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5-9.硝石 (いよいよキャスティング完了)

 俺は結局1か月もクの国に滞在してしまった。沈めた船は4隻ですんだ。

街の人は悪魔の仕業と思っているらしく、何も口にしない。


便所の床土や、養鶏所の壁土が金になる方がおかしいのだ。

 今ではみなそう考えているようだ。

 この件を巫女に伝えたヤーンのしもべも得心していることだろう。


 香辛料は買値の倍額で売ることができた。

 滞在費用と食事代と考えるとトントンである。

 2週間目からはみんなハヤブサで寝泊まりしたのである。

 これで俺の溜飲は下がった。しかし奴らの素性は気になる。

 どうせほかの地でも似たようなことをしているんだろうよ。


          ★            ★             ★  

 

「クの国へ行かせた者達が全員消息を絶ちました。調べてみると事故のようなのですが・・・」

「1月の間に4隻も向かわせた船が全て事故?考えられませんね。」

「では誰かが我らの為すべきことを知り妨害でも?」

「戻ってこなかったのはクの国へ向かった船のみ。それはありますまい。」


「では今一度クの国へ船を・・・護衛に戦船いくさぶねでもつけますか?」

「わざわざクの国に拘る必要はあるまいよ。予定の量は集まりつつある。」

「ククク。そうですね、我らは事故調査委員ではない。我らは火星倶楽部なのだから。」

「ではクの国を無視して予定量の確保に勤めましょう。」


「そういえば、アの国を襲った連中ですが如何しましょうかね?」

「ふむ、何やら我々と似たようなことをしている輩だね?」

「放っておいてもいいんじゃないかね?」

「どこまでできるものなのか、見てみたい気もするな。」


「まあ、我々の邪魔にならないなら放っておけばいいさ。いい目くらましになる。」

「確かに。」

「もともとはカーンという1人の錬金術師の仕業だろう、随分かき回されたものだね。」

「まあ、最低限の抑止力を持っておかねばね。この先、内燃機関だけは絶対に許容できないからね。」


「火薬や鉄砲を許容すると言ってるように聞こえるが?」

「許容はせんよ、人の命が安くなりすぎる。」

「先祖返りというやつだね、スポットアムネジアの効きが悪いのさ。」

「そうだね、ステルスジャマ―の効きも悪くなっているように感じたね。」


「やっとここまで増えた人口だ。1人や2人の慮外りょがい者のせいで台無しにされたくないね。」

「わざわざ火星から戻った我々が導いているのだ。もっと順調に発展していってもらわねば。」

「然り、然り、収穫にはもう少し時間が必要です。」

「問題ない。我々は長い間こうして待ってきたのだからな。」


「それと議題がもう1つ。シズの国に竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の合力ごうりきがあったと。」

「伝説の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)ですか?今ごろ?何しに出てきたんですかね?」

「いや、それが私にも・・・カーンの手からシズ国王をアの国まで逃がしたそうだがね。」

「シズ王国を取り戻すでもなく、アの国まで逃がしただけ?とんだ英雄がいたものだ。」


「いや、それでも中原では人気なのだよ。何でも海賊のガレーを3艘切ったとかで・・・」

「そうそう、シズ国王と旅した話と一緒に面白おかしく吟遊詩人が唄っておったよ。」

「その話には不確定要素が多すぎる。もう少し具体性を帯びたら改めて議題としたい。如何かな?」

「異議なし、だ。」


「それでは火星倶楽部定例会を終わりにしよう。みな、息災にな。」

「息災か。そうだな、息災にな・・・」

「ではまたな・・・」

「それでは・・・」


          ★            ★             ★  

 

「どうも我らと同じことを企んでいるやつらがおるらしい。」

「うむ、便所の床土、養鶏所の壁土などをタダできれいにしてやると言って、持っていくそうで。」

「実際、その後はきちんと直されていて住民たちは大喜びだとか・・・」

「それは明らかに意図してやっておるな・・・」


「そうでしょうな、ここまで露骨なのですから。」

「住民にしてみればタダで掃除をしてもらったようなものですからな。」

「しかもあちらこちらに手が伸びていて、どこが中心なのか一向に掴めませぬ。」

「少ない資源の取り合いとなりますと、数でこちらは少々不利ですな。」


「陛下はともかく、我らは中原に覇を唱えるつもりはない。敵国に対する備えが欲しいだけだ。」

「それはもう、すでに。事の次第を分からん国々は喜んで提供してくれる。」

「自国の物は自国で買い取れば良い。その次は近隣諸国だ。この動き、見るものが見れば何か知れよう。」

「9の日、等と悠長なことを言っていられなくなりましたな。これからは適宜連絡を取り合いましょう。」


          ★            ★             ★  

  

「みなさまがた、ゆゆしき事態ですぞ。」

「慌ててどうしました?」

「実は硝石なるものを精製するには、便所の床土や養鶏所の壁土が最適だそうでございます。」

「何だそれは、本当の話か?」


「問題はむしろこれから。何者かがこれらを買い占めております。」

「買占め?便所の土を?」

「あるいは便所の床と養鶏所の壁をきれいにしてやると申して、タダで工事をするそうです。」

「そうして土を持っていくのか・・・」


「私の知る限り、シズの国、アの国、クの国果てはエムトやリヨン、オーホックまで。」

「何と、いったい誰が後ろについておるのだ?それだけの金が動くとなると帝国か、商会か?」

「むむ、我らは完全に出遅れたのか?」

「これではうかうかしておられません。まず自国の土から集めましょうぞ。」

 

「うむ、それから近隣諸国だな。」

「確かにそれが道理。」

「むろん硫黄も必要となりますぞ。」

「うむ、そちらの当てはある。だがこの話、上に持っていかねばならぬな。」


          ★            ★             ★  

 

 リクオは今、アの国まで来ていた。

 今まで内陸ばかりだったので、素直に魚が嬉しい。

 シズカも喜んでいた。もともとシズカはリクオのお毒見役だった。

 もっともシズカの養父のカーンなど、

 とっくに死んでいることを彼等は知らない。

 

 リクオと2人きりで国から出て旅をする、こんな経験はもちろん初めてだ。

 だから2人とも完全におのぼりさんになっていた。


 そんな2人組を街の破落戸ごろつきどもが見逃すはずがない。

 しかし相手はリクオである。

 銅貨だけ残して有り金巻き上げられることになる。

 傍目にはどっちが破落戸ごろつきか分からない。


 だがそこにリクオの運命がやって来た。

 リッカトーンの遺跡の跡を見に来たツバイと鉢合わせをしたのである。

 お互いにすぐ気がついて目が合ってしまった。


「おたく、強いねぇ~。」

「あんたもな・・・」


「俺は強いやつとりたくて旅をしてるリクオってもんだ。」

「俺はツバイ。残念だな、俺には先約がいるんだ。」


「だがよう、いま俺が仕掛けたらアンタはどうするね?」

「狂犬のような男だな・・・」


「次にいつ会えるか分からんからな・・・」

「俺の分が済んでからではどうだ。それまで俺と旅してもいい。でなければ俺は全力で逃げるぜ。」


「あんたも相当なもんだなあ。」

「そのために生きてるからな。」


「あんたの用事はいつ済むんだい?」

「さあなあ。ヤーンの巫女が仇の居場所を教えてくれないんだよ。」


「その巫女は本当にアンタの仇の居場所を知っているのかい?」

「そこまでは知らん。が、巫女としては本物だ。」


「じゃあよう、俺が行って挨拶してやるよ。」

「・・・俺まで柄が悪くなりそうだな。」


          ★            ★             ★  

 

「それでお二人揃ってやって来たのですか。」


 「目」と「耳」は二人に瞬殺されてしまったのは言うまでもない。


「あなたがリクオ様、『黒き星の子』ですか。随分イメージが違いますね。」

「カーンもそんなことを言ってたよ。」 リクオがカカと笑った。


「ツバイ様、今日も火星の?」

「その通り。」


「・・・・・・火星から戻りし4人の王、この世を支配せんと深くこの地にとどまらん。」

「おお、ついに新しい神託が!」


「か、火星から戻った4名が分りました。名前は分かりません。この世界に手を出そうとしています。」

「そんなことはどうでもいい。俺とのけじめをつけさせてもらう。」


「相手は神代の技術を再現すべく、あちこちで土塊を集めています。」

「土塊?」 これはリクオである。


「カーンの造った物と同じ物です。」

「ああ、あれか・・・」 この辺は俺に任せておけよ、とリクオが言った。


「ただし、同じことを考える者達が3組おります。いずれか当たってゆけば明らかになりましょう。」

「なるほど・・・」


「手当たり次第に工事をしてるやつらを探してゆけば、いつかは当たりを引くな?」

「然り。」


「生き残ったら、この礼に必ず伺う。それまでどうか息災で。」

「あなた様も。」


 そう言うと、彼女はヤーンの聖句ルーンを唱えた。

 ・・・それは彼女の別れの挨拶。


次回更新日は来週日曜日(11月22日)です。

この物語を楽しんで頂ければ幸いです。

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