6-2.過去読みの巫女
「何でスーなんだ?」
「フォウの大陸語読みよ、まったくヤーン教団て安直なんだから。」
「フォウ=ターナーって、アングロサクソンじゃねーか・・・」
「ああ、そうそう。良く知ってるわね。死んだじーちゃんが言ってたよ、髪も瞳も気にすんなって。」
成程、見事な金髪碧眼である。
「まったく気にならないぜ。聖フォウ巫女様・・・ここではスー巫女様か?」
「どっちでもいいよ。アンタ、私と気が合いそう。ってことはカミーユと話が合わないでしょ?」
随分と明け透けな聖女様だ。案の定カミーユの顔が般若のように・・・
「聖スーよ、ここは卑しくもヤーンに仕えし者の集う場所。そろそろ本題を・・・」
「あー、はい、分かってます、分かってます。で、君は何が知りたいのかな?」
「俺が何故『白き星の子』で『運命の子』であるのか、その理由だ。」
スーは俺の左手を自分の額に当てて何やら呟きだした。
それがだんだん早くなる・・・
「君が『白き星の子』である理由。それは君が丁度に位置しているから。冷酷非情で体術に優れ、一定以上の科学知識を習得している事。それは『黒き星の子』も同じ。2人は同じカードの裏表。そして世界の希望・・・過去に君達より優れた術者は恐らくいた。だが、時代が求める科学知識が足らなかった。あなたは自分の科学知識のせいで何度も助かっているはず。といって、本人が無力でもダメ。そのバランスが世界レベルでとれた男。」
「『運命の子』は?」
「それは全くの偶然みたいね。たま~にあるのよね、そーゆーこと。」
「・・・」
「聞きたいことはそれだけかい?」
「何故俺が白で、リクオが黒なんだ?」
「それは周りにいる人達の問題。これは良い、悪いの問題ではないわ。」
「そう・・・か。」
周りにいる人達に流されていく、と言うことか。
リクオらしくはないな。リクオにとって重要人物でもいるのか?
まあ、人は影響し影響され合うものだからな。
「で、一番肝心なところなんだが・・・誰、なんだ?」
「世界の意思よ。」
「えっ!?」
「誰が君とリクオ君をこっちに呼んだかを知りたいのでしょう?」
「世界の・・・」
「世界の生命と言ってもいいわね。この世界がこれからも存続してくれと、世界の全生命が願ったのよ。」
「世界の生命が俺達を選び、こちらの世界に呼んだと?」
「君の後ろで怖い顔をしている巫女ならば、「それこそがヤーンの意思」とでも言ったでしょうね。」
「俺達が来なければこの世界は滅びるのか?」
「来なければ滅びるでしょう。だからと言って、来たから助かるというものでもないわ。」
「これからの働き次第と言うことか?今回は暇を出されたようなんだが・・・」
「世界の意思とはこの星に生きる全ての生命。生命は意思であり力であり、ただ生きることを望む。」
「今回の神託が無いというのは、生き延びるための手段が1つではないということか?」
「勘のいい子・・・さすが世界に選ばれし者。君の後ろの巫女は誰も傷つかない方法をいつも模索して、それが見つからないと言っては自分が傷ついて泣くの。誰も傷つかずにすむ方法なんてあるわけないのに。代わりに少しでも痛みの小さな方法を探すの。だから神託が無くとも彼女を責めないであげて・・・」
「彼女を責めるなんて・・・ただ俺自身が歯がゆいだけだ、俺がここにいる意味を知ったから。」
「私たちヤーンに関わる者達も『白い星』だの『黒い星』だの『運命の子』だのと、パニック状態だった。私達にはそれが真実と分かっても、他の者には分からない。そして政治的な力も持っていない。本当に無力だった。そんな中でこちらに来て間もない君に会えたことは・・・本当に僥倖だった。」
「キングスレイ伯爵?」
「そう、そこに君がいることが分かったから。しかも一瞬毎に未来が生と死と入れ替わっている、とても危うい状態だった。だからあの子は自ら飛び込んでいった。あそこであなたが死ぬことは、この世界の終わりを意味したから。自らを盾にして『白き星の子』とその仲間を救った。」
「知るべきことは知ってしまった。俺はどう生きればいいんだ?ただ神託に従うのか?」
「前に聞いているはずよ、『運命の子』には抗えない。あなたはあなたの好きなように生きればいい。」
「だが俺が死んでしまってはダメなんだろう?」
「当たり前でしょ!アンタどんだけダメダメな生き方したいのよ!」
「俺は世界最強を目指してるんだが・・・」
「・・・そう言えばそうだったわね。」
「・・・」
「・・・」
「とりあえずあの子の神託を全部クリアするまで、それはちょっとお休みしましょう。」
「『白き星の子』がこの世の平穏を守り、『黒き星の子』は悪魔の囁きを繰り返す。それから、すべてはヤーンの意思、ヤーンのもとに紡がれ綾なすでしょう。その時、古の決着がつき古き国の王が悪魔の囁きにのるでしょう・・・ハヤトよ、どうかその時が来ても判断を誤らないで。・・・か。」
「偉いわ、ちゃんと覚えてるのね?」
「この世は変わる。安穏から混乱へ、秩序から無秩序へ、平和から争いへ・・・そなたが運命の糸車を回すのだ。・・・ってのもあったな。まあ、これは俺がどうこうという話ではなさそうだが。」
「それは『運命の子』としての心得ね。『運命の子』の1歩は、ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきなのよ。」
「俺がテキサスで竜巻を引き起こす、というわけか?」
「分かってるならいいの。決して「俺」に無関係な話ではないわ。」
「最初からアンタ達2人に説明されていれば、俺はこんなに悩まずにすんだんじゃないのか?」
「私もそう思わないでもなかったけど・・・事が事だったから、慎重にアンタの性格を見定めていたの。」
「成程・・・間違えました、世界は滅びました、では済まんからな。」
「そーいうこと。でも今のアンタ、すっごくカミーユに信頼されてるわ。あの娘があれだけ信頼を寄せるなんてどんな魔法を使ったのかしら、誇っていいわよ。」
「それだけは素直に同意するよ、ありがとう。」
「こんなところかしら?」
「そういえば、4人の火星の王について分からないのか?」
「手がかりが何もなくては私の能力は発動しないわ。本人の身に付けていた物とか、何か・・・」
「そうか・・・残念だ。」
4人の火星の王か・・・想像はできる。
それが想像の通りだとしても、どうすることもできん。
これもヤーンが綾なしていると言うのかカミーユよ。
俺はカミーユの顔を見た。
カミーユは少し困ったような顔をしながらヤーンの聖句を唱えた。
それは会談終了の合図だった。
その日から俺は3人の仲間たちと、冒険者の暮らしに戻っていくことになる。
そして事態は確実に核心へ近づいて行く。
★ ★ ★
「俺はコソ泥の後を追いかけていたつもりだったんだがな・・・ここは王都の城か?」
国の中の国、都の中の都、それが帝国の王都である。王都の人口だけで軽く10万人を越える。
「ネズミが・・・とうとうここまでやって来たか。とりあえず誉めてやろう。だが、それもここまでだ。」
「すまんな、古の約束を果たすまで死んでやるわけにはいかん。」
「10対1だが卑怯とは言うまいな?」
「ああ、勝った奴が正しいのさ!」
瞬間、ツバイから無数の針が前後左右に飛んだ。
千本である。しかも今回は即死毒が塗ってある。
「おのれー!」
裂ぱくの気合で斬り付けるが、ツバイは軽く受け流し千本を投げつける。
そんなやりとりを交わしているうちに残りは3人になってしまった。
「参よ、こいつ思ったよりやる。俺と伍でこいつを抑え込む。その間にお前は引いて情報を伝えよ!」
「させるかよ!」
四と伍がツバイを取り押さえようとした瞬間、
コマ落としのフィルムのようにツバイの姿が消えて参が斬り殺された。
「なんと!」
「何をした!」
「とっておきだよ、卑怯とは言うまいね?」
最後に立っていたのはツバイ1人である。
彼は己の千本を全て回収する気でいるのだ。
自分の情報は徹底して相手に渡さない。
そして相手の武器、ついでに現金を回収しておく。
彼は近代近接戦のプロであった。
★ ★ ★
さっきまで元気に食べ続けてきたのだ。
いいかげん、買い食いも限界だろう・・・
そう思ってシズカを見やる。
シズカは二股に道が分かれた大石のところに1人立っている。
やがてこめかみをおさえて蹲ると一言呟いた。
「私は此処を知っている・・・」
それは遠い遠い記憶。忌まわしく、自分の中から消してしまった記憶。
それが今甦る・・・
「リクオ様、ここは、この場所は私の生まれた場所でございます。」
「何だと、お前はシズの国の生まれではなかったのか?」
「はい。私もそう思っておりましたが実はここ、サトの生まれでございます。」
「・・・サト・・・何故記憶が戻った?」
Wワークを考えています。が、執筆時間が削られてしまいますね・・・
次回更新日は来週日曜日(1月3日)です。
このお話で喜んで頂けたら幸いです。




