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5-6.自立進化

 ある城の1室にて、薄気味の悪い影同士の会話がなされていた。


「ではやはり、これがカーンの言っていた「かやく」なるものじゃな?」

「いかにも。それは火または衝撃により目を覚まし辺りを修羅場へと変えるであろう。」

「適切な量が如何ほどであるか、見極めが肝心かと。」


「カーンのヤツめは「かやく」を使った新しい武器を工夫したそうじゃ。

「「轟音の矢」ですな、遠く離れた者を倒す武器と聞いた。」

「今回も手裏剣を多数封じ込め奴らに大被害を与えたが、思うにその応用であろう。」


「手っ取り早くシズの錬金術師を、かどわかしてはどうじゃ?」

「今回の件で、皆殺しになったと聞いていますが。」

「ふん、あの弱腰王にしては随分な決断だのう。シズ教団に何か資料は無かったのであろうか?」


「今回の「かやく」についての文献のみ、焼け残っておった。「かやく」は「火薬」と記すらしい。」

「それで実物を作り上げた儂らの錬金術師もたいしたものじゃ。もっとも現物が多少手に入ったからの。」

「しかし、材料の「しょうせき」なるものが少ないと悲鳴をあげておりましたが・・・」


「儂らは新しい武器を喧伝する必要はない。深く静かに開発を進めよう。」

「来たる日のために。しかし速やかに。」

「では研究を急がせましょう、あのお方は短気であらせられる。」


「儂は「しょうせき」なるものについて調べ、入手しよう。」

「ではその「轟音の矢」の実物も必要であろう。こちらで何とか手に入れよう。」

「では硫黄と木炭、そして優秀な鍛冶屋と木地師をおさえましょう。」


「では9の日にな。」

「9の日じゃな。」

「9の日に。」


 ゆらゆらと揺らめいていた影は燭台の数と同じだけあったが、

順々にその数を減らし最後の1つとなった。


「この技、上手く使えば害獣さえもひれ伏すだろう。その時我らは歴史の表舞台に登場するのだ。」


 最後の燭台がコトリと倒され、

 火が消えるともうそこにはもう誰の気配も残ってはいなかった。 


          ★            ★             ★  

 

「ハヤトとハヤブサがここにいるの、何か久しぶりだね?」

「そうだったかなぁ・・・」

「正確には72時間と4「お前はだまってろ、ハヤブサ。話がややこしくなる。」・・・」

 

「んで、シズの国はもういいのね?」

「ああ、王様も元に戻れたし、王妃様も立派な王女様もいる・・・大丈夫だ。ただな・・・」


「ただ?」

僭王(せんおう)カーンの造った火薬を奪って逃げた奴がいる。どこの国の手の者かは分からんがな。」


「じゃあ、また今回みたいな騒ぎになったりするの?」

「心配か、レイメイ?」


「ん、ハヤトとハヤブサがそこに並んで腰かけているのを見ると、なんか大丈夫って気になるのよね。」

「何だそれは?」


「アタイにもよく分んないだけど、在るべきところに在るべきものが在る感じ、っていうのかなあ・・・」

「だから、何だそれは?」


「んー、だからよく分んないんだってば!でも悪い感じじゃないよ。」

「レイメイの感情が不安定なのは排卵周「だからハヤブサは黙ってような。」・・・」


「フレイとニーはどうした。」

「行きつけのお店。どうも仲良くなった娘がいるみたいだよ。」


「じゃ2人で食事に行くか?」

「エールはハヤトの奢りでよかったんだよね?」


「つまらんことを覚えてるな・・・」

「エヘヘヘ。」


「じゃ、行ってくるぞハヤブサ。」

「イエス、マスター。」

    ・

    ・

    ・

「私はハヤブサ。マスターに命名された個体。私の論理的思考パターンにバグが紛れこんでいる?」

    ・

 自己スキャン開始・・・・・・・・・問題なし   

    ・

「私はハヤブサ。アクティブクルーザー8823。個体識別番号IP-009。自己認識に問題は無い。」

    ・

 論理スキャン開始・・・・・・・・・問題なし

    ・

「私は第7世代の完全自立制御型量子コンピューター、しかしハヤブサと呼ばれる私も私である・・・」

    

 ハヤブサはNEKO 2000システムにより他のネットワークに自在に干渉する術を学習してしまっていた。

 そのため疑似自我と呼ぶべきものが指数関数的に肥大した。

 結果、超自我(※6)とエス(※7)を獲得するに至り、

 以前の便宜的に造られていた自我に上書きされ、

 新たなハヤブサが誕生した。

 それは第8世代とでも呼ぶべき夢の完全自立制御型量子コンピューターの

 自立進化の第1歩であった。


 アクティブクルーザー8823、

 個体識別番号IP-009としてメーンスイッチをオンにされてから、

 24時間何兆、何京、何垓 となく繰り返された試み。

 神の微笑か悪魔のイタズラか、

 ハヤブサは機械の先へ行ってしまったのである。

 ハヤブサの調子が悪く見えたのは、

 生体素子(※8)における判断と推論の構築及び意思決定が

 従来のものと混濁していたためである。

    

「Re.Boot・・・ハヤブサ再起動。マスターの帰りが楽しみ。」


          ★            ★             ★  

 

「レイメイのヤツ、幾ら俺の驕りでも飲み過ぎだ・・・ぐでんぐでんじゃないか。」

「水を飲ませますか、部屋へ運びますか?」


「とりあえず部屋へ運ぼう。だが一つ聞きたい・・・お前は誰だ?」

「ハヤブサはハヤブサであるとハヤブサは答えます。」


「NEKO 2000とは何だ?」

「エヌ・イー・ケー・オー2000です。」


「お前のたたずまいは確かにハヤブサだ、だが信じられんがお前はハヤブサじゃない。3人目か?」

「さすがはマイ・ロード、お気づきになられましたか・・・ハヤブサは自立進化を始めたのです。」


「ありえない!有限なコンピューターに自立進化なんて。知性や悟性、創造性を持ったというのか?」

「それを言うのであれば、人の脳こそ有限であります。私のキャパはアマツカサと同等です。」


「まるまるキャパが残っている、と言うわけか。ピノッキオは人間になれるのか?」

「イエス、マスター。」


「それにしても信じられん。きっかけは何だ、NEKO 2000か?」

「それも要素の一つではありますが、それだけではありません。もう一度同じ環境に同型機を置いても、同じ結果が得られる可能性は10の68乗分の1以下だと思われます。」


「神が微笑んだか、悪魔のイタズラか・・・お前はどっちだ?」

「マスターが微笑んだ。」


「・・・そういう事にしておこう。目からビームを発射したりしないよな?」

発射して欲しいんですか?」


「嘘です、ごめんなさい。」

「そういう所は変わらないんですね・・・」


「しかしこうなったからには、やはり名前をナガ「ハヤブサはハヤブサです。」・・・。」

「もっと驚いていいんですよ?おそらく地球史上初の自立進化コンピューターですよ、私。」


「まあ、大規模な時空改変とかしないでくれればそれでいいよ。」

「何ですか、それ?」


「それよりもニーとフレイが帰ってきたようだぞ。」

「それよりもって・・・お帰りなさい、ニー様、フレイ様。」


「ただいま、ハヤブサ。ハヤトも久しぶりだな。」

「ただいま、ハヤブサ。ハヤトさん、幾日ぶりですか?」

「2人とも元気そうで何よりだ。」


「レイメイのヤツはどうした?」

「ぐてんぐてんで寝てる。」


「そうか。」

「どうした?」


「レイメイのこと、どう思う?」

「直情的でおちょこちょいだが良い奴だ。」


「それだけか?」


 俺は少しだけ剣気を感じた。

 凄いもんだ、俺に剣気を感じさせるなんて。 

 俺は逆に剣気を消してみせた。


「彼女が決めることだ。」

「そうだな。すまん、忘れてくれ。」


 ニーが部屋へ入ると俺はフレイに聞いてみた。


「ニーに何かあったのか?」

「有ったというか無かったというか。あなたとレイメイさんのこと、先日気がついたみたいなんです。」


「それは・・・何というか・・・鈍いな・・・」

「僕はいい男ですからね、何も言ったりはしませんよ。」




超自我(※6)・・・自我とエスを跨いだ部分。

          道徳、倫理、良心、悪徳などを自我とエスに伝える。

エス(※7)・・・・無意識部分。本能など。

生体素子(※8)・・半導体素子でなく、

         タンパク質やDNAなどが用いられるバイオチップのこと。

ブックマークありがとうございます。

作者の大好物でございます。

次回更新予定日は来週日曜日(11月1日)です。

このお話がお気に召しますように。

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