3-6.シズの国、カチコミ。その2
「ハヤブサ、目標に地下室があったはずだ。案内してくれ。」
「イエス、マスター。」
ハヤブサの後を追って古びた洋館の前に着き、闇にまぎれた。
火が燃えているというか、爆発して吹き飛んだ感じに似ている。
岩石蒸気か?これでどの施設も使い物にならん、というか施設そのものがあるまい。
などとを思っていると、目の前を鉄砲を持った男が通り過ぎていく。
それも1人や2人ではない。
火事を見に来たわけでもなさそうだ。どこへ行こうというのか?
俺達は彼らの後を追うことにした。
「ハヤブサ、彼らの進路が分かるか?」
「イエス、マスター。90%の確度で王城です。」
俺は素早く1人を捕まえ路地へ引きずり込んだ。
「なんだ、おまえらヤーンの手先か?」
「ヤーン?何を言ってる?お前らこそ王城に何の用があるんだ?」
「決まってる、王権を取り戻すのだ!」
「王権を取り戻す?」
「今の腰抜け王は、ヤーンに媚びへつらうのみ。
我らは今こそシズの神のもと、王権を簒奪するのだ。」
「その鉄砲は何だ?」
「これこそは神の奇跡!これがあれば、われらでも近衛達と闘うことができるのだ。」
「つまり、それがなければ何もできないんだな?」
俺は当身をくらわせ、鉄砲を取り上げた。思った通りの稚拙なつくりだ・・・
雨が降ればお終いか。
「ハヤブサ、『風』を使う。この辺一帯に雨雲を呼べ、雨を降らすんだ。」
「イエス、マスター。」
ハヤブサの瞳が鳶色から『風』の銀色に変わっていく。急速に雨雲が集まってくる。
俺達は王城へ急いだ。途中で出会った奴らは全て水月に中段突きをくらわした。
全力ではないが半日は目を覚まさぬであろう。相手は戦闘初心者である。
「雨だ!」
「急速運用のため、短時間しかもちません。」
「十分だ。」
ハヤブサの瞳が銀色から鳶色にもどる。
王城に着くころに、ちょうど雨は止みはじめた。
城の門はすでに開いており、衛士が何人も死んでいる。
さあ、手加減の時間は終わりだ。俺達は門の奥へ進んでいく。
人の倒れている方へ進んでいくと銃声が聞こえてきた。
そこには鉄砲を持った2人組と、1人で剣を構えている衛士、
そして幼い少女の姿があった。
俺は「乱歩」を使った。彼らの目に俺は映らなかっただろう。
2人を袈裟斬りにし、衛士と話をする。
「助かった!君たちは?」
「白き星。」
「白き星?」
「そんなことより、その子は?このありさまは?」
「おぉ、この少女こそシズ王国第一王女ニケ=S=シズ様。狼藉者どもが王と王妃を・・・」
「王と王妃は今どこに?」
「この先に王の執務室があり、今は王妃と一緒に・・・」
「分った、君は王女と一緒に来い。ただし、俺の前には出るな!」
俺は執務室に続く扉をけ破った。
「誰だ!」
「何だ、お前は!」
「おおっ、ニケ!」
「王女様!」
近衛達が机をバリケードとして凌いでいる。倒れているのは鉄砲の犠牲者だろう。
シズ教団の者=鉄砲を持つ者、でいいのだろう。俺の前方に12人いる。
俺は3本の投げナイフを手近かな相手に投げつけた。
瞬間、みなの注意が逸れた!俺は再び「乱歩」を使った。
6人斬り伏せたところで一呼吸ついてしまい、「乱歩」が終わった。残り3人!
1人目は「飛天」で近づき首に剣を突き刺した。
斬りかかってきた2人目の刃を左の手甲で受け、右手の剣で腹を抉った。
3人目は王女の方へ行こうとしたので、ロングソードを投げつけ、床に縫いつけた。
あたりを見回し賊がいないことを確認すると、ロングソードを回収した。
「シズの国の王よ、お嬢様です。」
「そのほうの働きまさに鬼神のごとし。誠に大儀である、名をなんと申すか?」
「王よ。無礼は百千万も承知の上なれど互いのため、この名、明かせませぬ。」
「なんと、互いのため名を明かせぬと?」
「されば『白き星』と。」
「相分かった、儂は何も聞かん。が、いつまでもこのままというわけにもいくまい。」
「この度のこと、シズ教団による王位簒奪の謀反によるもの。一時御身を隠せませ。」
「ぬう、やはりそうであったか!おのれ、魔道長官カーンめ!」
「ハハハハハ!己が無能を棚に上げ、何をおっしゃるやら。」
「おのれカーンめ。無理を通して僭王となるか!」
「お前がカーンか、お初にお目にかかる。そして今夜でさよならだ。」
「言ってくれる。確かに本来なら王も王妃も王女も病死されていたはず。
計画が変わってしまったよ。」
「手勢も連れずにノコノコと、何のつもりかな?」
俺はベルトポーチから銅貨をとりだす。
せめて5メートルに近づかなければ、指弾の効果はない。
相対距離12mだ、『縮地』で飛ぶか?だが今は王様一家が大事だ。
俺は小声で言った。
「王よ、ここはいったん下がりませ。王と王妃と王女がいらしゃれば、正当性は立ちまする。」
「うむ、悔しいがその通りだ。ここで大事な家族を失う訳にもいかん。」
ハヤブサと王女と衛士が来ると、ハヤブサに王女の面倒を頼み、
俺が王と王妃の面倒をみる。
近衛の3人は、申し訳ないが露払いだ。奥の扉から場外へ抜けるのだ。
「でかい口を叩いておいて、逃げ出すのかね?」
「ああそうだ。逃げ出すんだ。時間稼ぎに付き合ってはいられない。」
「ちっ!」
いきなり鉄砲を向けこちらに撃ってきた。やはり隠し持っていたか。
ふん。ライフルもきってない銃身で12mの距離が当たるものかよ、
どうせ射撃訓練もしてないんだろ。だが念のため頭部は手甲でカバーする。
俺達は速やかに退場していく。
王家のものしか知らぬ隠し通路を使い俺達は外に出た・・・はずだった。
外は外だが周りには何十人というシズ教団員に囲まれていた。
「最早、これまでか?」
「王よ、短期は損気といいますぞ。」
「何か策でも?」
「それがし、古の魔法を嗜んでおります故。」
「何と!まさかそのようなことが・・・」
「私が合図をしたら、みなは地面に伏せって下さい。よろしいですな?」
俺はシルバーリンクでハヤブサに指示を送る。
俺たちの前方10m~30m内にランダムで1,000発ほど1,000度のソーラー・レイを0.1秒づつ照射だ。
ハヤブサの瞳が鳶色から『火』の真紅に変わる。
「今です!」
俺の合図と同時に全員が地面に伏せった。
今までいた空間に鉄砲の玉が襲ってきたのと同時であった。
そこに悲鳴が混じりはじめついには絶叫となり、やがて静寂となった。
ハヤブサの瞳が真紅から鳶色にもどる。
王が顔を上げるとそこには地獄絵図があった。
王妃は王女の目を塞ぎ、近衛達は目をそむけた。
俺は淡々と死にきれないでいるシズ教団員を、彼らの神のもとへ送ってやった。
「こ、これが古の魔法というやつか?・・・初めて見たわい。」
「先を急ぎましょう、どこかに馬車の用意はありませんか?」
「ここからなら、それがしの家が近い。家の馬車を使いましょう。」
こうして9人は城壁を抜け、近衛の家に急いだ。
途中で出会った不運な奴らは仲間の後を追って行った。
「して、王よ。この先、御身を寄せられる場所に心当たりは?」
「うむ。我が実姉が嫁いでおるアの国なれば、間違いはないかと。」
「分りました。」
やがて近衛の家に着いたが馬車の準備、水・食料の支度、衣服、武器の用意などで時間をとられた。
「王よ、誠に申しあげにくき儀が・・・」
「この際じゃ、許す。申せ。」
「はっ。実は私は独り者故、王と一緒にどこなりと参る所存。しかし、これなる2名は家に戻れば家族のある身。自分達だけアの国へ行ったとなれば・・・」
「よい、その方2名は国元に残れ。家族を捨ててまでついて来る必要はない。」
「しかし、それでは近衛となった時に誓った剣の忠義が嘘となります。」
「それを言うなら儂こそ、国を追われる王なるぞ。そなたらの忠義の対象とはいえまい。」
「しかし・・・」
「えいっ、この話は終いじゃ。」
1人残った衛士は御者台から声をかけた。
「支度は完了しました。いつなりと、出発できます。私も独り者ですから。」
2人の近衛達を帰し、王家3人、近衛1人、衛士1人と俺達だ。
2頭馬車なら十分であろう。出発だ。
「しかし、そのほうのいでたちも随分と奇妙であるな。もしや・・・」
「いかにも。彼女こそ私の相棒である魔女であります。」
「うーむ、やはりか・・・謀反に魔法使いに魔女か、今宵はなんたる夜であることか。」
王女は王妃のスカートを握りしめてハヤブサのことを見上げている。怖くないよ~
(マスター、300m先の国境に30ほどの人体と思われる熱源反応がみられます。)
シルバーリンクを使ったハヤブサの声は俺にしか聞こえない。
「さあ、もう一戦だ。」
これで暫くはおとなしくしてようと思います。
基本的には週一更新です。(日曜日)
ただ、お盆のころは連続UPができるかな・・・と、思っております。
このお話を楽しんで頂けたら幸いです。




