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4-4.火星旅行 その2

「次からは人を通じてドアから・・・・・・これは何度目のお願いになるのでしょうか、ハヤトよ。」

「細かいことを気にするな。人を呼ぶと「目」も「耳」も用心しちまう。できれば潰しておきたい。」


「それは分りました。それで私に頼み、というのはなんでしょう?」

「アの国のリッカトーンを知ってるか?」


「ええ、遺跡のある港町ですね。それが何か?」

「一月後には「遺跡のあった」港町、ということになるんだ。」


「・・・」

「だから「先読みの巫女」には、この神託を受けてもらわんといかん。」


「・・・」

「そして、巫女の神託を受けて人々は安全な場所へ避難しなくてはいかん。」


「・・・」

「こんな大規模災害を未然に予見し手を打つとはさすがはヤーンの巫女様、ということになる。」


「・・・」

「消えてしまった遺跡については何か上手いことを言っておいてほしい。もう、戻らないから。」


「・・・」

「何か言ってくれないと、すわりが悪いんだが・・・」


「私に何を言えと?」

「だからさ、ヤーン様が告げてくれない未来を、俺が告げに来たんだよ。」


「つまり貴方あなたは遺跡を動かし、あまつさえ別の場所に移動させようというのですね?」

「その通りだ、よく聞いてたな。」


貴方あなたは何を言っておられるか、ご自分で分かっておいでか?」

「だからさ、ちょっと用事があるから遺跡を使うんだよ。」


「遺跡を稼働させるだけで何百年振りの偉業、ましてや遺跡を移動させるなどと人知を超えた所業・・・」

「そんな大それた話じゃない。遺跡本来の使い方をするだけだ。」


「そんなこと、いったいどなたから聞いたというのです?」

「遺跡本人からさ。」


「・・・」

「本当だってば。」


「・・・」

「そして俺は約240日間どこにもいなくなる。何があっても『白き星の子』とは連絡がつかなくなる。」


「それは一体、いかなることで・・・」

「そして俺は約240日後、戻ってくるだろう。人の世の末を見定めるために。」


「!」

「遺跡が及ぼす被害の範囲図だ。それと遺跡が消えるのは来月最初の新月の夜だ。恥ずかしがり屋なんでな。」


「いったい、あなたは・・・なにを・・・」

「ではよろしく頼む、聖女カミーユ。」


 俺は3人にどう切り出そうか迷っていた。普通に考えれば荒唐無稽のお伽噺だ。

ハッキリ言って誰も信じないだろう。立場が逆なら俺でも信じない。

 いっそのこと黙って1人で出かけちまおうかとも思ったが、

 レイメイの顔がちらついてしまった。


「なあレイメイ、明けの明星というのを知ってるか?」

「ん、聞いたことある。明け方、東の空に見えるんよね?」


「そうだ、よく知ってるじゃないか。」

「で、それがどうかしたの?」


「行ってみないか?あの星を見に。」

「はあ、アンタなに言ってんの、大丈夫?」

 ううむ、言い方を間違えたか・・・えーと・・・


「だから以前レイメイが言っていた『ソラを往くフネ』は、『宇宙そらを往くふね』なのさ。」

「ハヤト、本当にアンタ大丈夫?熱でもあるの?」


「分った、もう細かい話はどうでもいい。リッカトーンの遺跡を動かし、俺はあそこまで行ってくる。」

「えぇ?」


「行って、帰ってくれば約240日が経ってる。それでも俺は行く。お前はどうする?」

「その間、ハヤトはどこにもいないの?」


「そうだ。遺跡と一緒に旅をしている。旅といっても眠るだけだ。寝て起きればもう着いてるんだ。」

「・・・・・」


「フレイもニーもハヤブサもみんな一緒だ。嫌がるやつは別だが・・・冒険者なら、きっと。」

「・・・・・」


「レイメイ・・・」

「アンタが行くならアタイも行く。」


「ありがとう・・・」

「ん・・・」


 その後はフレイとニーを相手に説得だ。

「無理に来る必要はないし、来ていいこともない。だが星の海を渡る旅だ、もう2度とない冒険だぞ。」

「何かコソコソやってると思ってましたが・・・星の海ですか、余りにバカバカし過ぎて信じられます。」

「お前といると、自分の常識が何度壊されたことか・・・ここで行かずして何が冒険者か!」


 男は単純で助かる。

 とりあえず、行って戻ってで約240日かかることと大半は寝ていることを話す。


「そんなに長く寝てられませんねぇ。」

「まったくだ、クマじゃあるまいし。」

「だから、そんな心配いらないんだよ。細かいことは気にするな。」


 俺はリッカトーンの街の様子を見に行った。

 すると街の至る所に立札が立っており、

 来月の新月の夜に大いなる地響きとともに聖なる遺跡は姿を隠すであろう、

 というヤーン神教の予言が告げられていた。


 この予言を信じる者、信じない者はさまざまで、

 ヤーン神教の教徒であれば信じて引っ越しを始める者、

 それを見て笑う者などさまざまであった。


 俺は遺跡が及ぼす被害の範囲図すべてに立札が立っているのを確認すると、

 ひとまず安心するのだった。

 後は食糧を用意した。味気ない宇宙食はたくさんだ。

 水は液体水素と液体酸素から作るらしい。

 意外と宇宙旅行の準備というものは簡単だ。これでいいのだろうか?


 新月当日である。俺達はハヤブサごと、

 第一次火星移民護送戦艦アマツカサに収容してもらった。

 日が暮れればもうあたりは真っ暗である。

 だが、この闇の中に大勢の野次馬がいることを俺達は知っている。

 何よりも燃え盛る松明が遺跡を照らしているようだ。    

 まったく、どいつもこいつも・・・


「アマツカサ、スリープモード解除。フルモード移行準備。」

「イエス、マスター。」

 この段階で、船体は微振動を始めた。


「船外モニタ・オン、スクリーンに映せ。」

「イエス、マスター。」


 みんなのいるブリッジの無数のモニタに明かりがともる。  

 そこに映っているのは、慌てて逃げ出す者や、

 今になって必死に家財を運び出そうとする者達だった。

 このままテイクオフすると被害が大きそうであるのと、

 恐い顏をした巫女の姿が目に浮かんだので、

 2時間くらいこのまま待機した。


 もうそろそろいいだろう。これでヤーンの巫女のお告げが成就される。

「アマツカサ、微速上昇。」

「イエス、マスター。」


 リッカトーンの街上空200mを離れれば、もう遠慮はいらない。

「アマツカサ、一度海に出てから大気圏外に出るぞ。慣性制御はできるのかな?」

「イエス、マスター。ただし完全な制御は不可能です。」


「おーい、みんなー。少しの間、自分の体が重くなるけど気にするな。冒険者なら耐えろ。」

「ちょとーーー、そーゆーことはーーー、もっとはやくーーーいいーーーなさーーーーーい!」

「おお、これはなかなか新鮮な感覚!」

「うむ!」


 一気に地球引力圏を離脱して、ゆるやかに周回軌道に乗る。

 地球スイングバイの準備だ。

 ブリッジは全天スクリーンとなって、みんなを驚かせた。


「これが私たちのいる・・・いた星?青くてキレイね。」

「うーん、なんか信じられませんね。あそこで僕らが暮らしていて、今はそれを外から見ているなんて。」

「何百年生きようとも、このような冒険は2度とあるまい。大白金貨10枚積んでもこの体験はできん。」

「うん、気に入ってもらえて何よりだ。」


「マスター、私も宇宙そらを翔びたい。」

「ハヤブサ・・・そうか、お前は宇宙船だったんだな?」


「イエス、マスター。」

「そうだよな、火星行きの荷物の中にあったんだから当たり前だ。火星に海はないものな。」


「イエス、マスター。」

「行ってこい、本来の勇姿をみせてくれ。」


「イエス、マスター。」

 ハヤブサが嬉しそうに走っていく、少し楽しみである。


「アマツカサ、メインエンジン稼働開始します。真空対消滅機関稼働開始5秒前・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0、稼働開始。・・・・・エンジン・オールグリーン。」


 目の前に地球が見える。何となく笑いがこみあげてきた。

 少し前までの俺は、ただ人殺しが上手いだけのガキだった。

 それが今では世界の王となって地球を見下ろしている。

 なんというトリッキーな運命だろうか。

 そんな俺と愉快な仲間たちは2度ほど地球でスイングバイを行い、

 はるか火星を目指すのだ。


お盆3夜連続投稿第3弾です。

昨日のブックマーク登録ありがとうございます、やはりやる気が出ます。

次回からは週一の日曜深夜0時更新となります。

と云うわけで次回更新は16日深夜0時です。

このお話で楽しんで頂ければ幸いです。

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