4-2.将来設計
「ハヤブサ、見ろ!これが白金貨だ。」
「マスター、悪い顔になってますよ?」
「何を言う。俺が毎回苦労して戦っているのに誰も褒めてくれないし、銅貨1枚にすらならんのだぞ。」
「マスターは褒めてもらいたくて戦っているんですか?お金が欲しくて戦っていたんですか?」
「お、お前、またそんな哲学的なことを・・・」
「誰も知らなくてもハヤブサは知っています。お金が入用なら私を使って稼いでください。」
「お、お前、知らない人が聞いたら俺の社会的立場が・・・・・・てか絶対誤解するよね、その言い方。」
「でもその白金貨は、私の体(船体)を使って稼いだんですよね?」
「分った、俺が悪かった。だからキャフェイン茶を頼む。」
「イエス、マスター。」
最近ハヤブサに勝てない俺がいる。
このままでは俺がデザインしたセーラー服を着てもらえない。
防御力は落ちるし、スカートなんか邪魔でしかないし・・・
ハヤブサを言い負かせる自信が無い。これは今後の課題にしよう。
シズ王国に一区切り付けた俺はリクオを追っている。
連れがいるようなので、シズ王国を中心に半径200㎞のエリアサーチを実行している。
しかし、あいつに闘う気が無い場合、俺はどうするのだろうか。
あるいは『火』を使うべきなのか・・・それは違う気がする。
こんな時代に跳ばされる原因となった闘いだけは2人の手で決着をつけるべきだ。
カミーユの言った古の決着、というのはやはり俺とリクオのことなんだろうと思う・・・しかし、あいつは未来は変わると言った。すると、リクオとの決着がつかない未来もあるということなのか。分らない、世界の王となっても俺には分らないことばかりだ。
世間の噂ではシズ王国はクーデターが勃発しカーン王を擁立、王家はアの国に逃れ僭王カーンを全面的に非難しているとか。複数国がこれに同調し、僭王カーン排斥の動きになればいいのだが。そのためには綿密なロビー活動が必要だ。あの王様、大丈夫だろうか?
ハヤブサがキャフェイン茶を持ってきてくれた。コーヒーブレイクだ。
だいたい少し前まで人殺しの技ばかり研究し、
実践してきた男にこの世界が要求するハードルは高すぎる。
本当に何で俺なんだ!何度も考えた答えの出ない問題を考えてしまう・・・
「如何ですか、マスター?」
「あ、ああ。おいしいよ、ハヤブサ。」
「元気がありませんね、どうしたのですか?」
「そんなことないよ、ハヤブサがセーラー服を着てくれさえすれば一発で解決さ!」
「いいですよ。」
「え!?」
「この前からデザインしていた服ですよね、着てもいいと言っているんです。ただし船内着ですよ?」
「あ、ああ、もちろんさ。俺はハヤブサの船内着を考えていたんだ!」
「今度仕立てておきますね。」
「おう!!!」
「最近マスターのバイオリズムがダダ下がりですからね。これくらいは譲歩しましょう・・・」
「なんか言ったか?」
「いえ、何も・・・」
★ ★ ★
俺達はクの国の港にハヤブサを係留し、牛鍋屋の中にいた。次の予定が無いからだ。
香辛料貿易はもう少し間をおいた方がいいだろう、相場を崩さぬように、目立たぬように・・・
しかし何よりこの国には牛肉を食する文化があった。俺達はこの味に魅了された。
「牛肉って美味しいのね、初めて知ったわ。」
「そうですね、こんなに美味いとは思いませんでした。」
「うむ、確かに美味い。」
「だが胡椒の量で値段が変わるとはな。」
「そりゃ、仕方ないわよ。あんなに高いんだもん。」
「そーですねぇ。今度はシナモンやナツメグなんかの貿易もいいかもしれませんねぇ。」
「ああ、さっきまで隣の客が話していたヤツか。」
「ますます貿易者パーティーだな、ニーの商業ギルド免許さまさまだ。」
「ハヤト、塩漬け肉買い込んでおいてよ。ハヤブサの中でも食べたいわ。」
「あ、それいいですね。」
「うむ。」
「俺も食いたいと思ってた。買い込んでおこう。しかし、この時期塩漬けでない方が美味いぞ。」
「へ、どういうこと?」
「そういえば塩漬けしかないというのは変ですね。」
「ふむ。」
「塩漬け肉は冬場の避難食だ。今の時期なら生肉が食べられる。焼いて食ったら美味いぞ。」
「なるほど。」
「そういうことでしたか。」
「店としては塩漬け肉からカタしてしまいたいんだな。」
「だから生肉も買っておこう、うちのチャンバー(糧食用の冷蔵庫)はでかいからな。」
「もしかして、リロイに牛肉を持っていけば売れるんじゃ・・・」
「それなら、とっくに乳牛なんかが食べられていると思いますけどね。」
「食べた者が少ないので、余り広まっていないのではないか?」
「俺もそう思うな、やがて食べるようになるだろう。」
話しは変わるが、みんなに聞いておきたいと改まった調子で俺は続けた。
「ハヤブサを使えば1年かからず、大白金貨10枚手にすることができるようだ。その時はどうする?」
「どうする、って?」
「国に帰って店でも始めるか、冒険者を続けるかってことですか?」
「大白金貨10枚手にして冒険者ってのも、不用心な話だ。」
「そうだ。一生分の金を稼ぎ、国の外を見た。石牢にまで入った。もう十分じゃないのか?」
「アンタ、何を言ってるわけ?」
「ははあ、また不器用なヒトが難儀なことを言い出そうとしているわけですか?」
「今帰れば故郷の英雄だ、両親も喜ぶ。そおいうことを言いたいのか?」
「いや、普通のゴールはそおいうものではないのか?」
「アタイのゴールはアタイが決めるわ。」
「そうですねぇ、普通が良ければ村から出ませんでしたよねぇ。」
「・・・自分には分らん。恐らく目の前に大白金貨10枚並べられても分らん。」
俺は頭を掻きながら言った。
「俺を初めてパーティーメンバーにしてくれたみんなにできる、最初で最後のチャンスなんだ。」
「だからありがたく大白金貨10枚持って田舎へ帰れって?」
「レイメイさんこの人の不器用なの、知ってるでしょ?」
「田舎へ帰るには俺達は若すぎる。後20年経ってから訊かれれば、また違うのかもしれんが・・・」
俺とフレイは食後のキャフェイン茶を、レイメイとニーはセイロン茶を頼んだ。
「このパーティーメンバーは馬鹿ばかりだ。」
「アンタに言われたくないわ。」
「ハヤトさんだけには、言われたくありませんねぇ。」
「お主に言われる筋合いはない。」
「分かった。俺が言いたかったのはそれだけだ。」
「人を見てモノを言ってほしいもんだわ。」
「まあまあ。」
「ふむ。」
俺達は食事処をあとにした。すると大勢の人間がぞろぞろ後をついて来る。
「これって、アタイ達の客?」
「まあ、そうでしょうね。」
「どこかの馬鹿が景気のいい話をするからだ。」
「・・・」
「何か用か?俺は今、とても気が立っているんだが。」
それでも俺はつとめて冷静に話した。ハヤブサに褒めてほしい。
「なに、大した用事じゃない。ただ美味い話は分け合おうってことで、こちらさんと話が合ったんだよ。」
「ほう、それで?」
「1年かからず、大白金貨10枚手にするって方法を教えてもらおうと思ってね。」
「塩水と海砂の間の土地を1エーカー、羊の角で耕すのさ。それから一面に胡椒の実を蒔くんだ。」
「てめえ、何の話をしてやがる!」
「それが人にものを聞く態度とは思えんな。俺達は冒険者だぞ?」
「俺達だって船乗りだ、素人だと思うなよ。なに、殺しゃしねーよ。ちょっと話がしてーだけだ。」
「・・・と、言ってるが。」
「これはアンタの仕事だわ。」
「残念ですが、僕もそう思いますねぇ。」
「ロングソード貸そうか?」
「お前ら状況分かってるのか?俺達ゃ12人いるんだぜ。」
「分ったよ、俺が責任取ればいいんだろ!どいつもこいつも。」
俺は投げナイフを奴らの真ん中に投げた。誰にも当てるつもりはない、気を逸らしたかったのだ。そして次の瞬間『乱歩』を使う。俺の姿が彼らの視界から消える。12人一息だ、やはり素人だったな。
「すんだぞ。殺してないから安心しろ。」
「一呼吸の間に12人・・・」
「うーん、動きは分かるんですが見えませんねぇ。」
「ロングソード要らなかったな・・・」
頭にきたから全員の財布を漁ってやった。
銅貨だけは残しておいてやる。紳士的だなあ・・・
「うわ~、最悪。」
「紳士って、意味わかってます?」
「まあ、いいではないか。それをみんなで飲むのであろう?」
ニーがそう言うので、そういうことになった。
お盆3夜連続投稿第1弾です。みなさま、暑い中如何お過ごしでしょうか?
ウチではエアコンがご昇天あそばされまして、周りを不幸にしています。
次回更新日は明日0時の予定です。
このお話で楽しんで頂ければ幸いです。




