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6-4.気の短い男

「ふむ、これがカーンの「轟音の矢」であるか?」

「ははっ!」


「射程は如何ほどであるか?」

「飛ばすだけであれば500メトル、人を殺めようとするなら300メトル程であります。」


「的中率は?」

「条件さえそろえば50メトルでも5発に4発は的中かと。」


「条件とは?」

「ははっ、先ずは火薬の質が一定であること。次に、その日に合った玉薬たまぐすりの調合ができることです。」


「火薬の質は分かるが、その日に合った玉薬たまぐすりの調合とは何か?」

「ははっ、温度、湿度から考えた硝石、硫黄、木炭という3種の薬の調合加減の事であります。」


「成程、そういうことであるか・・・なかなか簡単にはいかぬか。して威力の程は?」

「的中率の範囲であれば、騎士の軽鎧などは貫通いたします。が、プレートアーマーになりますと・・・」


「よい。プレートアーマーを着ける者が前線に出てこよう筈がないわ!」

「確かに・・・」


「しかし、ここまではカーンめもやってのけたこと。ここからの改良こそ楽しみにしておるぞ。」

「ははっ。」


「錬金術師の塔への予算、倍をとらせる。失望させてくれるなよ?」

「ははっ!」


 声の主が去ってからタップリ3分は経ったであろうか、男達のため息が漏れた。


「いつ立ち会っても寿命が縮むわ・・・気の短いお方故。」

「お主など、本当に立ち会っているだけではないか。相手をしている儂のことを考えてほしいものじゃ!」

「そこはそれ、国で唯一の特級錬金術師様であろう。」


「ふん。今回はともかく、次回に不都合があれば儂はおろかお主たちにも責が及ぶは必定じゃ。」

「それは確かに。何か工夫をせねばな。」

「思うに、こいつは武器として欠点ばかりであろう。何しろ雨が降ったら使えんのだから。」


「成程、長所ではなく欠点を潰していこうと言うわけですな。」

「いかにも。とりあえずあるだけの欠点をあげつらい、無くせる欠点を探すのが早道であろう。」

「人ごとだと思いおって。実際に作業する者の身になってほしいものじゃ。」


「しかし、現時点でこれほどの量の火薬と「轟音の矢」。中原でも間違いなく最大規模であろう。」

「それは確かに・・・その上に改良を御命じなさる。儂の胃に穴が開きそうじゃ。」

「陛下は気が短い。その先に、いったい何を見据えているのやら・・・」


「ところで貴公も聞いておろう?シズの国の話なのじゃが・・・」

「助太刀に入ったアの国の部隊を、我が弓鬼が火薬1樽で木端微塵にした話であろう?」

「その話、続きがあってな。本当なら死んでいた者達を竜殺ドラゴンスレイヤーしが助けたと。」


「何を馬鹿な、そんなお伽噺を。アの国1番隊など40名そこらしか生き残っておらんそうじゃないか。」

「伝説の竜殺ドラゴンスレイヤーしがでてきたというなら、もっとなんとかなったであろうよ。」

「考え過ぎなら良いのだが、火薬が竜殺ドラゴンスレイヤーしを呼ぶような気がしてな・・・」


 男たちの密談は、この後しばらくの間続いたのであった。


          ★            ★             ★  

 

「・・・以上3薬をもって「かやく」となします。」

「それはお主が単独で工夫したものなのか、それとも誰かの助力を仰いだものなのか?」


「全て己の工夫によるものでございます。」

「居るところには居るものだな、天才というやつは。お前は間違いなく天才錬金術士だ。だが、硝石は2度は湯に溶かして精製しろ。混合は木炭、硫黄、硝石で1:2:7を基準とし、晴れ、雨、曇りの配分を定めよ。さすれば、これらは立派な火薬となるだろう。」


「ははっ!かやく・・・火薬でございますか。さすれば、それがわが国でも出来るのですね?」

「出来る。俺がいなくともお前なら10年以内で完成させていただろう。俺がその10年を消してやる。」 


「リクオ殿のその卓越した知識は、如何なるお人に師事されたのでしょうか?」

「私の国には仙人になる方法があってな、これもそのうちの一つで仙術と言う。」


「せ、仙界の噂は耳にしたことがありまする。まさか本当の事とは・・・俗界に秘密を漏らしても?」

「だから言っておろう、お前はいずれ自分で仙術を解明したと。俺は時間を縮めるだけだ。それに俺達はここの王女と既に約定を交わしている。それをたがえれば俺がこの手で始末をつけるさ。」


「ロ、ローズ王女の事であれば信頼に値する人物だと思えますが!」

「そうだろう、俺達もそう思ったのさ。だから仙界の秘法の一端を明かすのさ・・・内緒だぜぇ?」


「ははっー!!」


 その時彼らの頭上からギシギシと音が鳴り、石の扉が開いた。

そのには2人の女性が立っていた。


「リクオ殿、当代きっての天才錬金術師アーサーは御眼鏡にかないましたでしょうか?」

「掛け値なしの天才だ、俺が更に時を縮めてやる。この国に鉄砲が行き渡るのは1年後となるだろう。」


「なんと!たったの1年でありますか!それは誠でありましょうな?」

「この俺を疑うかよ。だが、最低の1年間だ。火薬も鉄砲も幾らでも良いものが出来るようになるぞ。」


「つまり、最低限の鉄砲が国中になんとか行き渡るのに1年かかる。と申されるわけですな!」

「そういうことだ・・・国王ではないが・・・惜しい・・・」


「何か仰りましたかな?」

「いや・・・シズカはどうだ?きちんと面倒を見てもらえているか?」

「は、はい。それがローズ王女直々に私の面倒を・・・私、困ってしまいます。」


年齢としが近いせいか話が合ってしまいましてな・・・」

「そのせいで私まで王女様扱いされてしまいます。私、ばちが当たりそうで恐いんです。」

「シズカ程度でばちが当たるなら、この世界にばちの当たらぬ者はおらぬだろう。案ずるな・・・」


「それでですな、これまでの経過報告を兼ねて国王と昼食会などお誘いに参上した次第です。」

「俺は構わぬよ、どうせいつか説明せねばならぬことだ。シズカもアーサーも一緒でよいな?」

「「えぇっ!」」


「もちろんですとも、と言うより元からそのつもりです。この4人の結束は強固なものにしなければ!」

「で、でしたら私、ふ、服を着替えて・・・」

「お前、俺と一緒でこれが錬金術師の服だと言ってたじゃねえか。かまわねーよ、これで。」


「し、師匠が良くても私は・・・」

「あ?誰が師匠だ!黒社会このせかいで弟子になるということはなあ、そんな簡単なことじゃ・・・」

「何でもいいので早く上がってきて下さい。」


          ★            ★             ★  

 

「2万丁かね?」

「王都は12万都市だからね、そんなものさ。」

「それでも間違いなく中原一なのだろう?」

「一体どこと較べようと言うのかね?」


「そろそろ気の短い王様が暴れ出すらしいよ?」

「どうして差し出されたパイで満足できないのだろうね?」

「隣の芝生というやつかい?」

「で、かの王さまはどこを狙っているのかね?」


「それがなんとサトらしい。」

「あんなところ何もないじゃないか?」

「一体何を考えている?」

「鉱山でもあったかな?」


「うーん、それにしても神の目を失ったのは痛いね。」

「それだけではない、四大精霊にも家出されたままだねぇ。」

「しかし、同時期にとなると機械の変調とかプログラムのバグではないのかね?」

「実際、天変地異もおこってないしな。本格使用の形跡はない。」


「本格的に使用されたら大変だよ、リセットボタンはまだ必要ない。」

「その通り、我らが十字軍を遠征させればよい。」

「我らの「光の神」教団か。だが政治とは引き離してあるよ?」

「弱きを助け強きを挫く、には理屈は要らんだろう。」


「理屈は議会に必要なのさ。」

「結局金なんだろう、あいつらは?」

「その代り金を払っているうちは信用できる。」

「何万年たてっも変わらん理屈だな。1万年前にも聞いたような内容だ。」


「奇遇だな、俺は1万年前にも言ったセリフだと思っていたよ。」

「では事前にサトから依頼があり、我々がたまたま手を貸す。謝礼は後日、分割でだ。」

「落としどころとしてはそんなものかな。事前通告するんだろう?」

「それとサトから変なアドリブはないだろうね。」


「あそこはどんなに優秀な人材がいても1年は必要なとこさ。」

「短気な王様はどうするんだい?」

「本気で1国を落とす気であるなら火薬と鉄砲は容認できない。大きくなる前に叩いておくべきだね。」

「そうだな、どこまで進歩できるか見てみたくはあったが潮時かね。」


「叩くなら圧倒的戦力で徹底的にだよ。」

「うむ。異論はないな。」

「サトが叩かれた後にかい?それだけの兵力をどうやって移動させるんだ?船か?」

「縦帆船の技術は公開されてもいいと思うが?」


「実際、小さな船など既に実用例もあるようだしね。」

「では今回我々の兵団が乗る船は縦帆船だ。至急造らせよう。」

「大まかなところでは以上かね?」

「『土』の妖精は、堕ちたらしいよ。」


「「「!」」」

遅まきながら、明けましておめでとうございます。

本年も引き続きよろしくお願いいたします。

次回更新日は1月17日(日)の予定です。

このお話が気に入ってもらえれば幸いです。

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