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3-8.シズの国、カチコミ。その4

「誰の味方でもありません、ただ悪魔の敵となる者です。」

「悪魔の敵、か・・・」


「もし僭王(せんおう)カーンが悪魔に囁かれ、災いなそうとするならば・・・」

「するならば・・・?」


「私は神代の意思に代わってそを討ち滅ぼします。その時にシズの国は地上から消え去るでしょう。」

「・・・」


「しかし、民を救い導くは王たる者の使命。私はこの先、2人の王を見つめていくことになるでしょう。」

「お、おぬしは。いや、あなたはただの魔法使いではないな?いったい何者であるか?」


「私は神代の意思によりこの時代に呼ばれ、この地に呼ばれ、今ここにいる者である。」

「この時代に呼ばれた?・・・まさかヤーン神教の?」


「ヤーンの神は関わりない。ただ、1人の巫女の想いを預かっているのみ。」

 これだけ演出しておけば、

 王様も必死になって自分の国を取り戻そうと努力するだろう。


 (マスター、索敵範囲に船影確認。

  3隻が風に切り上がってきます。10時の方向です。)


「お話はここまで・・・どうやらお客の時間です。」

「何と!」

「こんなところまで?」

「まさか・・・」


 俺は10時の方向を見るが、もちろんまだ何も見えない。ポーズが大事だ。

 やがて赤いものが目に入る。赤いガレー船とは派手だな・・・

 あれはトリレーム(三段櫂船)だ、通常の3倍速いぞ!


「追っ手とは考えづらいですね、このあたりの海賊でしょう。」

 ガレー船の足は短い、おそらく近海を根城にする海賊に違いない。

 俺の演出に付き合ってもらおう。


「こんなところで海賊と出くわすとは・・・」

「ヤーンは我らを見放したのか?」

「この船は戦船いくさぶねではないのですか?」


 ハヤブサのどこをどう見れば戦船いくさぶねに見えるのだろうか。

 こんな優雅なシルエットをもつ縦帆船など、そうはないぞ。

 だから襲われるんだがな・・・


「水上戦か。」

「ガレーは先ずラム(衝角)で突いてきます。それから人が・・・」

「この船の船員たちは何処に?みなに弓を持たせなければ!」


「落ち着いてください、王妃様と王女様が不安がっておられます。」


 赤いガレー船はかなり近づいてきており、

 中央が直進して左右2艘が回り込もうとしている。

 ハヤブサはスターボード、つまり右舷側を奴らに向けている状態だ。

 さぞいい獲物に見えてることだろう。

 当たり前だが直進してくるやつが一番前にでている。


 俺は船首部バウへ行くとロングソードを抜いた。

 シルバーリンクでハヤブサにオーダーを出す。

「俺が剣を振り下ろすタイミングに合わせて、気圧の・・・真空の刃をガレー船へ向けて飛ばせるか?」


「イエス、マスター。」


 俺はロングソードを上段に構えた。蜻蛉の構え、というやつだ。

 俺はガレー船に向けて吠えた。


「チェストッーーー!」


 見よ!俺の気合に合わせて海が裂けていく。

 そしてその先にはガレー船がいた・・・そう、ガレー船はスッパリと縦に裂けていた。


「うわぁーーー!」

「何だ?何が起きてるんだ?」

「ふ、船が割れていく!」

「退避!全員退避ーーー!」

「もうもたない、沈むぞーーー!」


 まだ投石器も届かぬ距離からいきなり沈められたのだ、

 何が起こったか分らなかったであろう。

 だが、これは後ろにいる連中へのパフォーマンスである。

 彼らの常識では俺がガレー船を斬ったように見えただろう。

 左右から回り込んでいた2艘のガレー船は足を止めていたが、

 俺はかまわずロングソードを振るった。


「チェストッーーー!」

「チェストッーーー!」


 そして3艘のガレー船は全て海の藻屑と化した。

 王様は化物でも見る目つきで俺のことを見ている。少しやり過ぎたか?

 海は阿鼻叫喚である。海賊には今までのツケが返ってきたものだと思ってほしい。


「魔法使い殿、今の技は?」

「あれは竜を斬る技でございます。」


「何と、竜を!」

「むろん、やたらに振るう技ではありませぬが、非道な海賊が相手とあらば容赦はしませぬ。」


「なんと魔法使い殿は、伝説の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)であったか。ならば納得じゃ。」

「私のこれまでの話、お分かりいただけたでしょうか?」


「うむ。どうあっても儂は国を取り戻し、その上で神代の技を封じることと致そう。」

「それが最良の選択であります。」


「1人で1国を落すという伝説の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の力、しかと見せてもらった。幾多の魔法も然り。となれば、最前の話も嘘ではあるまいよ・・・正に吟遊詩人のサーガのようじゃ。」

「王よ。」


「儂らは今、歴史という流れの中の節目におるのじゃな?」

「然り。」


「この難局を乗り切れば、儂の名も歴史の中で輝くものになるのであろうか?」

「然り。」


「そうか、そうであるのか・・・弱腰王といわれたこの儂が。」

「・・・」


 王様へのアフターケアは、もう十分だろう。

 あの時俺は、僭王(せんおう)カーンを仕留めた方が良かったのだろうか・・・

 あいつはあの時、俺と王のどちらを殺そうとしたのだろうか?

 だが俺には幾人もの近衛達が命をかけで守った王様一家を

 見捨てることはできなかった。


「時に竜殺し(ドラゴンスレイヤー)殿、娘のニケじゃが可愛いと思わんか?」

「・・・・・・(王族ってやつは!)」


 だがハヤブサは王女様と仲良しになったらしい。

 「お姉さま」とか呼ばれていた。

 いったいどんな話をしているのだろうか?

 まあ王妃様しか話し相手がいないからな、寂しいのだろう。


「ハヤブサ、お前、王女様とどんな話をしているんだ?」

「別に大した話はしていない。」


「王女様に変なこと教えるなよ?」

「ネコ耳とかメガネとかポニーテイルは変なことか?」


「い、いや。それは変じゃない、男のロマンだ。」

「なら大丈夫。私達は男のロマンについて語り合っていた。」


 将来シズの国にネコ耳とかメガネとかポニーテイルが流行っても、

 断じて俺の責任ではない。


「ロザリオを授けたりはしてないだろうな?」

「そんな習慣は知らない。」


 少し安心した。


 航海の方は海賊騒動以来順調である。

 このままなら後2~3日でアの国に着くことができるだろう。

 リロイの港に着くのは約束の日を過ぎてしまうだろうが仕方あるまい。

 俺は心の中でレイメイに謝った。


 そして3日後、予定通り俺達はアの国の港に着くことができた。

 いつも通り徴税の役人が顔をだすのだが、

 純白のハヤブサからやんごとない人物が近衛と衛士に前後を挟まれて

 降りてくるのを見て目を白黒させた。


「いかなる用向きでのご訪問でありましょうや?本日このようなご予定はございませんが・・・」

「これは耳が痛い。本日、突然の訪問となりしは儂の不徳と致すところ。我が姉に伝えてほしい。」


「失礼ですが、我が姉と仰るお方は・・・」

「うむ。アの国王妃に愚弟が参じた旨、伝えて頂きたい。」


「は、ははっ!し、しばらくお待ちくださいませ―――誰ぞある!早馬を!」


 待つことしばし、豪奢な馬車がやって来た。

 コーチ(4頭立ての4輪大型馬車)である。

 王は馬車に歩み寄り、ふとあゆみを止めこちらを振り向いた。


「如何なるえにしか、この儂が竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の知己を得、大いなる歴史の中にわが身あることを知らされた。儂は決して信心深い方ではないが、今ばかりはヤーンに祈ろう。」

「王よ。あなたは汝自身のなんたるかを知り、進むべき道もまた、分かっておいでです。」


「うむ。まったくもって言葉もない。儂は国を追われた王なれば、そちに取らすべき褒美もない。なればせめてこの宝刀を・・・」

 王はそう言って、腰の刀を俺に差し出した。


「これは王家の宝刀、私が受け取るわけには参りませぬ。」

「さればさ、儂の国が元の国となった暁に、再び返しに来てほしい。だが、そうでないときは・・・」


「分かりましてございます、確かにお預かり申し上げます。例え王女の時代になろうと、必ず。」

「うむ、いたく世話になった。」


「おさらばです。」

「うむ、さらばじゃ。」


 王女がハヤブサのことを見ている・・・気のせいかポニーテイルだ。

 見なかったことにしよう。

 これでようやく、シズの国への殴り込みが終了した。

 思いのほか時間がかかってしまった。

 さあ、リロイの港町に帰ろう!

順調にUPができております。

前のお話の通り、盆休みにはまとめて?連日?UPしたいと思います。

どちらがいいんでしょうね?

コミケともかぶるし・・・

このお話が楽しんで頂けますように。

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