4-6.火星旅行 その4
天変地異とは何だろうか?
俺は今まで漠然と地震や火山の噴火と捉えていたが・・・
放射線事故、あるいは核戦争・・・どちらも可能性としては考えられる。
だが核の冬の中、宇宙船をつくっている余裕があるとは思えない。
放射線事故にしても同様だ。
つまり、比較的時間的余裕が考えられる大規模災害でなければならない。
地球を捨て火星をテラフォーミングして、
引っ越し船団をつくる理由と余裕がある自然災害・・・
俺に考え付くのは小惑星の衝突ぐらいである。
地下深くの防災都市に逃れた人類が、核の冬の後、
地上にデザインヒューマンや動植物を放った。
あるいは地球を回りながらコールドスリープしていた人類が、
核の冬をやり過ごし、
地上にデザインヒューマンや動植物を放ったとは考えられないだろうか?
だが、いずれにしろ確証はない。航海日誌のようなものがあるかもしれんが・・・
俺は歴史学者ではない。俺達はさらに火星に近づくと、火星表面を観察していった。
そこには生前着ていたであろう着衣がいたるところに残されていた。
遺体は分解されてしまったのか?
火星表面への着陸はアマツカサとハヤブサに反対された。それはそうだろう。
では、他の艦への接触はどうだろうか?
そこに何か手がかりとなるものがあるかもしれない。
しかしこの案も否決された。
理由は「火星へ着陸した可能性を否めない」というものだった。
可能性としては低いが零ではない。
ここで俺達が冒険をする必要はないということだ。
あらゆるメディカルチェックに反応しないもの・・・
なんであるのか、こちらも興味をひかれるが・・・
俺は防疫学者ではない。
彼らは自らが助かることをあきらめて、他の人達にメッセージを送り続けたのだ。
俺はこの場で火星及びその他の艦隊全てに呼びかけてみた。
民用・軍用を問わず、あらゆるチャンネルをオープンにして力の限り呼びかけた・・・
30分で挫折してしまったが。
やはりこの宙域で生きている高等生命体は俺達だけのようだ。
「みんな、聞いての通りだ。ここにいたはずの神代人は全て死んでしまったようだ。」
「あのフネがお墓なのかぁ、なんか切ないね。」
「ここまで来て地面に降りられないなんて、少し哀れですね・・・」
「女、子供もいたであろうに、最後は幸せに逝けたのであろうか。いや、幸せあったと祈ろう。」
「帰ろう、地球に。」
「帰りましょう。」
「帰ろうか。」
「うむ。」
いささか中途半端な幕切れだが、彼らにすれば神代人の秘密の一端を知ったのだ。
知的好奇心が大いに刺激されただろう。何の証拠もないが冒険者とすれば十分であろう。
「アマツカサ、重力ターン用意。航路反転180度、地球へ帰還する。」
「重力ターン了解、航路反転180度、地球を目指します。」
帰りはみな、起きていくことを選んだ。どうやら、肉体の衰えを察知したのであろう。
鍛錬するのはいいことだ。
さて、俺は海や地の底の神代人まで探さねばいかんのだろうか?
この課題は帰ってから考える事にしよう。
★ ★ ★
「・・・と、いうわけで神話にいう「星々の彼方までその手をのばす」神代人はいなかった。後は地の底か海の底だな。それが分かれば、今いる人々にちょっかいをだそうとする神代人はいないだろう。地上に生きる者同士の問題だ。」
「・・・それだけのために・・・星々の彼方まで・・・本当に?」
「そういう約束だったからな・・・人々の世の末を見守れと。」
「私との・・・約束ですか・・・。」
「貸しにしておく。」
「・・・シズの国の元国王にあう機会に恵まれました。かの王は伝説の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)に何度も危機を救われ、僭王カーン打倒に邁進しております。その竜殺し(ドラゴンスレイヤー)は「白き星」と・・・名のったと・・・リッカトーンの遺跡といい・・・もう私に借りは返せない・・・」
「そんな顏をするな。ヤーンの巫女を冒険者にスカウトするんだ、対価は高いに決まってる。」
「ああ・・・まだ、その・・・約束を。・・・こ、これは、て、てつ、手付金・・・」
その晩、俺は手付金をもらってしまった。
こうなった以上、もう無かったことにはできない。
俺達は地球に戻った時ハヤブサで海に降り、
アマツカサには世界の海を巡るように指示を与えた。
あらゆる探査装置を使い神代人の痕跡を探すのだ。
害獣との接触を考え武器の使用を許可する。
ただし、環境を破壊してしまうものは駄目だ。
なお、エネルギー問題については適宜自分で判断して宇宙に行くことを認めてある。
残るは地に逃れた神代人である。
本当に地下帝国など作っているとは思えないが念のためである。
こちらについては有力な探査方法が無い。
『地』が使えれば地震波から何か分かったかもしれないが。
最悪の場合はアマツカサの反応兵器を使う。地下深くで核実験を行うのだ。
地下帝国などがあるなら、地震波に必ず現れるはずだ・・・くれぐれも最終手段であるが。
神代人の、ご先祖様の横やりさえなければ、後は正直どうでもいい。今を生きる人達の問題だ。そしてそれは、今を生きる人達が解決すべき事柄である。どんな結果になろうと見守っているだけだ。
ただし、シズの国のような例外は駄目だ。もっとも、俺やリクオが現れたのが直接の原因であろうから、それについては俺が責任もって対応する。後は「悪魔に囁かれる国」である。今のところシズ王国ぐらいだが、あの王様、結構頑張っているようだ。すると危ないのは・・・ほかの国、なのか?
考えても分らんし、俺がうてる手は全てうったつもりだ。何度でもいうが俺は一介の冒険者であり、その前は人殺しのガキであったのだ。頼むから、ヤーンもカミーユも俺に多大な期待をしないでほしい。
そんなことを考えている俺のところにハヤブサがやって来て1枚の写真を見せた。もちろん今は船内着だ!
「これは?」
「イエス、監視衛星ビッグ・アイから撮った地上の地下埋設物です。主に鉄や鉛に反応します。」
「ということは、この部分の地下にはこれだけの規模の何かがあるわけか?」
「イエス、自然のものと考えるのは不自然です。可能性としては・・・地下シェルターなどです。」
「その手があったか・・・」
「イエス、マスター。」
「世界中、撮れるだけ撮るんだ。お前の判断で蓋然性の高いものだけ俺に見せろ!」
「イエス、マスター。」
本当にいやがったよ、くそったれが。いや、まだ確実ではないが・・・神代の地下都市か。頼むからうじゃうじゃ見つからないでくれよ。それにしても、24,000年にわたり人と文明を閉じ込めておく地下施設というのは一体どんなものになるものだろうか?
人が少なすぎては人口の維持ができない。かといって人を多くすれば建物規模が壮大なものになるだろう。
最低でも小規模な村クラスが必要である。そして水と空気と食料・・・俺には想像できなかった。24,000年分の水と空気と食料とはどんなものだろうか?科学が発達して食事はタブレット1錠ですむとか、そういう話なのだろうか?それとも全員がコールドスリープしているのだろうか?そんな超長期なコールドスリープが可能だとして、俺は彼らの覚醒を12,000年後に任せればいいのだろうか?きっと今の住人達にいい影響は与えまい・・・これ以上は机上の空論だ、その時に考えよう。俺はさっさと思考を放棄した。
結局、ハヤブサが提示したのは2か所の写真であった。1つは極地であり、もう1つは山岳地帯であった。
どちらも、今現在人のいない土地である。俺は冒険者を休業し、深夜零時リッカトーンの沖西方10㎞の地点にアマツカサを呼び寄せた。そこまではハヤブサで行く。
「マスター、今回はお1人で良かったんですか?」
「お前の量子コンピューターでも推論できないか?」
「むうー。」
「今回は嫌な感じがする・・・とてもな。」
俺達は乗船すると直ちに極地へ向かう。埋設物反応があった場所に向かい、さらに解析写真を撮る。3Dで確認したかったのである。その結果、その構造物は象が鼻を伸ばしている格好。つまり、大きな部屋から細く長い道が地上に向かっているのだと分かった。
問題は、細く長い道が途中でネジ曲がっていること。つまり、壊れているのだ。地震でもあったか、プレートの移動か・・・いずれにしろ、これでは中の連中は外に出てこれないだろう。秘密の出入り口でもあるのだろうか?
俺はアマツカサの最も弱い兵装、アンチマテリアル・カノンを通路の角度に合わせて一発ぶっ放してみた。
核の直撃でも想定しているのだろう、防護壁が数枚破れただけだった。これでは埒があかないので、EML砲(電磁加速砲)をぶっ放す。威力は今の結果から最適解をアマツカサに計算させた。
「ドッグワーーーーーーン!!!」
懐かしい音だな、レイメイの顔が目に浮かぶ。ではドローンの突入である。ほぼ30度の角度で地下へ向 かっている。全長何キロになるのだろうか?12,000年後に目覚めた人がこの坂を登ってくるのか?
外はマイナス30度を越える寒さだというのに・・・
雪上車でもあるのか、だとしたらどこを目指して走るというのか。ペンギンと共に暮らすのだろうか?
やがてドローンが最後の扉の隙間から、内側に潜り込もうとしている。各種計器類は、内部に如何なる動力反応も感知していない。もちろん、照明など無い。内部の様子を一言で言うなら、大きい倉庫である。内部の動力が死んでいるため、奥の扉が開かない。俺は念のため、そこで呼びかけをしてみる
「助けに来ました、誰かいませんかー?」
10分ほど呼びかけ30分ほど待ち、俺はドローンに搭載してある対物ミサイルを扉めがけて発射した。
煙がおさまってから照明弾を撃ち込み、ドローンを侵入させる。そこには俺の想像通りの物があった。
そこは巨大な倉庫である。ただし、箱の一つ一つはコールドスリープ・カプセルであった。
動力さえもっていたならばこの人達は助かったのだろうか?いや、歴史に「もし」は無い。
ここにあるのはひどく大きな棺桶だ。
俺はアマツカサの持つ最大兵装の1つ、大口径プラズマカノンで神代の棺桶を原子に還してやった。
やはりレイメイ達を連れてこなくて良かった。あいつら神代人に変な幻想もってやがるからな。
しかし、ここがこの調子ではもう1か所も思いやられるな・・・
「マスターが言っていたのはこういうことなのですか?」
「そうだ。金持ちは火星に逃げ、貧乏人は地球で避難だ。」
だが大多数の貧乏人は、それすらままならなかっただろう。もしかしたら、発進できずに遺跡となった物というのはテロや民衆の暴動などによって、一部の政府高官や金持ち連中から奪われた物なのかもしれない。このアマツカサだってそうだ。そうでなければ、一度もキャプテンシートに座られた事が無いなどありえないだろう。
「地下にさえ避難できなかった人達は、どうしたのでしょうか?」
「魂の故郷へ還ったのさ・・・」
定例の更新も順調であります。
そろそろ皆様から感想でも頂ければなー等と身の程知らずな七味唐辛子です。
次回の更新日は30日午前0時です。
このお話が楽しんで頂けますように。




