出てきたな、これは聖帝十字軍がセトの国を水際で守り抜いたということか。」
「そしてまた、「光の神」教団の信仰国が一つ増えたわけですね。」
「帝都でも最大規模を誇る宗教団体だったか・・・唯一、ヤーン神教を上回る・・・」
「ヤーンの信徒は辺境に多く、統計がとれないのです。現実には5分5分と言ったところでしょうか。」
「そろそろアマツカサで飛ぶぞ、彼らが一段落したところで顔をだす。いつ以来の再会になるやら・・・」
「「白き星の者」、「黒き星の者」と対面ですか。」
「俺に特に含むものはないぞ?」
「マスターのお好きになさいませ。」
俺達はアマツカサに乗り、リクオの傍に近づいた。
上空15m、光学迷彩状態のハッチを開けて飛び降りる。
そしてようやく先の言葉に戻るわけである。
★ ★ ★
「久しぶりだなリクオ、元気そうで何よりだ。」
「そんなことはどうでもいい、何故ここに現われた?我らの話、どこまで聞いた?」
「ここに来たのはお前がいるからだ。それにお前らの話とやらには興味も関心もない、気にするな。」
「それを信じろと・・・?」
「信じる信じないはそちらの勝手だ、好きにしろ。俺はあの日の続きを闘りに来た。」
「相変わらずだなお前は・・・残念ながら今の俺にその気はない。」
「なに!?」
「お前と死合う気はないと言っている。アジア最強の称号、欲しくば貴様にくれてやる。」
「それが李家八極拳正当後継者か?」
「そんな肩書きよりも、もっと大切なものができた。それに比べれば些細なことだ。」
「ではあの戦いの勝者は俺でいいのか?李家八極拳を下したと吹聴するぞ?」
「勝手にするがいい。この世界でそれがどんな意味を持つ。だいたい誰に吹聴すると言うのだ?」
「どうやら本気のようだな・・・(カミーユよ、古の決着はついたようだぞ。)」
「ん?」
「ついでに聞くが、火薬や鉄砲に関する知識をこの国に伝えたのはお前か?」
「伝えて?・・・いや、教えて欲しいと頼まれた。先の戦のようになるのはゴメンだとな。」
「あれは人の命を軽くするぞ?」
「同じ事をこの国の王と王女に言った。事ここに至れば最早必然なのかもしれん、この勢いは止まらん。」
「・・・(古き国の王が悪魔の囁きにのった。俺はどうすればいい?何の判断を誤るなと言うんだ?)」
「何をブツブツ言っている?」
「俺はこの世界から鉄砲の技術を消し去るように頼まれた。」
「無理だな。一度確立した技術は燎原の火の如く広まるだろう、例え帝国の技術であったとしても。」
「・・・そうだろうな。(それを消し去るには『火』による大規模消去しかあるまいよ。)」
「そろそろ後ろにいる美人を紹介してくれないか?」
「あ。ああ、彼女はハヤブサと言って俺のパートナーだ。」
「ハヤブサです。マスターとはエンゲージしている。」
「「マスター」?「エンゲージ」?どういう意味だ。瑞樹流の後継者の話か?」
「そんな話は一切ない。世間常識が無いもんでな、あまり気にしないでくれ。」
「後継者、なるほど。やはり既成事実が一番。」
「いずれにしろお前が背後を任せる女だ、素人ではあるまい。」
「表の技なら俺より強いかもしれん。今、裏の技を習得中だ。」
「マスターは私が守る。」
「ところで彼女の頭のネコ耳は何だ?お前の趣味なのか?無理やり付けさせているのか?」
香港マフィアが何でネコ耳なんて知ってんだよ!
しかも俺が強制しているみたいに・・・
「これはハヤブサのアクセサリー。付けるとマスターがとても喜ぶ。」
「ご、誤解を招くようなことを言うな!」
「ほう・・・」
リクオの俺を見る目が3℃ぐらい下がったようだ。
いかん、このままではただの痛い子だ!
そこに丁度別の女性が現われてリクオに話しかけた。
「王と王女様より、お茶会に参加するよう言われて参りました・・・その方達は?」
「彼らは俺の元の・・・仙境の友人だ。気にするな、シズカ。」
「仙境か・・・」
「言い得て妙。」
「では5人連れで参りましょう。リクオ様の友人なれば滅多なことはありますまい。」
「ここの王と王女に会ってみてくれ。そうすれば俺が鉄砲の技術を伝えたくなる気持ちも分かるだろう。」
「気持ちが理解できちまうと、余計に辛いんだがな・・・」
「マスター、情報は多いほど有効。」
★ ★ ★
「これはこれはリクオ殿の友人と伺いましたが・・・やはり仙境の?」
「然り。」
「この度は偶然この地へ?」
「この地は大変気が淀んでいた。淀みに惹かれてやってくれば戦闘の最中であった。どちらに義があるか分からぬ故、介入せずにいた。」
「事情が分かっていれば当方へご助力頂けたと?」
「然り。」
「失礼ながら御身お1人とお連れのご婦人お1人で如何様なことがおできになったと?」
「我ら2人、この地では竜殺しを名乗らせてもらっている。」
「竜殺し!あのシズの国の・・・」
「然り。」
「し、しかし吟遊詩人の唄う竜殺しは見上げるほどの大男と・・・」
「父王殿、もうお止めなされ。このお2人は間違いなく竜殺しであります、先程から私の膝の震えが止まりません。」
「隣からこの部屋を狙っている者がいるので、軽く威嚇をな・・・すまんな。」
「父王殿、それは誠で?」
「・・・」
ハヤトの殺気が鬼気に変わった。リクオは露骨に迷惑そうな顔をした。
物理的に部屋の温度が下がった。
平気な顔をしているのはハヤトにリクオ、ハヤブサくらいの者である。
王と王女、それにシズカは震えたままであったが、
隣部屋の弓矢部隊は揃って失神していた。
「わ、分かった認める!お主達は間違いなく竜殺しである。」
「別に認めてもらわずとも構わんのだがな。」
「マスター、少し大人げない。」
後書きを忘れておりました。
お詫びと共に追加いたします。
いつも読んでいらしゃる方、ありがとうございます。
次回の更新は3月20日の予定です。
このお話も楽しんで頂ければ幸いです。




