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5-10.魔術師の島

 こうしてリクオとツバイの何とも奇妙な共同戦線は結ばれた。


「お前が仇を討つまで、俺がお前を死なせん。だから俺と存分に死合え。」

「お前も変わった男だな・・・」


「お前ぐらい強いやつとらねばハヤトに負ける。現に俺は負けかけた。」

「そいつに勝つために俺とろうと言うわけか?」


「そうだ。」

「俺に負けるとは考えないのか?」


「勝負だからな、そういう事もあるだろう。その時シズカは国元に帰る。」

「・・・」


「心配するな、お前がられそうになったら加勢してやる。」

「大きなお世話だ。」


「相手は4人なんだろう?それにカーンが造っていたのは離れた相手を殺す武器だ。」

「銃の事だろう。」


「鉄砲と呼んでいたが。」

「同じ物だ。」


「そうか、あれを知っているか。あれを大勢に持たれると厄介だぞ。」

「・・・」


 ツバイは千本を使う。勿論毒が塗ってある。これはもともと個対多、あるいは対銃撃戦を考えての事だ。音もなく忍び寄り、音もなく殺す。瞬殺無音が身上だ。


(この時代の銃は性能が悪いようだし、いけるだろう。このリクオのことはおいおい考えよう。女連れだ、いざとなれば撒けばいい。)


「アの国でも土塊集めをやっているだろ、それを探す。」


 2~3軒農家を当たったらすぐに知れた。

 隣村にそんな連中が来ているそうで、

 この村はそいつ等の来ることを待っているようだ。

 ならば一緒に待たせてもらおう。

 はたして2時間もしないうちに土塊集めがやって来た。


「おーい、だれかおらんかね。」

「へーい、なんだね。」


「お前さんのとこの便所の床土と、養鶏所の壁土を新しい土に変えてやる。しかも赤5を支払うぞ?」

「あれまあ、噂はホントかい。よろしく頼むよ。」


「おー、まかしとけ。でもそんな噂になっとるんか?」

「いや、なんか買取りするんは1つじゃな無くて2つところでやっとると。そこで取り合いさ。」


「それで結局どうなったと?」

「うん、最初に来たとこが白の5支払って持ってったと。そんな価値があるんね?」


「いや、実は儂も知らんのじゃ。土塊集めりゃ金くれると言われてな。」

「はー。いったい何に使うのやら。」


 この集落一体の土塊が集まるころ、陽が落ちてきた。

 今日のところは引き上げるだろう。

 どこに戻るのか馬車の後をつけさせてもらう。



 馬車とリクオ達の間に2人の男が忽然と現れた。

 リクオとツバイは軽く焦った。油断はしていない。


「俺達は、アンタ達のような男を始末するのが仕事なんだ。今ならまだ間に合うぜ?」

「間に合う、とは?」


「回れ右して家に帰るんだ。そして今日見たことを忘れるだけでいい。」

「回れ右すると、何かとんできそうだなぁ。」


 ツバイはもう1人の男の前に立った。


「俺の相棒は忙しそうだから、アンタの話は俺が聞いてやるよ。」

「小賢しい・・・」


 リクオは懐から苦無をだすと真正面からなげうった。

 と同時に距離を詰める。ハヤトの飛天に似た技だ。

 距離を詰めたところで相手から棒手裏剣が5本飛んできた。

 これをいつの間にか右手で持った苦無で全て叩き落とした。


 手裏剣を打つにもタイムラグがある。

 そのタイムラグの順に叩き落としたのである。

 その隙に相手は剣を抜いている。

 そこへ懐から取り出した卵を投げつけた。

 反射的に男が斬りつけると、それは目つぶしの塊であった。

 胡椒、灰、石灰、唐辛子・・・たまったものではあるまい。

 男が何か言おうとした時、彼の左胸には深々と苦無が刺さっていた。

 もちろん苦無には毒がタップリ塗ってある。


 ツバイの方を見てみると、

 彼の持っているショートソードが相手の喉を掻き切ったところであった。

 後は3人でゆっくり馬車を追いかけるだけだ。


 この2人が戻らなくとも騒ぎにはならないらしい。

 やがて馬車は港まで行き、1つの大きな船の前に止まった。

 荷を下ろしているようだ。

 荷下ろしが終わると馬車はそのまま行ってしまった。


 さて、手詰まりだ。船の行先を聞いても教えてはくれまい。

 ツバイはすました顔をしている。その理由は夜になってから知れた。

 ツバイは1人で平気な顔して船に潜り込んだのだ。

 何をやっているかは分からぬが、そうそうヘマも踏むまい。

 やがて戻ってくるとこちらに手を振って陽気に笑いかけた。


「いやあ、気のいい船乗りがいてな。魔術師の島へ行くんだと教えてくれたぞ。」

「その、気のいい船乗りってのは船尾の海で下を向いて泳いでる奴のことか?」


「夜に泳ぐのが趣味なんだと。だが魔術師の島が分からん。」

「そいつは海図を見なくちゃ分からんだろうな。」


「アンタ、地図で国の形を見て何処か分かるか?」

「そういうアンタは?」


「・・・」

「・・・」


 ここまでずっと黙っていたシズカが初めて口を開いた。


「中原の国ならば全部わかりますが、辺境の国となりますと少し怪しくなります。」


「さすがだ、主より役に立つとは。」

「さすがは俺の連れだ。」


「・・・」

「・・・」


「海図を盗む?」

「此の娘を連れて侵入するより現実的だろうが。」


「だが盗むとなると、怪しい者が狙っていると吹聴するようなものだぞ。」

「あの2人が船に戻らないんだ、とっくに警戒されてる。」


「それもそうか・・・」

「俺なら偽の海図ぐらい置いとくね。」


「・・・」

「・・・」


「お前、ホントに曲がった考えをするな!」

「とんでもない、一般論だろ。それが証拠に1人殺られているのに誰も騒ぎださねえ。」


「どうすんだよ?」

「今考えてんだよ。」


「今日のところは・・・」

「止めといたほうがいいな。」


「魔術師の島を誰かが知ってるかもしれねえ。」

「こいつは結構大がかりだ。もしかするといきなり当たりを引いたかもしれねえ。」


 もう宿屋が開いている時間ではなかったので、

 そこらで野宿ということになった。

 シズカはリクオについて行くうちにすっかりそういう生活に慣れてしまった。

 ツバイが不憫がっている。


「こんな男のもとに就かされたためとはいえ、何と不憫な。」

「おい、勝手に不憫がるんじゃねえ。俺は1人で出てくと言ったのにこいつは無理についてきたんだ。」


「夜も更けたし、そういうことにしておこう。」

「そういうことも何も、全部ホントなんだよ。」

「リクオ様、おやすみなさい。」


「・・・」

「・・・」


「明日からは魔術師の島をさがすぞ。」

「それだがよ・・・どーも気に入らねえ。訊かれたらそう答えるように言われてるんじゃねーのか?」


「魔術師の島など無いということか?」

「それならまだいい。魔術師の島をさがす奴らは殺せ、なんて言われてるのかもな。」


「・・・」

「気のいい船乗りは、やけに簡単に魔術師の島のことを話さなかったか?」


「・・・」

「杞憂ならいいが、俺はこうして生き延びてきたんでな。」


「少し見直したぞ。考える頭はあるようだな。」

「少しは余計だ。シズカの命に関わるからな。」


「普通に生きれば、普通の幸せにを手にできるだろうに・・・」

「復讐などやめて自分のために生きれば良いものを。死者との約束は破れんか?」


「何を知っている?」

「何も。ただアンタみたいな人間が復讐をするのは、自分のためじゃないってことぐらいだ。」


「・・・」

「・・・」


「・・・俺はお前なんか大嫌いだ。」

「奇遇だな、俺もだ。」

次回更新日は来週日曜日(11月29日)です。

楽しんで頂ければ幸いです。

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